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会社の毒華
12話
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その日の午後、二人に付き添われて前田は警察に社長に毒を盛ったと自首した。
デンと梅迫は証拠品としてゴミから見つけたものたちを提出したがそれ以外に後日、彼女の自宅を家宅捜索した際にキダチチョウセンアサガオの花や社長の私物などが見つかったそうだ。
キダチチョウセンアサガオにはトリカブトなどのように死に至るまでの強い毒性はないものの、運悪く社長は亡くなったのだろう。
「しっかしこの会社どうなるんっすかね」
事務所に戻る車の中、デンが呟く。
「社長がいなくなったから今よりは働きやすくなるんじゃないか」
「でも会長が戻ってきたらまた逆戻りなんじゃ…」
事務所に着くまで無言の時間は長く続いてしまったのだった。
…
デンには一つだけ気になることがあった。
警察署に送り届けた彼女の残り香からかすかにタバコのにおいがした気がした。
デンはやんちゃな見た目に反してタバコの煙が大嫌いだ。
そのためタバコの匂いには非常に敏感だ。
岳剛社長は外見にそぐわず非喫煙者だったため、タバコの煙を頭から吹きかけられないことは救いだった。
頭から暴言とともに煙を浴びせられたら多分デンが社長をその場で殺していただろう。
幹雄会長は昔吸っていたようだが孫娘を気遣って辞めたそうだ。
梅迫はタバコよりも酒らしい。
唯一、会社で喫煙者なのはデンが慕う松岡だけである。
前田が実は愛煙家の可能性もあるので深く考えないことにしたのだった。
…
この事件のことを愛人が社長を殺したとしてスキャンダラスにマスコミが騒ぎ立てた。
事務員が逮捕されたことを知った会長の怒りは凄まじいものだったが、その怒りにも勝る出来事が起こる。
なんと会社の不正会計やら脱税やらいろいろなことが公になってしまったのである。
こうして会社から不正に加担していた創業者一族は一掃され、代わりに現在は簡清株式会社の役員だった松岡が自身の会社に吸収合併してしまった。
デンも梅迫も二人とも松岡に雇われることになって一安心だった。
「クビにならなくてよかったっすねぇ」
デンは松岡のことを拝みそうな勢いだ。
「なんにせよ松岡さんに感謝だな」
梅迫もなんだかんだ危ない橋を渡っていたものの、松岡が全て幹雄会長一家の責任にしてくれたので難を逃ることができた。
松岡には感謝しかない。
「でもあれだけの証拠よくみつかったすね」
松岡が提示した証拠は長年にわたる不正を完全に裏付けるものだった。
あまりに完璧すぎて幹雄会長は反論できないまま怒りのあまり気絶したとか。
「たぶんどれもあの小屋に隠してたはずなんだが…松岡さん曰く、会長が葬式の日に酔って口を滑らせたらしいぞ」
「なにやってんすか会長」
デンも梅迫も若干、あきれていた。
「社長の奥さんとかお子さんは大丈夫なんすか?」
「あぁ、奥さんから連絡が来たが子供二人と一緒に家を手放して奥さんの実家に帰るらしい」
「そうっすか」
さすがに人の死んだ家にいつまでも住んでいられなかったのだろう。
それとも社長一家と縁を切りたいだけなのか、真相は奥さんしか知らない。
「梅さんもそろそろ奥さんと子供さん大切にしないと出ていかれちゃいますよ」
「う、うるせぇ!余計なお世話だ!」
デンと梅迫は証拠品としてゴミから見つけたものたちを提出したがそれ以外に後日、彼女の自宅を家宅捜索した際にキダチチョウセンアサガオの花や社長の私物などが見つかったそうだ。
キダチチョウセンアサガオにはトリカブトなどのように死に至るまでの強い毒性はないものの、運悪く社長は亡くなったのだろう。
「しっかしこの会社どうなるんっすかね」
事務所に戻る車の中、デンが呟く。
「社長がいなくなったから今よりは働きやすくなるんじゃないか」
「でも会長が戻ってきたらまた逆戻りなんじゃ…」
事務所に着くまで無言の時間は長く続いてしまったのだった。
…
デンには一つだけ気になることがあった。
警察署に送り届けた彼女の残り香からかすかにタバコのにおいがした気がした。
デンはやんちゃな見た目に反してタバコの煙が大嫌いだ。
そのためタバコの匂いには非常に敏感だ。
岳剛社長は外見にそぐわず非喫煙者だったため、タバコの煙を頭から吹きかけられないことは救いだった。
頭から暴言とともに煙を浴びせられたら多分デンが社長をその場で殺していただろう。
幹雄会長は昔吸っていたようだが孫娘を気遣って辞めたそうだ。
梅迫はタバコよりも酒らしい。
唯一、会社で喫煙者なのはデンが慕う松岡だけである。
前田が実は愛煙家の可能性もあるので深く考えないことにしたのだった。
…
この事件のことを愛人が社長を殺したとしてスキャンダラスにマスコミが騒ぎ立てた。
事務員が逮捕されたことを知った会長の怒りは凄まじいものだったが、その怒りにも勝る出来事が起こる。
なんと会社の不正会計やら脱税やらいろいろなことが公になってしまったのである。
こうして会社から不正に加担していた創業者一族は一掃され、代わりに現在は簡清株式会社の役員だった松岡が自身の会社に吸収合併してしまった。
デンも梅迫も二人とも松岡に雇われることになって一安心だった。
「クビにならなくてよかったっすねぇ」
デンは松岡のことを拝みそうな勢いだ。
「なんにせよ松岡さんに感謝だな」
梅迫もなんだかんだ危ない橋を渡っていたものの、松岡が全て幹雄会長一家の責任にしてくれたので難を逃ることができた。
松岡には感謝しかない。
「でもあれだけの証拠よくみつかったすね」
松岡が提示した証拠は長年にわたる不正を完全に裏付けるものだった。
あまりに完璧すぎて幹雄会長は反論できないまま怒りのあまり気絶したとか。
「たぶんどれもあの小屋に隠してたはずなんだが…松岡さん曰く、会長が葬式の日に酔って口を滑らせたらしいぞ」
「なにやってんすか会長」
デンも梅迫も若干、あきれていた。
「社長の奥さんとかお子さんは大丈夫なんすか?」
「あぁ、奥さんから連絡が来たが子供二人と一緒に家を手放して奥さんの実家に帰るらしい」
「そうっすか」
さすがに人の死んだ家にいつまでも住んでいられなかったのだろう。
それとも社長一家と縁を切りたいだけなのか、真相は奥さんしか知らない。
「梅さんもそろそろ奥さんと子供さん大切にしないと出ていかれちゃいますよ」
「う、うるせぇ!余計なお世話だ!」
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