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会社の毒華
11話
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「とりあえず話を進めましょう。前田さんはキダチチョウセンアサガオのつぼみがオクラに似ていることを利用して社長に食べさせたんだ。オクラを買ったけどちょっと苦かったから食べてみてほしいといえば簡単に毒とは疑わずに食べただろう」
「仮に、仮にですよ、私があの花に毒があると知っていたとしても社長に毒を盛るだなんて恐ろしいこと考えませんよ。第一、私には動機がないんですから」
ここでデンの出番だった。
「それはあんたが社長と不倫してたからっすよ」
「不倫?そんな証拠どこにあるんですか」
「これっす」
デンが取り出したのは偽の自身と梅迫の出張の旅程表を取り出した。
「社長の愛人との旅程表っす。あんたのSNSに同じ日にここの宿の写真が載ってたの、あれは偶然っすかね?」
「ぐ、偶然よ!偶然に決まっているわ」
「宿の人に電話して確認してみたんすよ。経費に不備があったんだけどあの日社長と来たのは誰でしたかって。そしたら女性だったって答えたんすよ。予約客の名前が男だからおかしいなって思ったけど男っぽい名前の女性もいるから突っ込まなかったって」
「でもその女性が私だっていう証拠はないでしょ。奥様だったかもしれないじゃない」
「警察に言えば防犯カメラとかで確認してもらえると思うんすけどね…まぁもっと確実な証拠がこっちにはあるんで」
「確実な、証拠?」
事務員は一瞬後ずさった。
「これ探すのが一番大変だったすよ」
それはデンと梅迫が鉢植え以外にあのゴミ山から見つけたとあるものだ。
「なんでそれが…あっ」
事務員はそれを見て思わず口を滑らせてしまったようだ。
「これが何かわかるんすね」
「し、知らない、そんなメモ知らないわ」
「メモって言ったことが証拠っすよ」
デンは裏返しにしたくしゃくしゃの紙を見せただけだった。
紙を表面にすると金に縁どられた可愛らしいカードが現れる。
その中心には少し特徴的な岳剛社長の癖のある太字でメッセージが書かれていた。
「今日、17時に君の家でってこれ社長の字っすよね?携帯で連絡を取り合うと不倫の証拠が残りやすいからあえてメモを使ったみたいっすね。おおかた社長室にお茶を持っていったときにでもやり取りしてたんでしょ。いつもはこのメモをシュレッダーにかけてたみたいっすけど、あの日のあんたは毒のことで頭がいっぱいだったんすね」
岳剛社長の残した最後のメモが彼女との逢引の証拠として残ってしまったのだ。
ちなみにこのメモはたまたまデンが何気なくゴミ袋の山を漁っていたら出てきたもので二人には偶然の副産物だった。
しかしもしこれが決定的な証拠になる可能性があるならと彼女の前に提示してみたのである。
「オレも梅さんもこのメモのことは知らないし見たこともない。松岡さんや会長に聞いてみてもいいんすよ、社長からこんなメモもらいましたかって。それともあんたの家の防犯カメラ映像、あの日の17時くらいのやつ確認したらいいっすかね。ばっちり社長が入っていくところ映ってるんじゃないすか?きっとそこまでは気が回ってなかったでしょ。だってこんなメモ、シュレッダーにかけずに丸めて捨てちゃったくらいだから」
「それから前田さんのデスクにこれと同じ柄の白紙のメモ用紙がストックされてますよね?あなたのメモを勝手に社長が使って第三者にメッセージを残したとも考え難いだろうな」
「うっ…」
事務員は両手で顔を覆って床に崩れ落ちた。
そして彼女はようやく自分の罪を認めたのだ。
「本当に殺す気はなかったのよ。ただちょっと彼が具合悪いでも悪くなったらって思ってただそれだけ」
「関係は無理やりだったって言いたいんすか?」
「違うわ、そうは言わない。最初は無理やりだったかもしれないけど、それでもだんだんと私の大切な人になっていったの。だから具合が悪くなったら家に帰らずにそばにいてくれるかなって」
結局、彼女の出した手料理を口にして泊まることなく社長は家に帰ってしまったと彼女は涙ながらに語ったのだった。
「仮に、仮にですよ、私があの花に毒があると知っていたとしても社長に毒を盛るだなんて恐ろしいこと考えませんよ。第一、私には動機がないんですから」
ここでデンの出番だった。
「それはあんたが社長と不倫してたからっすよ」
「不倫?そんな証拠どこにあるんですか」
「これっす」
デンが取り出したのは偽の自身と梅迫の出張の旅程表を取り出した。
「社長の愛人との旅程表っす。あんたのSNSに同じ日にここの宿の写真が載ってたの、あれは偶然っすかね?」
「ぐ、偶然よ!偶然に決まっているわ」
「宿の人に電話して確認してみたんすよ。経費に不備があったんだけどあの日社長と来たのは誰でしたかって。そしたら女性だったって答えたんすよ。予約客の名前が男だからおかしいなって思ったけど男っぽい名前の女性もいるから突っ込まなかったって」
「でもその女性が私だっていう証拠はないでしょ。奥様だったかもしれないじゃない」
「警察に言えば防犯カメラとかで確認してもらえると思うんすけどね…まぁもっと確実な証拠がこっちにはあるんで」
「確実な、証拠?」
事務員は一瞬後ずさった。
「これ探すのが一番大変だったすよ」
それはデンと梅迫が鉢植え以外にあのゴミ山から見つけたとあるものだ。
「なんでそれが…あっ」
事務員はそれを見て思わず口を滑らせてしまったようだ。
「これが何かわかるんすね」
「し、知らない、そんなメモ知らないわ」
「メモって言ったことが証拠っすよ」
デンは裏返しにしたくしゃくしゃの紙を見せただけだった。
紙を表面にすると金に縁どられた可愛らしいカードが現れる。
その中心には少し特徴的な岳剛社長の癖のある太字でメッセージが書かれていた。
「今日、17時に君の家でってこれ社長の字っすよね?携帯で連絡を取り合うと不倫の証拠が残りやすいからあえてメモを使ったみたいっすね。おおかた社長室にお茶を持っていったときにでもやり取りしてたんでしょ。いつもはこのメモをシュレッダーにかけてたみたいっすけど、あの日のあんたは毒のことで頭がいっぱいだったんすね」
岳剛社長の残した最後のメモが彼女との逢引の証拠として残ってしまったのだ。
ちなみにこのメモはたまたまデンが何気なくゴミ袋の山を漁っていたら出てきたもので二人には偶然の副産物だった。
しかしもしこれが決定的な証拠になる可能性があるならと彼女の前に提示してみたのである。
「オレも梅さんもこのメモのことは知らないし見たこともない。松岡さんや会長に聞いてみてもいいんすよ、社長からこんなメモもらいましたかって。それともあんたの家の防犯カメラ映像、あの日の17時くらいのやつ確認したらいいっすかね。ばっちり社長が入っていくところ映ってるんじゃないすか?きっとそこまでは気が回ってなかったでしょ。だってこんなメモ、シュレッダーにかけずに丸めて捨てちゃったくらいだから」
「それから前田さんのデスクにこれと同じ柄の白紙のメモ用紙がストックされてますよね?あなたのメモを勝手に社長が使って第三者にメッセージを残したとも考え難いだろうな」
「うっ…」
事務員は両手で顔を覆って床に崩れ落ちた。
そして彼女はようやく自分の罪を認めたのだ。
「本当に殺す気はなかったのよ。ただちょっと彼が具合悪いでも悪くなったらって思ってただそれだけ」
「関係は無理やりだったって言いたいんすか?」
「違うわ、そうは言わない。最初は無理やりだったかもしれないけど、それでもだんだんと私の大切な人になっていったの。だから具合が悪くなったら家に帰らずにそばにいてくれるかなって」
結局、彼女の出した手料理を口にして泊まることなく社長は家に帰ってしまったと彼女は涙ながらに語ったのだった。
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