さよならをする前に一回ヤらせて

浅上秀

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ショウの大学生活

看病 前編

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「ダァー、しんど」

熱を出したのはいつぶりだろうか。
思い返しても小学生の頃が最後だったように思うショウ。
久しぶりの発熱は思った以上にショウの精神を蝕んだ。

「腹減ったけど起き上がるのだるいなぁ」

冷蔵庫に何かあっただろうか。
考えるのも億劫である。

「まぁいいか」

トロトロと睡魔に身を任せていた時だった。
部屋のチャイムが鳴る。
ショウが出ないとガチャリと鍵穴から音がした。

「お邪魔します」

合鍵を持っているイツキだ。

「あ」

ショウはベットから身体を起こす。

「いいよ、寝ていて。母さんに聞いたんだ、風邪ひいたんだって?」

ベット脇に近づいたイツキ。
イツキの冷たい手がショウの額に伸びる。

「うわっ、熱いね」

イツキは慌てて持っていたビニール袋を漁って冷えピタを取り出すとショウの額に張り付けた。

「はい、これスポドリと薬とゼリーね。あとうどんも買ってきた」

イツキは買ってきたものを並べる。

「喉乾いたし、腹も減った…」

ショウのつぶやきにイツキはとりあえずスポドリを渡す。

「水分ちゃんと取りなよ」

「わかってる…」

ショウの頭を撫でるとイツキはキッチンに向かった。
うどんを作ってくれるようだ。

「冷蔵庫の中、空っぽだね」

うどんの具になりそうなものは何もなかった。

「ちょっと買ってくるね」

「ん」

そそくさと部屋を出ていくイツキの背中を見送ったショウはなぜだか寂しさに泣きそうになっていた。

「んだよ」

涙をごまかすためにスポドリを一気に飲み込んだのだった。



「ただいま」

イツキが買い物から戻るとショウは眠っていた。

「かわいいあなぁ」

成人したがまだあどけないその寝顔を少しだけ眺めていた。

「あ、いけない、うどんうどん」

寝顔を名残惜しく思いながらも立ち上がってキッチンに向かう。
小鍋を取り出してだしを作り、別の鍋で麺をゆでる。
出来上がりが近づき鍋からいい匂いがし始める。

「んんっ」

ベットからショウの声がした。
イツキがベットの方に視線をやるとショウが目をこすって上半身を起こしていた。

「起きた?うどん、もう少しでできるよ」

「ん」

ショウはゆっくりベットから降りるとダイニングテーブルに向かった。
椅子に腰かけるとテーブルに倒れこんだ。
冷えたテーブルの面がショウの熱を吸い込んでいく。

「ほら、身体起こして、鍋置くから」

イツキに促されて身体を起こすとだしの匂いがショウの鼻をくすぐる。
片手鍋、お椀、お箸が置かれる。
イツキはお椀に鍋からうどんとだし、溶き卵、ねぎをよそってくれる。

「熱いから気を付けてね」

「ん、いただきます」

思っていたより食欲のあったショウは鍋にあったうどんを全て食べきったのだった。




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