さよならをする前に一回ヤらせて

浅上秀

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番外編 初めての家族旅行

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「ついたー!」

母は真っ先に車から降りて体を伸ばしている。

「運転お疲れ」

免許を取ったばかりのショウの運転の練習も兼ねていた。

「おぅ」

三人でチェックインすると、フロントの人がとてもすまなそうに言った。

「申し訳ございません。本日こちらの手違いで、三名様一室をお取りできず、二名様一室と一名様一室になってしまいまして…」

「それって料金はどうなるんですか?」

「こちらの不手際ですので追加料金等はいただきません」

「どうする?」

母がイツキとショウに尋ねる。

「俺はなんでもいい」

「僕も」

そっけない二人の回答に母は頬を膨らませた。

「もう…まぁ空いてないのならしょうがないわよね」

「ありがとうございます」

こうして三人は二人部屋と一人部屋に別れることなった。



チェックインが終わると仲居さんが部屋に案内してくれる。

「あら、ちょっと待ってショウ」

一人部屋にそそくさと入ろうとしたショウを母が呼び止める。

「あ?夫婦で二人部屋だろ?」

面倒くさそうにショウが母に言った。

「私、一人部屋がいい。のんびりしたいもの」

それを聞いたイツキは苦笑している。

「だそうだよ。ショウ、二人部屋に行こうか」

「男同士のほうが大浴場に行くのも便利でしょ?ま、ご飯は一緒に食べましょうね」

母は二人にウインクをすると部屋に入ってしまった。

「…行こうか」

「あぁ」

ショウとイツキの入った部屋は全面畳張りの純和室だ。

「もう温泉行く?」

荷物を床に置いて、棚から浴衣やタオルを漁っていたイツキがショウに尋ねる。

「ん」

ショウは短く返事をすると大浴場に持っていく荷物を用意した。

「はい、これショウの分ね」

イツキが浴衣やタオルを手渡す。

「サンキュ」

ショウは片手で受取がてら、いたずらにイツキの唇をついばんだ。
イツキは驚いたまま目を見開いて固まっている。

「何してんだよ。おいてくぞ」

悪戯っ子のように笑ったショウは先にスリッパを履いて待っている。

「あ、え、あ、うん」

イツキは慌てて身支度を整えるのだった。






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