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社会人になったショウ

1話

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春からついにショウは社会人になった。
入社早々、研修が始まる。慣れないことばかりで日々、バタバタしていた。

「はぁ」

昼の休憩時間、コンビニで買ったサンドイッチをかじりながらショウはスマホの画面を眺めていた。
イツキはイツキの会社の新人研修やその他の業務に追われているようで連日残業しており、平日の夜は全く会えない。週末は週末で平日に貯めこんだ家事を片付けるの忙しくて、学生の頃のようにイツキを家にあげたり一緒に出掛ける暇もない。
ショウはイツキとの時間が取れずにフラストレーションが溜まっていった。

「どうした?なんか悩み事か?」

ショウの座っていたベンチの隣に会社の先輩が腰かけてきた。
研修で何かとショウのことを気にかけてくれる人だ。
昔、ラグビーをやっていたらしく非常に大柄だ。

「え、えぇまぁ」

ショウが歯切れ悪く答える。

「はは、そうかそうか。困ったことがあったら何でも言ってくれよ。恋愛ごと以外なら相談にのるぞ」

豪快に笑ってショウの背中をバシバシ叩いてくる先輩は昨年離婚したそうで恋愛面では参考にしない方がいいと他の先輩にも言われている。

「はぁどうも」

「もしかして恋愛の悩みだったか?」

少しショウはギクリとした。
そもそもイツキとの間にある感情を言語化するのは難しい。

「い、いえ、最近忙しくて家族と会う時間が取れないなと」

「へぇ、さてはお前マザコンか?」

茶化してニヤニヤしてくる先輩をみて相談相手を間違えたと悟った。

「いえ、違います。食べ終わったので失礼します」

早々にここを離れようと立ち上がるショウの肩を慌てて先輩はつかんだ。
「待て待て、揶揄って悪かったよ。そうだな、もう少ししたら仕事も落ち着くだろうからご家族との時間も取れるんじゃないか。研修的には今が佳境だし、研修を越えたら今度は配属先になれなきゃいけないからな」

もう少しって半年以上先か、とざっくり計算してショウは思わず肩を落とすのだった。



しかし意外にも翌週にはイツキの忙しさが落ち着いたようで週末ショウの部屋に来て家事を手伝ってくれた。

「ごめん、せっかく休みなのに」

「気にするな。母さんも心配してたぞ」

「うん」

久しぶりに会うせいなのか会話が少しギクシャクしていた。
そのせいか部屋の中に沈黙が流れる時間が多かったような気がする。

「今日、久しぶりに泊ってく?」

ショウはイツキを本当は今すぐにでもベットに押し倒したかった。

「いや母さんに泊まるって言ってないんだ。帰るよ」

イツキはそっけなくそう答えると身支度を整えていた。そして夕方になると家に帰って行ってしまった。
ショウはポツリと一人部屋に取り残されたのだった。


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