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本編
5話
しおりを挟む参観日の日にイツキに怒鳴ってからというもの、ショウはイツキと顔をあわせることがきまづくて仕方なかった。
食事の時はわざと時間をずらしたり、朝や夕方など洗面所やお風呂場、玄関ですれ違わないように避け続けた。
「ねぇ、ショウ、もうお父さんのこと許してあげれば?家族でしょ?」
母は複雑なショウの心境を察することなく、そう言ってくる。
余計にそれに反抗したくて、イツキを避け続けてしまうのだった。
…
口を利かなくなって、しばらく経った。
イツキもショウの気持ちを察してか、遭遇しないように行動してくれるようになったようだ。
「おまえ、最近、父親とどうよ?」
久しぶりに友人にそう聞かれた。
「…別に」
「お、その間はなんだよ、絶対なんかありましたって言ってるようなもんだろ」
友達は笑いながらショウの肩を叩いた。
「実はさ…」
ショウは友達にイツキと参観日以来気まずくなってしまったことや、家族に思えないことを相談してみたのだ。
「なるほどな…」
「おまえはどうやって認めた?」
「父親を?あー、認めたって言い方が適切なのかはわかんないな。それでも家族だとは思ってるよ、一応な」
友達も苦笑いを浮かべていた。
「おまえ、大人だよな」
「そんなことねーよ。赤の他人がある日いきなりやってきて今日から家族ですなんて、厳しいに決まってる。なんていうか…割り切っただけかな」
「割り切る?」
「そういうもんなんだって」
「そんなもんか?」
「そんなもんだよ」
二人は顔を見合わせて笑い合った。
…
中学の卒業式、ショウ周りはみんな家族が来ていた。
友達と写真を撮り終えたシャウにはもう学校に用はない。
校門の前で写真を撮りあって楽しそうにしている様子を横目にショウは帰宅しようとしていた。
「ショウ、くん!」
後ろから不意に声をかけられた。
「ん?」
振り向くとイツキがいた。
「お母さん、仕事で来れないから代わりに来てみたんだけど…やっぱり迷惑だったかな?」
少し気まずそうな表情をしていた。
シャウが黙っているとイツキは矢継ぎ早に話しかけてくる。
「あの、それでね、せっかくだからお母さんにショウの晴れ姿見せてあげたくて…写真撮ってもいいかな?」
「…別に、いんじゃね」
「うん!ありがとう!!」
イツキはものすごく嬉しそうな表情を浮かべていた。
「じゃあ撮るよ、ハイチーズ」
ショウは気恥ずかしくてカメラから視線を逸らした。
「あ、あの!」
いつぞやの女子生徒二人がショウとイツキに声をかけてきた。
「い、一緒に撮りましょうか?」
「え、いや、いいよ…」
イツキは寂しそうに遠慮している。
「…今日くらいいいんじゃねぇの」
ショウはイツキの腕を掴んで隣に立たせた。
「そ、それじゃあ、撮ります!ハイチーズ」
初めて二人で写真を撮った瞬間だった。
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