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第4章 変化

4-2 休憩

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 毎日午後に行われるルーナとの勉強も始まりしばらくが経過した。
 今のルーナはこの町。魔王城の離れで何かするということが全くない(ソフィ曰く捨てた無能に仕事を回すわけがない。と、なかなかの事を言っていた)ため。時間だけは毎日あったので、勉強は順調に日々行われていたが。順調に進み続けるということはなかった。

「ここ、違います」

 俺はルーナの書いていた紙の一部を指差しつつ指摘する。

「あー、ほんとだ」
「まあ中級魔術ですからね。一気に難しくなりますから」
「いやいや、まだ中級。上級ならまだしも――こんなところで詰まっていたら……でもこれ難しい。頭割れる――」

 ルーナは、そういいながら頭を抱え机につぶれた。あたりにはいろいろな術式が書かれた紙が散乱している。片付けはいつも勉強終了後にしているので今は見なかったことにしてほしい。かなり散乱しているが……。

 とにかくだ。勉強の話に戻すと、中級魔術になると書くというのはかなり複雑になり大変だ。なので昔俺もかなり苦戦した記憶がある。
 中級魔術以上になると書くことが多く。途中でぐちゃぐちゃになってくる。もちろん紙に書かなくても、頭の中でも同じなのだが。それができるかできないかで、中級魔術が使える使えないになる。
 ちなみにルーナの目標は魔術が使えなくても、上級魔術をすべての方向で知識を獲得したい(簡単に言えば魔王様と同じということだ)なので、まだまだ先は長い。
 しかし今までちゃんと勉強ができず。独学だったルーナでは間違った覚え方もあり。それを直して――となるとなかなか大変なことだ。だから無理に進めることはせず。俺は丁寧に進めていた。

「――ちょっと休憩しましょうか」
「休憩?」

 しばらくして、ルーナが疲れてくると適度に休憩も忘れずに入れるようにした。ちなみに休憩がうれしかったのか。少しだけルーナの表情が緩んだ気がした。

「はい。今日はフレンチトーストでもと準備してあります」
「おいしそう!食べる!食べる!」

 俺が言うとすぐにバンと机を叩きながら立ち上がるルーナ。今すぐ出せ!という勢いだった。頭使うと甘いもの欲しくなるからね。

「では今から作ってきます」
「あっ、私も作るの手伝う」

 すると、ルーナがそんなことを言いだしドアの方へと歩き出した。
 
 はじめのころならありえなかったことだろう。でも確実にルーナは何かがここ最近変わりだしているように俺にも思えた。
 そんなルーナの様子を嬉しく思いつつ俺が少し見ているとルーナに声をかけられた。

「セルジオ?行かないの?」
「あっ。すみません。でももう準備してあって焼くだけですから」

 返事をしつつルーナを追いかける。

「なら焼いてみる」
「――わかりました」

 するとルーナがそんなことを言いだしたが。それは……大丈夫だろうか?とすぐに俺の頭の中では警報音が鳴ったのだが。せっかく楽しそうにしているので、変に水を差すことはもちろん言わなかった。しかしちょっと心配――爆発しなければいいが……。

 俺がそんな心配をしていると。前を歩くルーナがドアを開ける。
 すると、ちょうどソフィが荷物を運んで部屋の前を――いや、盗み聞きしていたか?ドアの前で待ち構えていた様子だった。

「これはルーナ様。セルジオ様との2人っきりに耐えれなくなりましたか?」

 そして、にやっとしつつルーナに声をかけるソフィ。いやいやいきなり謎なこと言って煽ってるよ。ちなみにすでに勉強をしていることはソフィにもバレている――と知りつつあったルーナだが。一応まだ隠している?らしい。

「ち、違うから。ちょっと特訓の休憩――おやつ作るの」
「火事を起こさないでくださいよ?」
「なんでよ!」
「爆発とか勘弁ですよ?後処理が大変ですから」

 やはりというべきか。俺が心配に思っていたことをソフィもすぐに思ったらしい。って、それをさらっと言っちゃうソフィすごい。

「ほんと最近のソフィ生意気!」

 とりあえず、めっちゃ煽るソフィ。そして噛みつくルーナ。俺はそんな2人の横を通過し――先に調理場へと向かったのだった。
 何故先に向かったかって?あの2人。いつものことだとしばらく時間がかかりそうだからだ。
 そして、結果としては俺の予想は正しく。しばらくルーナが調理場へと来ることはなかった。というか来ることはなかった。ずっと頭上から言い合いの声が聞こえていただけだった。
 なので俺は1人でフレンチトーストを作り。ルーナの部屋へと戻ったのだった。

「いい香り――ってもう出来ちゃったの?」
「はい」

 俺がフレンチトースト片手に戻るとルーナが驚きつつ。近寄ってきた。ちなみにソフィが多分いつも通り勝ったのだろう。ニヤニヤしつつ立っていた。

「ソフィのせいで手伝えなかったじゃない!」
「火事にならなくてよかったです」
「ソフィ!」
「あの――ルーナ?冷める前に――」
「あっ。うん。食べる食べる。早く運んで」

 俺が声をかけるとルーナはすぐに自室へと入っていく。その姿を見てソフィが微笑んでいたが。ルーナには言わないでおこう。ちなみにフレンチトーストは大変好評だった。

「おいしかったー」

 そしてルーナがフレンチトーストをしっかり食べ終えた頃。ソフィがルーナの部屋へとやって来た。そして来るなり机の上を見回す。

「お勉強は進んでいるようですね」
「ちょ、そんなんじゃないし。勝手に見るなーって、なんでさらっと入って来てるの!許可してないし!」

 どうやらソフィそろそろ知ってますというのをバラしに乗り込んできたらしい。

「コソコソ昔からルーナ様は徹夜でしてましたからねー」

 そしてつぶやくソフィ。それを聞き『なっ!?』という表情になったのはルーナだ。

「知らないとでも?」
「――」

 黙るルーナ。いやいやルーナよ。本当にバレていないと思っていたのか。それに驚きだよ。

「ところで、そろそろ私が必要なのでは?」
「な。なんでよ」
「魔術を発動できるのは私だけ。ルーナ様が正しいのか。確認が必要なのでは?」

 確かにそうだ。そろそろ確認もしたいと思っていたのは事実だ。
 というかソフィ確実に盗み聞きをいつもしていて、タイミングを見計らっていたとみた。
 結果として、明日からは、ルーナが考えた術式で、ソフィに魔術を発動してもらうことになったのだった。
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