召喚勇者の餌として転生させられました

猫野美羽

文字の大きさ
上 下
165 / 203

164. ホームセンター 2

しおりを挟む

母さんは俺を気遣い、夕飯の際、兄弟とは別々にしてくれた。

兄も弟もあの事件以来、俺と会話がないから。

「リクエスト、俺、よくわかんないし...母さんの得意料理とかなんでもいいよ、俺」

微笑んで俺はそう言ったら母さんはきょとん、として微笑んで....。

「和食?洋食?悩むわね...俊也はなにを作っても喜んで食べてくれるもの」

母さんもそう微笑んで、

「オムライスなんかどう?あと何かスープとサラダ...とか?」

うん、と頷いて、とても美味しかった。

明日は久しぶりに樹と会えるし、楽しみだ。

不意にスマホが音を立てた。

「樹かな」

そうして画面見たら、豊だ。

「もしもし?久しぶり」

涼太となにかあったのかな、そう感じた。

「明日、樹と映画だって?樹が嬉しそうに電話して来て。あいつ、昔からそんな感じだけど、俺たちも誘おうとして。二人きりで行きたいと思うよ、て促しといたから」

思わず微かに笑った。

「そっか、ありがとう。てか、なんかあった?涼太と」

「....鋭いな、俊也」

豊はびっくりして、その後、詳しい事情を話してくれた。
樹には良かったら伏せて欲しい、てそう言って。

「ああ、だからか。なんか前にさ、涼太、てどんな奴か、て知りたくて。樹のために。
空っぽな感じしたんだよな。涼太の部屋、何もないから」

「....空っぽな感じした...。そういえば、満たしてやれ、て確か俊也、そう言ったな、確か...俺に、そう明るく、余裕がある感じでさ。
なんか...なんだろ、お前と話すと自信持てるというか、なんていうか、さ...」

しばらく豊の話しに耳を傾けた。

「俊也、てさ、自分に余裕なくてもお前は常に他人のこと考えて、観察して、的確なアドバイスが出来る....なんだろ、凄いな、お前って...樹、お前と付き合えて良かった、て思う。いや、違う、俺も涼太も、さ、お前と知り合えて良かった...」

少し首を傾け、笑った。

「....買い被りすぎじゃない?」

「いや、お前、凄いよ...なんだろ、同じアルファだけど、俺もお前も。なんか、頭がいいんだな、天才肌で、でも思いやりもあって...人を気遣える。樹が映画が好きだから、俊也、さりげなく映画に誘ったり....自分の行きたいところじゃなく、樹の行きたいだろうな、てことを...わかってて連れていく、さりげなく....まだまだあるけど...だから、かな」

一瞬、豊が言葉を見失った感じがした。

戸惑ってるけど、なんだか。

「なに?」

「....だから、お前はいじめられてたんだろうな、多分...お前に嫉妬して。お前には敵わない感じで...
お前が凄く才能もあって、環境も恵まれてる、そう思われて....性格までいい、優しいから...なんかお前、てキラキラしてるから、羨ましくて」


「....俺がキラキラ?よくわかんないけどさ。自分のことはさ、俺は別にどうでもいいんだ、だから、あんまよくわからないけど。とりあえず、さ。
涼太はお前が、豊次第で変われると思う。きっと。
一緒に色んなことをして、探せばいい。
涼太を楽しませること、喜ぶこと、笑顔にさせること。涼太と一緒に探してさ、そしたら涼太は大丈夫。父親の話しは別だけど。 
裁判沙汰にしたら証言やら記事にでもされたら涼太、また苦しむから、考えなきゃだけどさ」

豊が黙り込んだ。

「どうした?」

「....いや、お前、本当に凄いな、て思って...
即答で的確にアドバイスできて...凄いな、お前。確かにそうだ...。
樹、お前に出会えて良かった。俺や涼太で、さ、樹を以前、傷つけてしまった。お前がいたから、樹も涼太も俺も...変われたし救われて今がある...」

豊の呆然とした声にまた少し首を傾げそうになりながら微笑んだ。

「多分、もしかしたらだけど、涼太は自暴自棄になってたのかもな。樹も豊のことも本当は好きだけど嫌われたい、みたいなさ。
あと父親、アルファなんじゃない?案外。だからアルファが憎い、みたいな。
あと自分がアルファじゃなくて、コンプレックスとかジレンマ、て言うのかな。
俺も良かったよ。お前と、豊とも出会えて。ようやく、俺、友達ができた、て感じして嬉しいからさ」

俺が笑ったら、豊はまた少し黙って、

「....そうか...なるほどな...。ありがとう、俊也。本当にありがとう」

そう言って微笑んでる感じがして、嬉しかった。

「上手くアドバイス出来てるかわからないけどさ、頑張りなよ、涼太が好きならさ。涼太が笑っていて欲しいなら、一緒にいたいなら。応援してる。俺も樹も」

「祭りとか、海やプールは多分、無理かもだけど...涼太、プール無理だったし...」

「そう?泳ぎ方、教えてあげればいいだけじゃない?言えなかったんだよね?昔は」

「....やっぱ、お前、すげーわ。その通りだな、ホント」

涼太への不安が落ち着いた感じのため息を洩らす豊に安堵し、微笑んだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

調子に乗りすぎて処刑されてしまった悪役貴族のやり直し自制生活 〜ただし自制できるとは言っていない〜

EAT
ファンタジー
「どうしてこうなった?」 優れた血統、高貴な家柄、天賦の才能────生まれときから勝ち組の人生により調子に乗りまくっていた侯爵家嫡男クレイム・ブラッドレイは殺された。 傍から見ればそれは当然の報いであり、殺されて当然な悪逆非道の限りを彼は尽くしてきた。しかし、彼はなぜ自分が殺されなければならないのか理解できなかった。そして、死ぬ間際にてその答えにたどり着く。簡単な話だ………信頼し、友と思っていた人間に騙されていたのである。 そうして誰もにも助けてもらえずに彼は一生を終えた。意識が薄れゆく最中でクレイムは思う。「願うことならば今度の人生は平穏に過ごしたい」と「決して調子に乗らず、謙虚に慎ましく穏やかな自制生活を送ろう」と。 次に目が覚めればまた新しい人生が始まると思っていたクレイムであったが、目覚めてみればそれは10年前の少年時代であった。 最初はどういうことか理解が追いつかなかったが、また同じ未来を繰り返すのかと絶望さえしたが、同時にそれはクレイムにとって悪い話ではなかった。「同じ轍は踏まない。今度は全てを投げ出して平穏なスローライフを送るんだ!」と目標を定め、もう一度人生をやり直すことを決意する。 しかし、運命がそれを許さない。 一度目の人生では考えられないほどの苦難と試練が真人間へと更生したクレイムに次々と降りかかる。果たしてクレイムは本当にのんびり平穏なスローライフを遅れるのだろうか? ※他サイトにも掲載中

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~

イノナかノかワズ
ファンタジー
 助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。  *話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。  *他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。  *頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。  *無断転載、無断翻訳を禁止します。   小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。 カクヨムにても公開しています。 更新は不定期です。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

野草から始まる異世界スローライフ

深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。 私ーーエルバはスクスク育ち。 ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。 (このスキル使える)   エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。 エブリスタ様にて掲載中です。 表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。 プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。 物語は変わっておりません。 一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。 よろしくお願いします。

処理中です...