召喚勇者の餌として転生させられました

猫野美羽

文字の大きさ
上 下
125 / 203

124. 二階建てコテージ

しおりを挟む

 召喚購入した品物はまずは【アイテムボックス】に保管される。
 リストを確認すると、しっかり『二階建てコテージ』が収納されていた。

「あとは設置するだけ、っと」

 猫の妖精ケット・シーであるコテツが精霊魔法を使って綺麗に整えてくれた場所に、二階建てのコテージを設置する。

「わぁ……! 大きなお家です!」
「タイニーハウスと比べたら、別荘だな」
「ふにゃあぁ……」

 二人と一匹で、しばし見入ってしまう。
 それほどに立派な建物だった。

「うん。木造のコテージだし、作りがかなりしっかりしていること以外は普通……だよな?」

 外観は有料キャンプ場で良く見かけるタイプの貸しコテージに近い。
 綺麗に組まれた丸太が整いすぎて、少し不自然かもしれないが、この世界で見掛けてもおかしくはないはずだ。

「少なくとも、コンテナハウスほど見た目が異質には思われないよな。うん」

 コテージに歩み寄り、じっくりと観察する。
 玄関前にはデッキ設備が付いているので、屋根の下でバーベキューが楽しめそうだ。
 四人掛けのテーブルセットを置いて、バーベキュー用のグリルや調理テーブルを並べても、まだ余裕のありそうな広さに嬉しくなる。

「家の中も見てみよう」
「はいっ!」

 シェラの真似をしたコテツも片手を上げて「にゃっ」と良いお返事。かわいい。
 玄関から入ってすぐにリビングの開放的な間取りだ。
 壁際には薪ストーブが置かれている。
 二階建てコテージの説明文には暖炉とあったが、薪ストーブだったようだ。

「家と一体型なのが暖炉で、建物とは切り離されて設置できるのが薪ストーブだっけ?」

 詳しい定義は分からないが、困ることはないので特に気にしないことにした。
 昔ながらの暖炉より、調理にも使える薪ストーブの方が断然ありがたい。
 日本で良く見かける、キャンプにも使えるような手軽な薪ストーブではなく、本格的でかなり大きかった。
 薪の投入口の下には引き出し式の灰受けボックスがあり、ここに冷めた食材を入れておくと保温が出来るようになっている。

「硬くなったパンや干し肉を柔らかくするのにちょうど良いな。低温調理ができるなら、ローストビーフや鶏ハムも作れそうだ」

 下拵えだけしておいて、後は放置で良いのが素晴らしい。
 ストーブの上部の鉄板では湯を沸かしたり、鍋料理も作れる。

「うん、いいね。今はまだ暖かい季節だからストーブは使わないけど、秋冬が楽しみだな」

 煮込み料理は長時間トロトロに煮込めば煮込むほど美味しくなるイメージがある。
 圧力鍋は手軽に短時間で煮込めるが、やはり時間を掛けて丁寧に煮込んだ方が不思議と美味しく感じるのだ。
 カレーはもちろん、シチューにポトフ、おでんもメニューからは外せない。
 
「あとは焼き芋だな。アルミホイルに包んでストーブで焼いただけのサツマイモが何であんなに美味いんだろ」

 特に最近のブランド芋の美味しさは格別だ。ほくほく系よりも、断然ねっとり系が好きなので、多少高くとも紅はるかや甘太くんを購入しよう。
 コンビニで売っていると良いのだが。

「天井がすごく高いんですね」 

 コテツを抱っこしたシェラが感心したように辺りを見渡している。

「ああ。暖炉のあるリビングだけ吹き抜けになっているみたいだな」

 コテージには最低限の設備だけで、家具などは置かれていない。
 がらん、としており少し寂しく思うが、好きにレイアウト出来ると思えば、ワクワクしてきた。

「他の部屋も探検したいです!」
「ん、行こう」

 シェラも同じ気持ちらしく、好奇心で顔を輝かせながら、きょろきょろと周囲を確認している。

「リビングを抜けた先には、トイレとバスルームか。一番奥にキッチンとダイニング、あとは倉庫があるんだな」

 ゆったりとした間取りだ。
 キッチンはかなり広く、ダイニングも十二畳くらいはありそうだ。
 食器棚や冷蔵庫などの家具はないが、キッチン台には大きめのシンク、水甕みずがめの魔道具や魔道コンロが設置されている。

「キッチン台の上の棚は作り付けなんだな。ありがたい」

 シンク下も収納スペースがあるので、鍋やフライパンの置き場には困らないで済む。
 調理台もそれなりの広さがあるので、ゆったりと料理を楽しめそうだった。

「うん、良いキッチンだ」

 キッチン横の倉庫は四畳半ほどのスペースだが、作り付けの棚が並び、こちらも便利そう。
 【アイテムボックス】があるので、あまり使わないかもしれないが、消費期限の長い食品や調味料などは、ここに並べておくのも良いかもしれない。
 寝かせれば、それだけ味がまろやかに深まる発酵食品やお酒などの置き場所にも最適だろう。

 キッチンを出て、トイレとバスルームを確認する。
 魔道トイレに手洗い用の水場も中に設置されており、感心した。
 あまり期待はしていなかったが、何とバスルームには魔道バスタブが置かれていた。
 水と火の魔石が組み込まれており、お湯が沸かせる最新タイプ。
 シャワーが無いのは残念だが、蛇口を捻るだけでお湯が出るのはありがたい。
 この魔道具があれば、シェラが一人で風呂を用意出来るようになるので。

(俺とコテツは生活魔法が使えるけど、シェラは使えないからなぁ……)

 地味に思われがちな【生活魔法】だが、実はかなり便利な代物なのだ。
 特に【浄化魔法クリーン】はもはや手放せない、便利魔法だったりする。
 風呂に入れない冒険者活動中でも身綺麗に出来るし、バスタブに張った水を【加熱ヒート】で適温にすることも可能。
 野営時には【着火ファイア】で火を熾せるし、コップ一杯分の水を作れるのは、地味に便利だ。
 冒険者でなくとも、【乾燥ドライ】が使えれば、伐採した木材をすぐに加工できるし、薪も簡単に作れる。
 なかなかに使える魔法なのだ。

(シェラが【生活魔法】を使えるようになるか、調べておこう)

 創造神ケサランパサランから貰った魔法の本で確認すれば、きっと方法も見つかるはずだ。

 ともあれ、今は新居の探検中。
 面倒ごとは後で考えることにして、二人と一匹は二階に続く階段を登った。

「寝室が五部屋に、あとはバスルームとトイレだな」

 トイレは一階と全く同じ。
 バスルームは二階の方がコンパクトだった。バスタブも小さく、洗い場も狭い。

「まぁ、一人で入るにはちょうど良いくらいか」

 シャワーだけの風呂場より、よほど良い。
 小さなバスタブな分、湯が溜まるのも早いので、手早く温まりたい時にはこちらの方が便利かもしれない。

「部屋に入ってみよう」

 手前の部屋のドアを開けてみる。
 一応、簡易な鍵付き。室内は六畳ほどの広さで、やはり家具は何も置かれていない。
 窓がひとつ。ベランダはない。
 のんびり過ごすのは広いリビングで楽しめば良いので、寝室として使うには充分だろう。
 自室が持てると、シェラは大喜びだ。

「どの部屋も同じでした。綺麗な部屋で、とっても素敵!」

 それぞれが一部屋ずつ使っても、三部屋は余る。合流できるかは不明だが、従弟たちの部屋にもちょうど良い数だ。

「ニャッ?」
「ああ、コテツは俺と一緒の部屋だ。リビングにも基地を作ってやろう」

 広いリビングは格好の遊び場になることだろう。
 キャットタワーを組み立てて、お気に入りのソファベッドにクッションも用意しよう。

「各部屋のドアに、ちゃんと猫用のペットドアが付いているとか。創造神ケサランパサランもたまには良い仕事をするな」

 おかげで、ドアを閉じていてもコテツは好きな場所に移動ができる。

「じゃあ、探検も済んだことだし、荷物を運び込むか」
「荷物……」
「ん、タイニーハウスとかコンテナハウスに設置している家具を移動するんだ」

 資金ポイントに余裕があれば、それぞれの家に家具を置くのだが、あいにく今はポイント貧乏だ。

「明日からのダンジョン探索でポイントを大量に稼がないとな」
「そうですね。家具の使い回しはともかく、美味しいご飯は大事ですから」
「そっちかよ」

 ともあれ、今しばらくは節約生活。
 大型家具類を移動させるため、いったん外に出て、庭にそれぞれの建物を出すことにした。



◆◆◆

拍手ありがとうございます😊

お知らせです↓
『ダンジョン付き古民家シェアハウス』の書店予約が始まっております。
よろしくお願い致します。

◆◆◆

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

調子に乗りすぎて処刑されてしまった悪役貴族のやり直し自制生活 〜ただし自制できるとは言っていない〜

EAT
ファンタジー
「どうしてこうなった?」 優れた血統、高貴な家柄、天賦の才能────生まれときから勝ち組の人生により調子に乗りまくっていた侯爵家嫡男クレイム・ブラッドレイは殺された。 傍から見ればそれは当然の報いであり、殺されて当然な悪逆非道の限りを彼は尽くしてきた。しかし、彼はなぜ自分が殺されなければならないのか理解できなかった。そして、死ぬ間際にてその答えにたどり着く。簡単な話だ………信頼し、友と思っていた人間に騙されていたのである。 そうして誰もにも助けてもらえずに彼は一生を終えた。意識が薄れゆく最中でクレイムは思う。「願うことならば今度の人生は平穏に過ごしたい」と「決して調子に乗らず、謙虚に慎ましく穏やかな自制生活を送ろう」と。 次に目が覚めればまた新しい人生が始まると思っていたクレイムであったが、目覚めてみればそれは10年前の少年時代であった。 最初はどういうことか理解が追いつかなかったが、また同じ未来を繰り返すのかと絶望さえしたが、同時にそれはクレイムにとって悪い話ではなかった。「同じ轍は踏まない。今度は全てを投げ出して平穏なスローライフを送るんだ!」と目標を定め、もう一度人生をやり直すことを決意する。 しかし、運命がそれを許さない。 一度目の人生では考えられないほどの苦難と試練が真人間へと更生したクレイムに次々と降りかかる。果たしてクレイムは本当にのんびり平穏なスローライフを遅れるのだろうか? ※他サイトにも掲載中

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~

イノナかノかワズ
ファンタジー
 助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。  *話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。  *他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。  *頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。  *無断転載、無断翻訳を禁止します。   小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。 カクヨムにても公開しています。 更新は不定期です。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

野草から始まる異世界スローライフ

深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。 私ーーエルバはスクスク育ち。 ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。 (このスキル使える)   エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。 エブリスタ様にて掲載中です。 表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。 プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。 物語は変わっておりません。 一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。 よろしくお願いします。

処理中です...