召喚勇者の餌として転生させられました

猫野美羽

文字の大きさ
上 下
24 / 203

23. こつこつ稼ごう

しおりを挟む

 夕食の後片付けをして、早々にテントに引っ込んだ。
 テント泊をして気付いたのだが、このテントの結界は魔獣や魔物を排し、その攻撃を弾くことが出来るだけではなかった。
 テントの入り口を閉めると、外の音が遮断されるのだ。
 小動物や魔獣の鳴き声をシャットアウトできるので、静かに休める。

「山キャンプだと、地味に虫の音や早朝の鳥の鳴き声がうるさいもんな……」

 同じ結界内でも、タープの下だと「外」として認識されるのか、夜の魔獣の遠吠えやフクロウに似た生き物の鳴き声が聞こえていた。
 それなりに風情があるが、たまに魔獣同士の争う音や悲鳴まで届くので、早々にテントの中に引っ込むことにしたのだ。

 テントの中では楽なスウェット姿が定番だ。地球と同じく、この世界でも季節は五月頃ーー初夏の時期だろう。
 日中は少し汗ばむくらいだが、夜から早朝にかけては少し冷える。
 今はフリースのブランケットと寝袋のおかげで快適に眠れているが、今後を考えると、なるべく早く召喚魔法ネット通販のレベルを上げておきたい。

「この魔法書によると、大森林内では四季があって、しかも梅雨があるのか……」

 森の中だから、日本の酷暑ほどの気温にはならないだろうけれど、なるべく快適に過ごせる環境は整えておきたい。
 冬を越す準備はさらに大変だ。

 ステータスボードから確認した、召喚魔法ネット通販の召喚リストには、なんと建物も存在していた。

「内容はピンキリだけど、物置きに毛が生えたような倉庫から、タイニーハウス 、コテージ、コンテナハウスまであるのか」

 購入できるレベルは幾つからだろう。しかも、ポイントはかなり必要そうだ。

「倉庫は家じゃないな。小さすぎるし、夏は暑くて冬は寒い。タイニーハウスは面白そうだけど」

 まだ召喚購入はできないが、詳細欄は見れるようだ。タップすると内容が確認できる。

 小さな家タイニーハウス は、文字通りに小ぢんまりとした小屋に近い建物だ。
 ミニマリストが好みそうな、シンプルで無駄のない家だと思う。
 14平米の家なら、【アイテムボックス】で持ち運ぶことも出来る。
 お値段なんと150万ポイント。
 ふざけんな、とも思うが、家を買うとしたら、そのくらいは必要か。

「でも、これだとだけなんだよなー…。風呂は厳しいにしてもトイレとキッチン設備は欲しい」

 オプション50万ポイントを追加すれば、シンク付きのキッチンとトイレ、ロフトがプラスされるようだ。

「200万か。大森林が梅雨に入るまで1か月として、毎日7万ポイントを稼いでいけば、手が届く額だけど……」

 問題は1か月で召喚魔法ネット通販のレベルをそこまで上げることが出来るかどうかで。

「まぁ、やるしかないか。最悪、梅雨は土魔法のレベルを上げてどうにか凌いで、冬までにレベル上げとポイント貯金だな」

 まさか、こんな年齢で持ち家について頭を抱えることになろうとは思いもしなかった。
 
「でも、物件眺めるのは楽しいかも?」

 物置き倉庫は5万ポイント、納屋なんてのもあるのか。8畳サイズの納屋が70万。
 納屋はコンクリートの床で、平家風の建物だ。夏は涼しいし、梅雨はしのげそうだが、冬は間違いなく凍死するだろう。
 うん、これは却下だな。

「コンテナハウスが400万か。風呂トイレキッチン付きなのは素晴らしい。しかも暖炉まで!」

 家としては手狭だが、一人暮らしなら充分な広さだろう。諸々の設備が揃っているのも
高得点。家具類は付いていないが、ロフトがあるので、そこに布団を敷けば立派なベッドになる。
 タイニーハウスも捨てがたいが、何よりコンテナハウスには、バスタブが付いているのだ。

「タイニーハウスと比べて、ポイントは倍になるけど、どうせならコンテナハウスだよなー。収納できる大きさだし、暖炉があるし」

 冬の暖房問題が、暖炉さえあれば一挙に解決するのだ。薪なんて、そこらじゅうに生えている木のおかげで無料で手に入る。

 ちなみに、コテージはかなりデカい。
 二階建てで5LDK風呂トイレキッチン暖炉付きの良物件だが、3000万ポイントだ。
 うん、元々買う気はなかったが、無理すぎる。住み心地は良いんだろうけれど、一人暮らしには贅沢すぎた。

「……とりあえずはタイニーハウス購入を目指して、明日から頑張るか」

 日中に採取したり、狩った獲物をポイント化していく。キノコや野草、木の実類は自分で消費するため確保して。
 
「結構倒していたみたいだな。57匹分の素材と魔石はポイント化して、食用の肉はこっちで確保しておこう。あ、それと邪魔だから切り倒した木材もポイント化できるのかな」

 収納内に13本あった大森林産の木々は、1本が5000ポイントに変換された。

「え、嘘だろ? これはかなり美味しいんじゃないか……?」

 そこかしこに生えている木々を、毎日10本ずつ伐採するだけで、5万ポイントになる。
 今日倒した魔獣や採取物は6万ポイント以上あったので、13万ポイントは稼げていた。

「アイツらの買い物分の3万を引いても、10万ポイントは稼げそうだな」

 こつこつ稼げば、コテージハウス召喚購入も夢じゃなさそうだった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~

イノナかノかワズ
ファンタジー
 助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。  *話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。  *他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。  *頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。  *無断転載、無断翻訳を禁止します。   小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。 カクヨムにても公開しています。 更新は不定期です。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

野草から始まる異世界スローライフ

深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。 私ーーエルバはスクスク育ち。 ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。 (このスキル使える)   エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。 エブリスタ様にて掲載中です。 表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。 プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。 物語は変わっておりません。 一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。 よろしくお願いします。

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ 孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。 そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。 これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。 小説家になろう様からの転載です!

処理中です...