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14. 土魔法は便利でした

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 水魔法と火魔法を駆使して魔獣を倒すのは効率が良い。
 保有魔力が多いハイエルフに転生したおかげで、MPが枯渇することなく余裕を持って倒せてはいるが。

「めちゃくちゃ腹が空くな……?」

 魔法使いの唯一の難点なのか、この肉体はとても燃費が悪かった。
 野営場所を発って、まだ二時間と少ししか経っていないのに、もう空腹で胃が哀しげに鳴いているのだ。

「パンとスープじゃ足りなかったか。仕方ない、休憩がてらに何か食べよう」

 体感で8キロほどは進んだので、軽食を摂ることにした。【アイテムボックス】からテントを取り出して設置する。

「休憩程度でテントの結界に頼るのもどうかと思うけど、今朝の巨鳥みたいなのに襲われたくはないしな……」

 創造神の加護のおかげで、怪我をすることはないだろうが、あんなクソでかいモンスターに襲われたくはない。

「今の俺の攻撃力で倒せる自信もないしなー…。強力な攻撃魔法を覚えたら、焼き鳥にしてやろう」

 食用で更に美味い肉なら、少しくらいは味見してみたい。
 火魔法で焼き鳥にしてしまえば、素材が台無しになるので、やはり水魔法か風魔法でどうにか倒せれば良いのだが。
 鳥の魔獣で使える素材と言えば、羽毛とかクチバシだろうか。あとは肉だな。
 あの大きさの魔獣なら、さぞかし食い出があるだろう。

「……肉の話をしていたら、食いたくなったな。たしか、100円ショップには缶詰が売っていたはず」

 ステータスボードを開き、ショップ画面へ。食品、缶詰で検索すると目当ての物はすぐにヒットした。
 迷いなく100Pで召喚購入する。
 魔法陣から現れたのは、焼き鳥の缶詰だ。塩味とタレ味と二種類あったが、今回はタレ味にしてみた。

「これだけだと物足りないな。焼き鳥丼が食いたいから、米も買おう」

 パックご飯とその他も幾つか必要な物を買い足していく。

「さて、いつもならガスコンロでパパッと調理するけど、ここは土魔法の鍛え時」

 テントの結界内であることを確認して、周辺の草を刈り取った。ヒメシバとマナ草か。
 大森林に近付くごとにマナ草を良く見かけるようになったのは、それだけ魔力の源ーー魔素が強いのだろう。

 その場にしゃがみ、両手を地面に押し当てて意識を集中する。周辺の土に魔力が馴染んでいくのが分かった。
 あとは強く詳細にイメージして、を創り上げていく。

「不恰好だけど、一応使えそうかな?」

 コンクリートブロックを脳裏に思い浮かべながら、土を固めて土台を両脇に作った。
 一番シンプルなデザインの即席のかまどだ。バーベキュー用の大きめの網を載せて、薪を並べる。

着火ファイア

 火魔法にもすっかり慣れて、かまどの火加減の調整もお手の物だ。
 小鍋ミルクパンに水を満たし、パックご飯を突っ込んでおく。ついでに持参していた生卵も鍋に転がした。
 空いた場所にシェラカップを置き、コーヒー用の湯を沸かす。

「レンジがなくても湯煎で食えるのは便利だよな、パックご飯」

 一応、米もキャンプ用に持参はしているが、なるべくなら温存しておきたい。
 それにしても検索して驚いたのは白ご飯だけでなく、赤飯や炊き込みご飯などのレトルトパックまで見つけたことか。
 残念ながら、肉の缶詰は焼き鳥しかなかったが、魚の缶詰は種類も多かったので、タンパク質には困らなそうだ。

「っと、焼き鳥缶も温めないとな」

 缶詰の蓋を開けて、そのまま網の上に載せて温める。くつくつと良い匂いが立ち昇り、ぺたんこの腹がきゅうきゅうと訴えてきた。

「よし、パックご飯も温まったな。温泉玉子もいい感じだ」

 愛用の木製の丼にパックご飯をよそい、熱々の焼き鳥缶の中身をタレごとぶっかけた。
 すぐにでも掻き込みたいのを我慢して、温泉玉子を割り入れて、100円ショップで召喚購入した、乾燥ネギを振り掛ける。

「ここに七味唐辛子とマヨネーズをトッピングして、焼き鳥丼の完成!」

 箸で上品に食べる余裕はない。
 大きめのスプーンで適当に混ぜて、がっと口に放り込んだ。
 シンプルだけど、濃い味付けで旨い。
 スプーンで割った玉子と絡めながら掻き込む焼き鳥丼は限界を訴えていた腹を幸せで満たしていく。
 米粒ひとつ残さずに、夢中で平らげた。


「ふー…。美味かった……」

 食後のコーヒーをシェラカップで堪能する。朝と違い、砂糖とコーヒーフレッシュをたっぷり投入している。
 ようやく腹が落ち着いたが、魔法を連発するとすぐに同じ状態になるのだろう。

「たしか、補給食も売っていたよな……? カロリーバーにチョコレートバー、キャラメルあたりを常備しておけば良いか。低血糖になった時用のラムネ、氷砂糖に黒糖まであるな。よし、買おう」

 幸いポイントは昨日と今日で合わせて五万近くある。ここでケチっても仕方ない。
 ペットボトルのスポーツ飲料もとりあえず十本ほど買っておいた。
 すぐに食べられるように、ポケットの中にカロリーバーとラムネだけ入れておき、あとは【アイテムボックス】に収納する。

「これだけ用意しておけば、少しは安心だな。それにしても、土魔法は思ったより便利そうだ。簡易かまどでも野営では充分だけど、拠点ではしっかりした土窯を作りたいかも」

 以前、暇潰しに観ていた動画で、土窯をDIYしていたのを思い出す。
 手作り土窯でピザを焼いて食べていた。
 あれは絶対に挑戦してみたい。
 
腹拵はらごしらえも済んだし、行くか。次は土魔法も鍛えなきゃな。ピザのために!」

 目的が多少ズレたが、気にしない。
 欲望に直結した目標があった方が努力も続くし、やり甲斐があるというもの。

「……それにしても、魔法を使うとこんなに腹が減るとなると、アイツらも大変そうだな……」

 召喚された国ーー神殿だったか? そこがちゃんと補給食を用意してくれていれば良いのだが。

「……夜にまたメールを送っておくか」

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