ギャルゲの主人公と乙女ゲーのヒロインは、幼馴染で両想いですが、攻略キャラ達が全力で邪魔してくる。もう、俺(私)達のことは諦めてください。

涼風悠

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ギャルゲの主人公は、乙女ゲーのヒロインの逆ハーメンバーと仲良くなりたい。

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 食堂についた郁人とゆるふわ宏美は、滅茶苦茶目立っていた。女子生徒達からは、恋い慕われ、男子生徒達からは、不倶戴天の敵と言わんがごとく敵意の視線を向けられる。

 さすがのゆるふわ宏美も、引きつったゆるふわ笑顔になっている。そして、郁人は魔王城に乗り込むがごとく勇者の面持ちである。

「い、郁人様…さすがにまずいですよ~!!」
「大丈夫だ……問題ない」
「それ~……絶対問題ありますよ~!!」

 郁人は、そう言い切り、あたりを見回す。そして、ある一角が目に付くのである。そこには、例の政宗を含めた大勢の男子生徒が占拠している。

「どうやら、あそこのようだな」
「ほ、本気ですか~!? や、やめましょうよ~!!」
「嫌なら、帰っていいんだぞ……俺は……行ってくる」
「ちょ……い、行きますよ~!! 行けばいいんですよね~!!」

 郁人一行は、男子生徒が占拠している一角に進軍する。男子生徒達は、嫌悪感を露にしている。郁人とゆるふわ宏美にとっては、完全にアウェー感が半端なかった。

 ゆるふわ宏美はキョロキョロしながら、ゆるふわ苦笑いを浮かべている。

「おい……あれが例の、細田宏美ちゃんじゃね?」
「マジで!? ちっこくて可愛いな……でも……あの子朝宮の女だぜ」
「朝宮!! 自慢しにきたのか!?」
「死ね……朝宮!!」

 ゆるふわ宏美が、ゆるふわ苦笑いを浮かべるだけで、男子生徒たちの郁人への憎悪が倍増していくのである。郁人がゆるふわ宏美を睨むと、ゆるふわ宏美は疑問のゆるふわ笑顔である。

「おい……ゆるふわ……お前のせいで、俺恨まれてるんだか?」
「し、知りませんよ~!? だいたい、わたしぃも郁人様の女になった覚えはないんですからね~」
「当たり前だ……何で俺が、こんなゆるふわを自慢しないといけないんだ」
「ああ~、何でそんなこと言うんですか~!? 郁人様のファンクラブ会長で~、マネージャーもやってあげてるんですからね~……郁人様は~、わたしぃをもっと大切にするべきですよ~」
「おい、ゆるふわ、俺は頼んだ覚えはないんだが? だいたい、ゆるふわを大切にする理由がない」

 こそこそ、言い合いをする郁人とゆるふわ宏美に、さらに男子生徒の殺気は高まる。そして、男子生徒達が集まっている食堂の一角に近づくと、男子生徒達に包囲される郁人とゆるふわ宏美である。さすがに、二人とも冷や汗ものである。

(く……さすがに、これは……きびしいが……美月のためなら……俺は恐怖に打ち勝って見せる!!)

 郁人と男子生徒達との睨み合いがしばらく続くと、男子生徒集団の中から、政宗が出てくる。郁人の前に立って睨みつける。あからさまに苛立っている政宗である。

「……朝宮……貴様ここに何しに来た?」
「……俺は、ここに昼飯を食べに来ただけだ」

 ドヤ顔でそう言い放つ郁人である。そんな郁人に男子生徒達の殺意の波動が放たれる。郁人と巻き添えを食らったゆるふわ宏美は、あからさまにたじろいでしまい降参のポーズをとってぎこちないゆるふわ笑顔を浮かべている。

「い、郁人様……まずいですよ~……わたしぃ……死にたくはないですよ~」
「だ、大丈夫だ……ゆるふわ……もしもの時は、お前を見捨てて俺は逃げるからな」
「な、なんてこと考えてるんですか~!! わたしぃの扱い酷くないですか~!?」

 もはや、ゆるふわ宏美の扱いに遠慮がない郁人に、さすがのゆるふわ宏美も、怒りを示して、ぷんすかと怒るのである。

 そんな二人のやり取りにあからさまに嫌悪感を示して、顔をしかめる政宗がいるのである。

「……美月はいないのか?」

 郁人は辺りを見回して、美月を探すが、見つからなかったため、政宗にそう尋ねる。すると、あからさまに周囲の男子生徒達の雰囲気が変わる。憤怒に狂気めいた殺気を放っている。

 あまりの殺気の強さに、さすがのゆるふわ宏美も、すくみ上って恐怖の表情を浮かべている。

「い、郁人様……自殺行為ですよ~!?」
「お、おい、あんまり引っ付くな……ゆるふわ」

 あまりの恐怖に、ゆるふわ宏美は郁人の背中に隠れて、郁人の服を両手で力いっぱい握り締める。そんなゆるふわ宏美を引っぺがしにかかる郁人である。

「おい、シワになるからやめろ!」
「放したら、見捨てるじゃないですか~!! 絶対放さないですからね~!!」

 郁人とゆるふわ宏美のやり取りを見させられる男子生徒達は、今にも郁人に襲い掛かる勢いで怒り狂っている。

「貴様……ふざけるのも大概にしろ……あと、美月のことを気安く名前で呼ぶな」
「……なんでだ? いや……わかった……美月がダメなら……美月ちゃんか……さすがに今は……そう呼ぶのは恥ずかしいが……わかった……美月ちゃんはどこにいるんだ?」
「い、郁人様は人を苛立たせる達人ですか~!?」
「な、なんの話だ? 美月の名前を気安く呼ぶなというから、昔みたいに、美月ちゃん呼びしてみただけだが……何か問題があるのか?」

 政宗の瞳から、ハイライトが消えて、完全に今にも人を殺しそうな鋭い眼光で、郁人を睨みつけている。

「と、とりあえず、俺は弁当を一緒に食べに来たんだ……なぁ、ゆるふわ」
「こ、ここで~、わたしぃにふるんですか~!?」

 郁人は、懐から弁当を取り出し、弁当をひらひらさせて、ゆるふわ宏美に同意を求める。完全に虚を衝かれたゆるふわ宏美は、動揺して郁人に非難の声をあげる。

「そ、そうですよ~……な、仲良しさんですよ~……みんな仲良しさんが一番ですよ~」

 郁人に、押し出されたゆるふわ宏美は、お得意のゆるふわスマイルを浮かべて、男子生徒達を説得しにかかる。

「貴様達が先に、喧嘩を吹っかけてきただろうがッ!!!」
「おい、待て、俺は、喧嘩を吹っかけたつもりはない……悪いのは、このゆるふわだ」
「待ってください~! わたしぃは悪くありませんよ~! 悪いのは郁人様です~!!」

 政宗の怒りボイスでそう言われて、罪の擦り付け合いを始める郁人とゆるふわ宏美である。もはや、この二人は、このやり取りが原因で怒らせていることに全く気がついてなかった。

「……まぁ、どっちが悪いかは置いといて、時間がないから、弁当を食べよう……な」

 郁人は、今にも殺しにかかってきそうな政宗と男子生徒達に、そう言い放って、席につく郁人である。それを見て、周りをキョロキョロ見回し、恐る恐る郁人の隣に座るゆるふわ宏美である。

「い、郁人様……し、死ぬ気ですか~!?」
「お、俺だって、こんな中で弁当食いたくはないが……美月のためだ……仕方ないことなんだ」
「何が仕方ないことなんですか~……理解できませんよ~!? もう~、帰りましょうよ~」
「ダメだ……美月のためなら、たとえ、この完全アウェーな中でも、俺はやる遂げて見せる」

 そして、二人でヒソヒソ話をするのである。そんな二人を、政宗と男子生徒達は鬼の形相で睨んでいる。

「……ふむ……我ながら、今日の弁当は上手くいったぞ……これなら、美月も喜んでくれるだろう」
「い、郁人様……本当にお弁当を食べださないでくださいよ~!!」

 もはや、開き直った郁人に恐怖心はなかった。一人お弁当を食べ始める郁人に、ひたすら困惑するゆるふわ宏美と、そんな郁人達を囲んで、激昂の眼差しで睨んでいる政宗と男子生徒達の図が出来上がっていた。

(美月が、来るまでに……なんとか、美月の逆ハーメンバーと仲良くなっておきたいが……これはでは、厳しそうだな)

 さすがに、この嫌われっぷりでは、仲良くできないと思う郁人は、黙々と弁当を食べ続けるのであった。
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