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ギャルゲの主人公は、幼馴染の変な噂を聞いてしまう。
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結局、美月と昼を一緒にいられなかった郁人は、意気消沈のまま、午後の授業を受ける。そして、美月と会うことができないまま、放課後を迎えてしまう。郁人は帰り支度を済ませると、美月を迎えに行こうと思った。
「郁人様、これから、皆さんと交流会ですよ~」
「郁人君……ねぇ、一緒に行こうねぇ」
やはり、ヤンデレ梨緒とゆるふわ宏美のコンビが、郁人の邪魔をしにやって来る。郁人はため息をつきながら、スマホをポケットにしまう。
「あのな……俺は放課後予定があるんだが」
「ほむ~、では~、その予定はキャンセルでお願いしますね~」
ニコニコと満面な笑顔でそう言い放つゆるふわ宏美の発言に、郁人は怒りを覚えるが、必死に我慢する。そう、相手は女子である。こんな男子生徒が複数いるなかで、女子生徒を怒鳴ろうものなら、郁人の高校生活は終わってしまうのである。
「ダメだよ…宏美ちゃん……郁人君も大事な用事かもしれないし、ちゃんと話を聞いてあげよう…ね」
「ほむ~、わかりました~。では、郁人様の予定とはなんでしょか~?」
「……人と一緒に帰る約束をしてるんだ」
郁人は、美月の名前は伏せて、二人に正直に話す。郁人は、そろそろこの状況を本格的にどうにかしないといけないと思っていた。
(美月と、付き合いだしたんだ。やはり、他の女子生徒と仲良くするわけにはいかない)
郁人の中では、完全に美月と付き合っていることが、事実のようになっている。もはや、ドヤ顔で、完全に美月の彼氏面をしている。
「なるほどですね~。では、その人も誘って、交流会にいきませんか~?」
「うん。それがいいと思うな。人数多いほうが、楽しいと思うし」
郁人は、少し悩むが、美月に女子生徒に揶揄われているみともない姿を見せたくなかった。そして、梨緒との関係も、たぶん不仲だろうと思った郁人は、その提案を拒否することにした。
「すまない。あまり、大人数で騒ぐのが嫌いな子なんだ」
ちなみに、美月が、大人数で騒ぐのが、あまり得意ではないのは事実である。もちろん、郁人も同じである。
「そうですか~。ちなみにその人ってどなたですか~?」
宏美が、疑問顔で郁人に訊ねる。郁人は、少し考える。ここで、美月の名前を出すべきかどうかということを、考えていると、梨緒から不穏な空気が漂ってくる。あからさまに、瞳から光が消え失せている。
「……郁人君、私の勘違いかもしれないけどね……もしかして、夜桜さんとか言わないよね?」
郁人の体がビクッっとなる。梨緒から、確信をつかれて、あからさまに動揺してしまう郁人である。そんな郁人を見て、どんどん、ヤンデレパワーが上昇していく梨緒である。
「郁人様……それは本当ですか~?」
ゆるふわ宏美が、珍しく呆れた顔で郁人に訊ねてくる。あからさまに、やれやれと言う感じが、ゆるふわ宏美からにじみ出ている。
二人の、態度にたじろぐ郁人だが、ここで、否定するわけにはいかないと、心の中で決意する。俺は美月の彼氏何だからな、と勇気を奮い立たせる。
「ああ、本当だ……だから、今日は一緒に交流会にはいけないんだ。すまないな」
そう、二人に頭を下げる郁人だが、ゆるふわ宏美はため息をつく。梨緒に至っては、もはや、ヤンデレモードがスーパーヤンデレモードになっている。誰がどう見ても、やばいオーラを放っている。
「郁人様……その、言いにくいのですが~、夜桜 美月さんは~、その~、女子の間であまり、評判がよろしくないですよ~」
宏美が、郁人に小声で話しかける。郁人はゆるふわ宏美のその話に耳を傾ける。
「……なんでだ?」
郁人急に真顔になって、低い声でゆるふわ宏美に尋ねる。
「それはですね~。彼女が逆ハーレムを狙っているからですかね~」
「は?」
郁人は、ゆるふわ宏美の意味不明な発言に疑問を浮かべる。あの美月が、そんなことをするとは到底思えないのであった。
「何かの間違いだろ? 美月はそんなことする子じゃないぞ」
「それがですね~。新入生のイケメン男子生徒を二人を取り巻きにしてるらしくてですね~」
「はぁ? なんだそれ?」
「あと、上級生のクラスがある廊下を全力で走ったりして~、上級生にも、自分をアピールしてるらしくてですね~」
「美月が? そんなことするわけないだろ? あいつ、結構おとなしい奴だぞ」
「さらにはですね~。食堂の一角を男子生徒達と一緒に不法占拠したりしたそうですよ~」
「いやいや、絶対美月はそんなことしないぞ……あいつ人見知りだしな」
宏美の数々の証言を郁人は全く信じなかった。そもそも、美月は、大人数でいることが、あまり好きな子じゃないことを郁人は知っている。
「郁人君は、夜桜さんのこと……信じてるんだ……でもね。事実だよ」
完全にスーパーヤンデレモードになっている梨緒は、ヤンデレボイスでそう言い放つ。郁人は唾をのみ込む。
「証拠もありますよ~。郁人様、お時間いただければ、ご用意しますよ~」
郁人は、少し悩んだが、美月がそんなことをするとは思えなかった。そのため、どうせ二人の勘違いだろうと思った。早めに誤解をとくために、二人と話し合う必要があると判断して、美月には、申し訳ないが一緒に帰れなくなったから、先に帰ってくれと連絡を入れるのであった。
そして、その後、ゆるふわ宏美から、証拠の写真をいくつか見せられて、衝撃を受ける郁人であった。確かに、イケメン二人や、男子生徒に囲まれている美月や、食堂でお弁当を、男子生徒達と食べている美月が写っていた。それでも、郁人は納得がいかなかった。
思い出すと、昨日と今日、美月は確かに挙動不審だったことを思い出す。
それと、二人のイケメンの一人が朝に美月に声をかけてきた生徒だということを思い出したからだ。確かに、あの時に、美月は迷惑と言っていたことを思い出したからである。
それに郁人は、美月が、逆ハーレムなど考えない絶対的な理由を知っていた。それは、郁人が、美月の彼氏であるという事実(郁人の中だけ)である。美月は、決して不誠実なことをする子ではないと郁人は信じているからである。
「いや、やっぱり、ありえないだろ……たぶん、何か理由があるはずだ」
「ほむ~、イケメン二人や男子生徒達に囲まれて~、楽しそうにしてる理由ですか~?」
「フフフフフ、郁人君……なんだろうね……理由って……こんなに、郁人君に好かれてるのに…許せない。許せない」
梨緒がヤンデレボイスで何かを言っている。小声で、後半部分は聞き取れなかった郁人だが、やばい発言ということだけは察していた。さすがのゆるふわ宏美も、顔を引きつらせても、ニコニコゆるふわ笑顔を維持しようとしている。
「まあ、梨緒さん……落ち着いて下さね~」
「大丈夫だよぉ……私は冷静だからぁ…」
(冷静な人は、そんなこと言わないと思う)(思いますよ~)
郁人と宏美の心のツッコミがリンクした瞬間だった。まさにソウルリンクしたのだ。
「郁人君……私……絶対に…負けないからぁ……あの子だけには……負けたくないんだよねぇ」
郁人は、そう梨緒に宣言される。彼女からは、確かな決意が感じられる。郁人は、顔を伏せる。さすがの郁人でも理解しているからである。梨緒が郁人をどう思っているかということを、さすがの郁人でも察していた。
「あれですね~。そうですよ~。交流会ですよ~」
ゆるふわ宏美が、必死に誤魔化しにかかっている。どこか、ぎこちないゆるふわ笑顔で、郁人と梨緒の間に割って入ってそう発言する。その発言で、梨緒はとりあえず、いつもの清楚モードに戻る。そして、静かに清楚スマイルを浮かべる。
「……そうだね。交流会のこと、すっかり忘れていたね」
「そうですよ~、では、交流会に行きましょう~。そうしましょ~」
「すまないが……すぐに帰って美月と話がしたいんだ……だから、今日はすまないが」
郁人は、早く帰って、美月に事の真相を早く訊ねたかった。そのため、空気を読まずに断るのだった。案の定、一度は元に戻った梨緒の病気が再発してる。完全に目が死んでいる。
「……郁人君は、夜桜さんのことばっかだねぇ……ほんと……昔からそうだったよねぇ」
梨緒のハイライトの消えた瞳は、郁人をまっすぐ捉える。郁人は、どこか居心地が悪く、梨緒から視線を逸らす。その行動に梨緒はショックを受け、顔を伏せる。ゆるふわ宏美は、郁人にゆるふわな目線で空気読んでくださいよ~と訴えている。
「……すまない」
郁人が、頭を下げる。ゆるふわ宏美はやれやれと呆れている。梨緒もため息をついてヤンデレモードから、通常の清楚モードに戻り、悲しいそうな表情を浮かべる。
「郁人君……夜桜さんだけは、夜桜さんだけは…私は…」
梨緒は、消えいる声でそう郁人に何かを伝えようとする。しかし、すぐに、清楚笑顔浮かべる。梨緒の笑顔は普段と違って、とてもつらそうな笑顔だ。
「ところで、郁人様…夜桜さんとはどういう関係なんですか~?」
宏美が、郁人に小声で訊ねてくる。ひそひそ話である。
「美月とは、幼馴染なんだ」
「なるほどですね~。だから、梨緒さんが、ヤンデレさんになっちゃったんですね~」
(このゆるふわ、はっきり、ヤンデレって言ったよ)
「では~、後日交流会に参加してくださるなら~、今日は解散でもいいですよ~」
「……本当か?」
「もちろんですよ~…郁人様も幼馴染のことが心配でしょうからね~」
郁人とゆるふわ宏美がひそひそ話している様子をヤンデレ笑顔で見ている梨緒から、あからさまに圧を感じる。ゆるふわ宏美は、サッと郁人から離れて、ニコニコなゆるふわ笑顔を浮かべている。
「郁人君……交流会行くよねぇ?」
ヤンデレボイスでそう言い放つ梨緒は、有無を許さな気迫がある。その気迫に、郁人とゆるふわ宏美は、プレッシャーを感じている。
「えっとですね~。今日は予定が合わなさそうな子も居ますし~、後日開催にしようと思いまして~」
「宏美ちゃん……交流会……やるよねぇ?」
「……そうですね~、郁人様は、交流会に行くべきですね~!!」
「お前、俺を裏切ったな!!」
ゆるふわ宏美は、ヤンデレ梨緒に秒で屈して彼女の味方についた。完全に郁人を裏切るゆるふわ宏美に、ツッコミをいれる。ゆるふわ宏美は、口笛を吹くふりをして誤魔化している。このゆるふわは全く口笛が吹けていない。
「……そうか、そうくるなら、俺にも考えがある」
「何かな? 郁人君……逃がさないよぉ」
考えが完璧に読まれる郁人だが、逃げ切れる自信があった。郁人は、全力ダッシュで、逃げることにした。走って逃げていく郁人の後姿を、見送る梨緒は、肩を落とす。
「……よ、よかったんですか~?」
「……仕方ないよ…郁人君は……夜桜さんしか見てないもの……でも、絶対に最後には私の方を見てもらうからねぇ」
そう強い眼差しで宣言する梨緒を、どこか悲しそうな表情で見つめるゆるふわ宏美は、ため息をついて、天井を見上げる。
「郁人様は~、ほんとに~、人気者ですね~…残酷なほどに…」
そう一人ぼそっと天に独り言をこぼすゆるふわ宏美だった。
「郁人様、これから、皆さんと交流会ですよ~」
「郁人君……ねぇ、一緒に行こうねぇ」
やはり、ヤンデレ梨緒とゆるふわ宏美のコンビが、郁人の邪魔をしにやって来る。郁人はため息をつきながら、スマホをポケットにしまう。
「あのな……俺は放課後予定があるんだが」
「ほむ~、では~、その予定はキャンセルでお願いしますね~」
ニコニコと満面な笑顔でそう言い放つゆるふわ宏美の発言に、郁人は怒りを覚えるが、必死に我慢する。そう、相手は女子である。こんな男子生徒が複数いるなかで、女子生徒を怒鳴ろうものなら、郁人の高校生活は終わってしまうのである。
「ダメだよ…宏美ちゃん……郁人君も大事な用事かもしれないし、ちゃんと話を聞いてあげよう…ね」
「ほむ~、わかりました~。では、郁人様の予定とはなんでしょか~?」
「……人と一緒に帰る約束をしてるんだ」
郁人は、美月の名前は伏せて、二人に正直に話す。郁人は、そろそろこの状況を本格的にどうにかしないといけないと思っていた。
(美月と、付き合いだしたんだ。やはり、他の女子生徒と仲良くするわけにはいかない)
郁人の中では、完全に美月と付き合っていることが、事実のようになっている。もはや、ドヤ顔で、完全に美月の彼氏面をしている。
「なるほどですね~。では、その人も誘って、交流会にいきませんか~?」
「うん。それがいいと思うな。人数多いほうが、楽しいと思うし」
郁人は、少し悩むが、美月に女子生徒に揶揄われているみともない姿を見せたくなかった。そして、梨緒との関係も、たぶん不仲だろうと思った郁人は、その提案を拒否することにした。
「すまない。あまり、大人数で騒ぐのが嫌いな子なんだ」
ちなみに、美月が、大人数で騒ぐのが、あまり得意ではないのは事実である。もちろん、郁人も同じである。
「そうですか~。ちなみにその人ってどなたですか~?」
宏美が、疑問顔で郁人に訊ねる。郁人は、少し考える。ここで、美月の名前を出すべきかどうかということを、考えていると、梨緒から不穏な空気が漂ってくる。あからさまに、瞳から光が消え失せている。
「……郁人君、私の勘違いかもしれないけどね……もしかして、夜桜さんとか言わないよね?」
郁人の体がビクッっとなる。梨緒から、確信をつかれて、あからさまに動揺してしまう郁人である。そんな郁人を見て、どんどん、ヤンデレパワーが上昇していく梨緒である。
「郁人様……それは本当ですか~?」
ゆるふわ宏美が、珍しく呆れた顔で郁人に訊ねてくる。あからさまに、やれやれと言う感じが、ゆるふわ宏美からにじみ出ている。
二人の、態度にたじろぐ郁人だが、ここで、否定するわけにはいかないと、心の中で決意する。俺は美月の彼氏何だからな、と勇気を奮い立たせる。
「ああ、本当だ……だから、今日は一緒に交流会にはいけないんだ。すまないな」
そう、二人に頭を下げる郁人だが、ゆるふわ宏美はため息をつく。梨緒に至っては、もはや、ヤンデレモードがスーパーヤンデレモードになっている。誰がどう見ても、やばいオーラを放っている。
「郁人様……その、言いにくいのですが~、夜桜 美月さんは~、その~、女子の間であまり、評判がよろしくないですよ~」
宏美が、郁人に小声で話しかける。郁人はゆるふわ宏美のその話に耳を傾ける。
「……なんでだ?」
郁人急に真顔になって、低い声でゆるふわ宏美に尋ねる。
「それはですね~。彼女が逆ハーレムを狙っているからですかね~」
「は?」
郁人は、ゆるふわ宏美の意味不明な発言に疑問を浮かべる。あの美月が、そんなことをするとは到底思えないのであった。
「何かの間違いだろ? 美月はそんなことする子じゃないぞ」
「それがですね~。新入生のイケメン男子生徒を二人を取り巻きにしてるらしくてですね~」
「はぁ? なんだそれ?」
「あと、上級生のクラスがある廊下を全力で走ったりして~、上級生にも、自分をアピールしてるらしくてですね~」
「美月が? そんなことするわけないだろ? あいつ、結構おとなしい奴だぞ」
「さらにはですね~。食堂の一角を男子生徒達と一緒に不法占拠したりしたそうですよ~」
「いやいや、絶対美月はそんなことしないぞ……あいつ人見知りだしな」
宏美の数々の証言を郁人は全く信じなかった。そもそも、美月は、大人数でいることが、あまり好きな子じゃないことを郁人は知っている。
「郁人君は、夜桜さんのこと……信じてるんだ……でもね。事実だよ」
完全にスーパーヤンデレモードになっている梨緒は、ヤンデレボイスでそう言い放つ。郁人は唾をのみ込む。
「証拠もありますよ~。郁人様、お時間いただければ、ご用意しますよ~」
郁人は、少し悩んだが、美月がそんなことをするとは思えなかった。そのため、どうせ二人の勘違いだろうと思った。早めに誤解をとくために、二人と話し合う必要があると判断して、美月には、申し訳ないが一緒に帰れなくなったから、先に帰ってくれと連絡を入れるのであった。
そして、その後、ゆるふわ宏美から、証拠の写真をいくつか見せられて、衝撃を受ける郁人であった。確かに、イケメン二人や、男子生徒に囲まれている美月や、食堂でお弁当を、男子生徒達と食べている美月が写っていた。それでも、郁人は納得がいかなかった。
思い出すと、昨日と今日、美月は確かに挙動不審だったことを思い出す。
それと、二人のイケメンの一人が朝に美月に声をかけてきた生徒だということを思い出したからだ。確かに、あの時に、美月は迷惑と言っていたことを思い出したからである。
それに郁人は、美月が、逆ハーレムなど考えない絶対的な理由を知っていた。それは、郁人が、美月の彼氏であるという事実(郁人の中だけ)である。美月は、決して不誠実なことをする子ではないと郁人は信じているからである。
「いや、やっぱり、ありえないだろ……たぶん、何か理由があるはずだ」
「ほむ~、イケメン二人や男子生徒達に囲まれて~、楽しそうにしてる理由ですか~?」
「フフフフフ、郁人君……なんだろうね……理由って……こんなに、郁人君に好かれてるのに…許せない。許せない」
梨緒がヤンデレボイスで何かを言っている。小声で、後半部分は聞き取れなかった郁人だが、やばい発言ということだけは察していた。さすがのゆるふわ宏美も、顔を引きつらせても、ニコニコゆるふわ笑顔を維持しようとしている。
「まあ、梨緒さん……落ち着いて下さね~」
「大丈夫だよぉ……私は冷静だからぁ…」
(冷静な人は、そんなこと言わないと思う)(思いますよ~)
郁人と宏美の心のツッコミがリンクした瞬間だった。まさにソウルリンクしたのだ。
「郁人君……私……絶対に…負けないからぁ……あの子だけには……負けたくないんだよねぇ」
郁人は、そう梨緒に宣言される。彼女からは、確かな決意が感じられる。郁人は、顔を伏せる。さすがの郁人でも理解しているからである。梨緒が郁人をどう思っているかということを、さすがの郁人でも察していた。
「あれですね~。そうですよ~。交流会ですよ~」
ゆるふわ宏美が、必死に誤魔化しにかかっている。どこか、ぎこちないゆるふわ笑顔で、郁人と梨緒の間に割って入ってそう発言する。その発言で、梨緒はとりあえず、いつもの清楚モードに戻る。そして、静かに清楚スマイルを浮かべる。
「……そうだね。交流会のこと、すっかり忘れていたね」
「そうですよ~、では、交流会に行きましょう~。そうしましょ~」
「すまないが……すぐに帰って美月と話がしたいんだ……だから、今日はすまないが」
郁人は、早く帰って、美月に事の真相を早く訊ねたかった。そのため、空気を読まずに断るのだった。案の定、一度は元に戻った梨緒の病気が再発してる。完全に目が死んでいる。
「……郁人君は、夜桜さんのことばっかだねぇ……ほんと……昔からそうだったよねぇ」
梨緒のハイライトの消えた瞳は、郁人をまっすぐ捉える。郁人は、どこか居心地が悪く、梨緒から視線を逸らす。その行動に梨緒はショックを受け、顔を伏せる。ゆるふわ宏美は、郁人にゆるふわな目線で空気読んでくださいよ~と訴えている。
「……すまない」
郁人が、頭を下げる。ゆるふわ宏美はやれやれと呆れている。梨緒もため息をついてヤンデレモードから、通常の清楚モードに戻り、悲しいそうな表情を浮かべる。
「郁人君……夜桜さんだけは、夜桜さんだけは…私は…」
梨緒は、消えいる声でそう郁人に何かを伝えようとする。しかし、すぐに、清楚笑顔浮かべる。梨緒の笑顔は普段と違って、とてもつらそうな笑顔だ。
「ところで、郁人様…夜桜さんとはどういう関係なんですか~?」
宏美が、郁人に小声で訊ねてくる。ひそひそ話である。
「美月とは、幼馴染なんだ」
「なるほどですね~。だから、梨緒さんが、ヤンデレさんになっちゃったんですね~」
(このゆるふわ、はっきり、ヤンデレって言ったよ)
「では~、後日交流会に参加してくださるなら~、今日は解散でもいいですよ~」
「……本当か?」
「もちろんですよ~…郁人様も幼馴染のことが心配でしょうからね~」
郁人とゆるふわ宏美がひそひそ話している様子をヤンデレ笑顔で見ている梨緒から、あからさまに圧を感じる。ゆるふわ宏美は、サッと郁人から離れて、ニコニコなゆるふわ笑顔を浮かべている。
「郁人君……交流会行くよねぇ?」
ヤンデレボイスでそう言い放つ梨緒は、有無を許さな気迫がある。その気迫に、郁人とゆるふわ宏美は、プレッシャーを感じている。
「えっとですね~。今日は予定が合わなさそうな子も居ますし~、後日開催にしようと思いまして~」
「宏美ちゃん……交流会……やるよねぇ?」
「……そうですね~、郁人様は、交流会に行くべきですね~!!」
「お前、俺を裏切ったな!!」
ゆるふわ宏美は、ヤンデレ梨緒に秒で屈して彼女の味方についた。完全に郁人を裏切るゆるふわ宏美に、ツッコミをいれる。ゆるふわ宏美は、口笛を吹くふりをして誤魔化している。このゆるふわは全く口笛が吹けていない。
「……そうか、そうくるなら、俺にも考えがある」
「何かな? 郁人君……逃がさないよぉ」
考えが完璧に読まれる郁人だが、逃げ切れる自信があった。郁人は、全力ダッシュで、逃げることにした。走って逃げていく郁人の後姿を、見送る梨緒は、肩を落とす。
「……よ、よかったんですか~?」
「……仕方ないよ…郁人君は……夜桜さんしか見てないもの……でも、絶対に最後には私の方を見てもらうからねぇ」
そう強い眼差しで宣言する梨緒を、どこか悲しそうな表情で見つめるゆるふわ宏美は、ため息をついて、天井を見上げる。
「郁人様は~、ほんとに~、人気者ですね~…残酷なほどに…」
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