ギャルゲの主人公と乙女ゲーのヒロインは、幼馴染で両想いですが、攻略キャラ達が全力で邪魔してくる。もう、俺(私)達のことは諦めてください。

涼風悠

文字の大きさ
上 下
9 / 34

ギャルゲの主人公は、ヤンデレヒロインに好かれるのである。

しおりを挟む
 気まずい空気のまま、美月と別れた郁人は、自分の教室に入り自分の席に座る。すでに登校していた男子生徒と女子生徒から、一斉に視線を向けられ、居心地が悪い郁人は、視線をそらし時計を見ると、まだ、ホームルームまでには、少し時間があることに気がついた。

(さっき、美月とは少し、気まずくなったけど、俺の気持ちは伝わったはずだ。少し時間あるし、美月に会いにいくか)

 先ほど別れたばかりなのに、美月に会いたくなった郁人は、そう考えて、席を立とうとしたところに、ゆるふわニコニコ笑顔の美少女が、郁人の目の前に現れる。

「フフ、郁人様、どうして逃げたんですか~?」

 ゆるふわ宏美が笑顔のままに、怒気を放っている。かなり、お怒りのようである。しかし、郁人もたじろいではいられない。例のイタズララブレターの事を、追求しなければならないからである。

「……あの、細田さん……とりあえず、イタズラはやめてくれ……さすがに、困るんだが」
「ほむ~、なんのことです~?」

 右手の人差し指を頬にあて、ゆるぶわな疑問顔を浮かべてるゆるふわ宏美に、郁人はため息をつきながら、スクールバックに無理やり詰め込んだラブレターを机の上にドサッと披露すると、それをあざとくのぞき込むゆるふわ宏美は、満面なゆるふわ笑顔を浮かべるのである。

「さすが~、郁人様ですよ~、超人気者ですね~。わかりました~。次回以降はプレゼントボックスを設置しますね~、そこに入れてもらうようにしますね~」
「いや、このイタズラをやめてくれないか?」
「イタズラって、なんのことですか~? よくわからないのですが~」
(ダメだ……このゆるふわ、完全にしらを切ってやがる)

 郁人は、ため息をつく、そこに、自称幼馴染美少女の、三橋 梨緒が登校してくる。そして、真っ先に、清楚よろしくと郁人のところに来る。男子生徒からの、殺気が郁人に向けて放たれる。

「郁人君、宏美ちゃん、おはよう」
「あ……ああ、おはよう」
「おはようですよ~、梨緒さんは~、郁人様の幼馴染ですからね~。特別にですね~、郁人様に近づいてもいい許可を出しておきましたよ~」

 そう郁人に向けて、ゆるふわ宏美は、ドヤ顔をしながら、ぺったんな胸を張っている。対する郁人は、コイツ何言ってやがる状態である。そして、郁人は自称幼馴染の梨緒のほうを向くと、昔のことを聞いてみようと決意したのである。

「……あの……そういえば、三橋さんは……」
「……梨緒」
「……は?」
「昔みたいに、梨緒って呼んでほしいなぁ」

 郁人の全身に寒気が走る。梨緒は笑顔で清楚佇まいだが、彼女から放たれるオーラは、ドス黒いものを感じる。

「あの……みつは……」
「……」
「……みつ……」
「…………」
「……り、梨緒さん……」
「………………」
「……………………り、梨緒」

 梨緒の圧倒的な、ヤンデレオーラに屈して郁人は仕方なく名前で呼ぶ。梨緒は満面な笑みを浮かべる。ちなみに、ゆるふわ宏美はゆるふわ笑顔で黙って立っている。郁人は内心で、このゆるふわ、面白がってやがるなっと怒っていた。

「うん。ふふ、懐かしいなぁ、郁人君は、私のことを、そう呼んでくれてたよねぇ」
「あ……えっと……」
「……あれぇ、郁人君……まさかと思うけど、私のこと覚えてないとかぁ?」

 梨緒から、笑顔が消え、瞳から光が消える。そして、ジッと郁人の方を見ている。その姿に郁人は恐怖を感じた。

(やばい……これは、覚えてないって、言える感じではないな。あれか、ヤンデレってやつか? 俺は、知っている。なんか、ギャルゲーで見たことあるやつだ。まさか、俺刺されるのか? ご……誤魔化すしかないな……生きるために、美月、俺は生きて帰るからな)

「そ、そんなことないぞ……うん、ちゃんと覚えてる……気がするからな」
「本当にぃ? そんなこと言って、実は忘れてるとかぁ?」
「そ……そんなことはないぞ、梨緒」

 郁人は冷や汗が全身から噴き出てくる、必死に誤魔化しにかかる。対する梨緒は名前を呼ばれたことで、上機嫌になったのか、ヤンデレモードから、清楚モードに戻っている。清楚スマイルを浮かべている。

 郁人は思ったのである。こいつマジでやばい奴だと、とりあえず、今後あまり関わりたくはないと心底思ったのである。

「そうだぁ、郁人君……連絡先交換しない? あと、宏美ちゃんも交換しないかなぁ?」

 郁人にとって、その一言は地獄に落とすための言葉に聞こえた。

(絶対に、教えたくないんだが、というか、もし、美月に、女子のアドレス登録してることを知られたら……浮気を疑われ、振られるに違いない。やばい、絶対阻止しなければ……)

 完全に朝の件で、美月の彼氏面な郁人は、完全に考えが飛躍してしまっている。ダラダラと、さらに冷や汗を掻き、表情に動揺が浮かぶ。

「そうですね~、郁人様、連絡先交換しましょう~」
「郁人君、交換しようよぉ」
「あ……スマホもってな……」
「嘘だよねぇ? それ……私……知ってるんだよぉ」

 笑顔で、そう言い放つ梨緒は、ヤンデレモードに入っていた。ゆるふわ宏美もニコニコしながら、スマホを押し付けてくる。

「いや、ほら、あれだ……今日はもってきて……」
「ズボンの右ポケットに、入ってるよねぇ? どうして嘘つくのかなぁ? まさかぁ、私たちと連絡先交換したくないとかぁ? フフ、そんなことないよねぇ?」

 郁人は、梨緒のヤンデレ笑みに恐怖する。なぜそんなことがわかるのかと、実際に、郁人はズボンの右ポケットに、スマホを入れているのである。

「郁人様、幼馴染がここまで、お願いしてるんですからね~、連絡先交換しましょうね~」
(お願いじゃなくて、脅迫だろ!?)

 心の中で、ゆるふわ宏美に、郁人はツッコミをいれる。二人は、ニコニコと郁人にスマホを押し付けてくる。郁人は観念して、スマホを差し出すのであった。

「ありがとう。郁人君」
「郁人様、これからのスケジュールなどは~、メッセージアプリでお送りしますね~」

 素早く、郁人からスマホを奪い取り、二人は、素早く連絡先を交換する。そして、郁人のもとに返ってきたスマホには、ちゃんと二人の連絡先が登録されていたのであった。

(はぁ~……最悪だ……美月にも会いに行けなかったし)

 郁人は、上機嫌の梨緒と宏美を、恨みの視線で一瞥すると、頬杖をつき、窓の外を眺めながら、ため息をこぼすのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

覚えたての催眠術で幼馴染(悔しいが美少女)の弱味を握ろうとしたら俺のことを好きだとカミングアウトされたのだが、この後どうしたらいい?

みずがめ
恋愛
覚えたての催眠術を幼馴染で試してみた。結果は大成功。催眠術にかかった幼馴染は俺の言うことをなんでも聞くようになった。 普段からわがままな幼馴染の従順な姿に、ある考えが思いつく。 「そうだ、弱味を聞き出そう」 弱点を知れば俺の前で好き勝手なことをされずに済む。催眠術の力で口を割らせようとしたのだが。 「あたしの好きな人は、マーくん……」 幼馴染がカミングアウトしたのは俺の名前だった。 よく見れば美少女となっていた幼馴染からの告白。俺は一体どうすればいいんだ?

教え子に手を出した塾講師の話

神谷 愛
恋愛
バイトしている塾に通い始めた女生徒の担任になった私は授業をし、その中で一線を越えてしまう話

僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた

楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。 この作品はハーメルン様でも掲載しています。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

一夜の男

詩織
恋愛
ドラマとかの出来事かと思ってた。 まさか自分にもこんなことが起きるとは... そして相手の顔を見ることなく逃げたので、知ってる人かも全く知らない人かもわからない。

危険な残業

詩織
恋愛
いつも残業の多い奈津美。そこにある人が現れいつもの残業でなくなる

処理中です...