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ギャルゲの主人公と乙女ゲーのヒロインはアピールに失敗している。
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最悪の高校生活初日となった郁人は、ホームルームを終え、速攻で教室から、脱兎のごとく逃げ去るのである。ゆるふわ宏美、梨緒、クラスの女子生徒達の声が聞こえるが完全無視して、とにかく素早く下駄箱に向かう。
(美月には、後で連絡して、学校の外で合流するとしよう)
学校の一年生の下駄箱が置いてある昇降口にたどり着くと、素早く靴を履き替えながら、そんなことを考えていた郁人だが、後ろ方の階段からバタバタと、走ってくる足音が聞こえてきたため、まずいと思った郁人は素早く逃げようとする。
「ちょっと、郁人待ってよ!!」
「……美月か!? すまない。すぐに外に出ないとまずいんだ」
「……え!? そ、そうなの? ごめん…私もなんだよ」
バタバタと階段を急いで降りてくる美月は、自分の下駄箱に走って行って、美月も素早く靴を履き替え、郁人の所に向かって来るのを、郁人は仕方なく待っているのである。
「すまない……美月、俺はすぐにここから、離れないといけないんだ」
「そうなの!? 私も、すぐにここから離れたいから大丈夫だよ!!」
そんな会話をしていると、バタバタと階段から、足音が複数聞こえてくる。郁人と美月は、その足跡にビクッと身体が反応する。
「郁人様、逃がしませんよ~!」
「美月ちゃん、マジで少しでいいから残ってくれねーか!?」
そんな声が聞こえ、郁人と美月は、内心やばいと焦り、二人は同時に走って逃亡するのである。もの凄い速さで、校門をくぐって、二人はしばらく並んで走るのであった。
ある程度、学校から距離が離れたところで、足を止める二人なのである。
「さすがにもう大丈夫だろう……美月、大丈夫か?」
「はぁ、はぁ、だ…大丈夫だよ」
美月は胸に手を当てながら、肩で息をしている。郁人は、美月の肩に手を添えて、心配そうに支える。
「い、郁人…ご、ごめんね……ありがとうだよ」
「ごめんな…もう少し速度落とせばよかったな」
「ううん、大丈夫、郁人が私に気を遣って走ってくれてたのは、わかってたから……」
美月は、郁人が全力で走ったら、自分では、追いつけないことを知っている。だから、自分に合わせて走ってくれていたんだと理解しているのである。
「それにしても、美月はどうして、そんなに焦っていたんだ?」
「ふぅ、ふぅ、い、郁人こそどうしたのよ?」
お互いが疑問をぶつけ合うと、お互いなんとも言えない表情をする。
(いや、言える訳ないだろ……女子生徒達に追われたから逃げてきたなんて、しかも、謎の握手会をさせられそうになったなんて)
(言える訳ないよね。男子生徒達から逃げてきたなんて、しかも、謎のお話し会をさせられそうになったなんて)
郁人と美月は、お互い同じタイミングでため息をつく。美月も息を整え終わったのか、郁人から離れようとする。そして、思い出す。二人の距離を、お互いの目が合うと、二人で顔を赤くする。
「美月……わ、悪い」
「う、ううん…大丈夫だよ。そ、その、あ、ありがとう郁人!!」
そして、なんとも言えない距離感が二人の間にできる。郁人は頬を掻き、美月は、両手の人差し指をモジモジさせている。二人して照れているのである。
「あ……そういえば、美月、誰かに呼ばれてなかったか?」
郁人のその発言に、美月の身体がビックっとなる。美月の表情がみるみると青くなるのである。
「そ、それは……な、なんでもないよ!! う、うん…なんでもないよ! なんでも!!」
「そ、そうか」
あからさまに、挙動不審になる美月に対して、これ以上は詮索しないでおこうと、思う郁人なのである。
「そ、そういえば、郁人の方こそ……誰かに呼ばれてなかった?」
美月も、思い出したようにそんなことを言うと、今度は、郁人の表情が、引きつるのである。
「いや、あれは……な、なんでもないんだ…なんでもな」
「え!? そ、そうなの!?」
今度は、郁人が挙動不審になると、美月も、これ以上の詮索はしないでおこうと思うのであった。そして、お互いの目があうと、二人は悟ったのである。これは深く追求してはいけないであろうと、二人の間に沈黙が訪れる。
「……」
「……」
「と、とりあえず、家に帰るか」
「う、うん、そうだね。今日は疲れたしね」
「そうだな。俺も疲れたよ」
「そうなの? ふふ、一緒だね」
そんな会話をすると、いつの間にか二人で笑顔になる。ひとまず、学校での出来事は忘れて、二人は自分達の家に向かって歩き出すのであった。
どちらからともなく自然に恋人繋ぎをして。
そして、お互いの家につく。郁人と美月の家は、一軒家の隣同士である。二人は、お互いの家の前で、足を止める。
「じゃあ、後でそっち行くね」
「ああ、わかった。また後でな」
そう言って、お互い手を振って別れる。美月は自分の家に入ると上機嫌になった。それはなぜか? 簡単である。朝の郁人の可愛い発言を思い出し、上機嫌になったのである。そんな姿を、リビングにいた妹に見られる。
「お姉ちゃん上機嫌だね。お兄ちゃんと同じクラスになれたんだ?」
美月の妹の美悠は、リビングのソファーに、寝転がって、棒アイスを食べながら何気なくそう言うと、美月の表情がみるみる絶望へと染まる。口を開き、目を見開いて、美月は美悠を見つめる。
「え? 何お姉ちゃん? どうしたの? 怖いよ」
「……郁人とは、別のクラスになったんだよね」
「え? じゃあ、なんで、そんなに機嫌よかったの!?」
美悠は、慌てた様子で寝転がっていたソファーから起き上がり、美月の方に向き直って、そう尋ねると、美月は思い出したように上機嫌に戻る。完全に情緒不安定であった。
「だ、だって、朝ね。郁人が……わ、私のこと……か、可愛いって……可愛いって言ってくれたんだよ!」
「あ……うん。そうなんだね。よかったね」
美悠は一気に話題への興味をなくして、ソファーに寝転がりなおす。完全にどうでもいいですモードに入ってテレビを眺める。
「ちょっとは、興味持って、後、美悠は制服のまま、ソファーで寝転がらないのよ」
「はぁ~、お姉ちゃんは相変わらずうるさいな~。あと、その話題は、興味ない」
「なんでよ! 郁人が私に可愛いって、言ってくれたのよ。そして私は、郁人にカッコイイって言い返したんだよ……これって、完全に愛の告白だよね? そうだよね?」
美月は美悠に詰め寄って、そうまくし立てる。美悠は、心底どうでもいいという表情をして、完全に呆れモードに入っている。
「はぁ、お姉ちゃん。よく思い出してみて、お兄ちゃんは、お姉ちゃんのこと、しょっちゅう、可愛いって言ってるし、お姉ちゃんも、しょっちゅう、お兄ちゃんのことカッコいいって言ってるでしょ」
美悠は呆れながらそう言い放つ。美月はよく思い出す。そして、心当たりがあった。確かに、今日から、郁人にアピールすることばかり考えていたが、よく思い出せば、お互いしょっちゅう、そんなことを言い合っていた気がするのである。
「え!? じゃあ、あれは別に郁人的には、普段通りってことで、私の発言も、郁人的には普段通りの発言ってことなの!?」
「よくわかんないけど、そうなんじゃない?」
完全に、その話題の興味を失った美悠は、詰め寄ってきた、美月を払いのけて、再度寝転がって、テレビを眺めだす。そして、美月は呆然と立ち尽くす。
(嘘だよね? じゃあ、今日って完全に悪夢の一日だっただけじゃない!)
美月は、衝撃的な事実を目の当たりにして呆然とするのだった。
「はぁ~、あ、美悠、今日これから、郁人の家に行ってくるね。夕ご飯の準備までには帰ってくるね」
「今日って、今日もでしょ……お姉ちゃん、お兄ちゃんの家に行かないことの方が珍しいでしょ」
「え!? そうだっけ?」
美月はそんな事を言い残し、リビングを後にして自分の部屋に向かうのだった。
そのころ、郁人もまた、家に入り、リビングの床に制服のまま寝転がって、ゲームをしている弟の雅人を見つける。
「雅人、とりあえず、着替えろよ。あと、美月が今日来るからな」
「今日来るっていうか、毎日来てるだろ姉貴」
郁人のその発言に、突っ込みを入れる雅人だったが、そうだったか? と疑問を浮かべている郁人だった。
「とりあえず、着替えてこい雅人」
「別にいいだろ、姉貴どうせ、すぐ兄貴の部屋行くんだし」
「そういう問題じゃないだろ」
「……兄貴そういえば、姉貴と同じクラスになれたのか?」
郁人の注意から、話題をそらすための雅人の発言を受けて、みるみると郁人の表情が険しくなる。その表情を見て、全てを悟った雅人は、ゲームを一時中断する。
「まぁ、美月とは違うクラスになってしまったが、まぁ、でも、今日は美月に可愛いって、伝えられたしな。美月も、俺が美月に好意を持ってると感じてくれただろう」
「兄貴、急に何の話かわかんねーけど、それ意味ないだろ?」
「なんでだ?」
「だって、兄貴、姉貴にしょっちゅう可愛いって言ってるだろ?」
「なん……だと!?」
驚愕の表情を浮かべる郁人に、雅人は呆れた表情を浮かべる。雅人はすでに、ゲームを再開し始める。
「待て、雅人、でも、美月も俺の事を、カッコイイと言ってくれたんだ! これは、美月も、俺の事を意識してくれたんじゃないのか?」
「いや、姉貴も、いつも兄貴の事カッコイイって、言ってるだろ……呆れるくらい」
郁人は、思い出す。よく思い出すと、言っていた気もする。確かに、高校に入って、美月にアピールすることばかり考えていたが、確かに、よく美月には可愛いと言っていた気がするし、美月も、俺の事をカッコイイと言ってくれていた気がする。
「そうか……つまり、今日の一日は無意味だったということか」
「よくわかんねーけど、そうなんじゃねーの」
完全にこの話題の興味を失った雅人は、ゲームに集中して、適当に返事をかえしている。
「……俺は、部屋に行くからな。雅人、ちゃんと着替えろよ」
「へいへい」
郁人は、落ち込みながら、自分の部屋に向かう。そんな郁人を完全に無視してゲームに没頭する雅人だった。
(美月には、後で連絡して、学校の外で合流するとしよう)
学校の一年生の下駄箱が置いてある昇降口にたどり着くと、素早く靴を履き替えながら、そんなことを考えていた郁人だが、後ろ方の階段からバタバタと、走ってくる足音が聞こえてきたため、まずいと思った郁人は素早く逃げようとする。
「ちょっと、郁人待ってよ!!」
「……美月か!? すまない。すぐに外に出ないとまずいんだ」
「……え!? そ、そうなの? ごめん…私もなんだよ」
バタバタと階段を急いで降りてくる美月は、自分の下駄箱に走って行って、美月も素早く靴を履き替え、郁人の所に向かって来るのを、郁人は仕方なく待っているのである。
「すまない……美月、俺はすぐにここから、離れないといけないんだ」
「そうなの!? 私も、すぐにここから離れたいから大丈夫だよ!!」
そんな会話をしていると、バタバタと階段から、足音が複数聞こえてくる。郁人と美月は、その足跡にビクッと身体が反応する。
「郁人様、逃がしませんよ~!」
「美月ちゃん、マジで少しでいいから残ってくれねーか!?」
そんな声が聞こえ、郁人と美月は、内心やばいと焦り、二人は同時に走って逃亡するのである。もの凄い速さで、校門をくぐって、二人はしばらく並んで走るのであった。
ある程度、学校から距離が離れたところで、足を止める二人なのである。
「さすがにもう大丈夫だろう……美月、大丈夫か?」
「はぁ、はぁ、だ…大丈夫だよ」
美月は胸に手を当てながら、肩で息をしている。郁人は、美月の肩に手を添えて、心配そうに支える。
「い、郁人…ご、ごめんね……ありがとうだよ」
「ごめんな…もう少し速度落とせばよかったな」
「ううん、大丈夫、郁人が私に気を遣って走ってくれてたのは、わかってたから……」
美月は、郁人が全力で走ったら、自分では、追いつけないことを知っている。だから、自分に合わせて走ってくれていたんだと理解しているのである。
「それにしても、美月はどうして、そんなに焦っていたんだ?」
「ふぅ、ふぅ、い、郁人こそどうしたのよ?」
お互いが疑問をぶつけ合うと、お互いなんとも言えない表情をする。
(いや、言える訳ないだろ……女子生徒達に追われたから逃げてきたなんて、しかも、謎の握手会をさせられそうになったなんて)
(言える訳ないよね。男子生徒達から逃げてきたなんて、しかも、謎のお話し会をさせられそうになったなんて)
郁人と美月は、お互い同じタイミングでため息をつく。美月も息を整え終わったのか、郁人から離れようとする。そして、思い出す。二人の距離を、お互いの目が合うと、二人で顔を赤くする。
「美月……わ、悪い」
「う、ううん…大丈夫だよ。そ、その、あ、ありがとう郁人!!」
そして、なんとも言えない距離感が二人の間にできる。郁人は頬を掻き、美月は、両手の人差し指をモジモジさせている。二人して照れているのである。
「あ……そういえば、美月、誰かに呼ばれてなかったか?」
郁人のその発言に、美月の身体がビックっとなる。美月の表情がみるみると青くなるのである。
「そ、それは……な、なんでもないよ!! う、うん…なんでもないよ! なんでも!!」
「そ、そうか」
あからさまに、挙動不審になる美月に対して、これ以上は詮索しないでおこうと、思う郁人なのである。
「そ、そういえば、郁人の方こそ……誰かに呼ばれてなかった?」
美月も、思い出したようにそんなことを言うと、今度は、郁人の表情が、引きつるのである。
「いや、あれは……な、なんでもないんだ…なんでもな」
「え!? そ、そうなの!?」
今度は、郁人が挙動不審になると、美月も、これ以上の詮索はしないでおこうと思うのであった。そして、お互いの目があうと、二人は悟ったのである。これは深く追求してはいけないであろうと、二人の間に沈黙が訪れる。
「……」
「……」
「と、とりあえず、家に帰るか」
「う、うん、そうだね。今日は疲れたしね」
「そうだな。俺も疲れたよ」
「そうなの? ふふ、一緒だね」
そんな会話をすると、いつの間にか二人で笑顔になる。ひとまず、学校での出来事は忘れて、二人は自分達の家に向かって歩き出すのであった。
どちらからともなく自然に恋人繋ぎをして。
そして、お互いの家につく。郁人と美月の家は、一軒家の隣同士である。二人は、お互いの家の前で、足を止める。
「じゃあ、後でそっち行くね」
「ああ、わかった。また後でな」
そう言って、お互い手を振って別れる。美月は自分の家に入ると上機嫌になった。それはなぜか? 簡単である。朝の郁人の可愛い発言を思い出し、上機嫌になったのである。そんな姿を、リビングにいた妹に見られる。
「お姉ちゃん上機嫌だね。お兄ちゃんと同じクラスになれたんだ?」
美月の妹の美悠は、リビングのソファーに、寝転がって、棒アイスを食べながら何気なくそう言うと、美月の表情がみるみる絶望へと染まる。口を開き、目を見開いて、美月は美悠を見つめる。
「え? 何お姉ちゃん? どうしたの? 怖いよ」
「……郁人とは、別のクラスになったんだよね」
「え? じゃあ、なんで、そんなに機嫌よかったの!?」
美悠は、慌てた様子で寝転がっていたソファーから起き上がり、美月の方に向き直って、そう尋ねると、美月は思い出したように上機嫌に戻る。完全に情緒不安定であった。
「だ、だって、朝ね。郁人が……わ、私のこと……か、可愛いって……可愛いって言ってくれたんだよ!」
「あ……うん。そうなんだね。よかったね」
美悠は一気に話題への興味をなくして、ソファーに寝転がりなおす。完全にどうでもいいですモードに入ってテレビを眺める。
「ちょっとは、興味持って、後、美悠は制服のまま、ソファーで寝転がらないのよ」
「はぁ~、お姉ちゃんは相変わらずうるさいな~。あと、その話題は、興味ない」
「なんでよ! 郁人が私に可愛いって、言ってくれたのよ。そして私は、郁人にカッコイイって言い返したんだよ……これって、完全に愛の告白だよね? そうだよね?」
美月は美悠に詰め寄って、そうまくし立てる。美悠は、心底どうでもいいという表情をして、完全に呆れモードに入っている。
「はぁ、お姉ちゃん。よく思い出してみて、お兄ちゃんは、お姉ちゃんのこと、しょっちゅう、可愛いって言ってるし、お姉ちゃんも、しょっちゅう、お兄ちゃんのことカッコいいって言ってるでしょ」
美悠は呆れながらそう言い放つ。美月はよく思い出す。そして、心当たりがあった。確かに、今日から、郁人にアピールすることばかり考えていたが、よく思い出せば、お互いしょっちゅう、そんなことを言い合っていた気がするのである。
「え!? じゃあ、あれは別に郁人的には、普段通りってことで、私の発言も、郁人的には普段通りの発言ってことなの!?」
「よくわかんないけど、そうなんじゃない?」
完全に、その話題の興味を失った美悠は、詰め寄ってきた、美月を払いのけて、再度寝転がって、テレビを眺めだす。そして、美月は呆然と立ち尽くす。
(嘘だよね? じゃあ、今日って完全に悪夢の一日だっただけじゃない!)
美月は、衝撃的な事実を目の当たりにして呆然とするのだった。
「はぁ~、あ、美悠、今日これから、郁人の家に行ってくるね。夕ご飯の準備までには帰ってくるね」
「今日って、今日もでしょ……お姉ちゃん、お兄ちゃんの家に行かないことの方が珍しいでしょ」
「え!? そうだっけ?」
美月はそんな事を言い残し、リビングを後にして自分の部屋に向かうのだった。
そのころ、郁人もまた、家に入り、リビングの床に制服のまま寝転がって、ゲームをしている弟の雅人を見つける。
「雅人、とりあえず、着替えろよ。あと、美月が今日来るからな」
「今日来るっていうか、毎日来てるだろ姉貴」
郁人のその発言に、突っ込みを入れる雅人だったが、そうだったか? と疑問を浮かべている郁人だった。
「とりあえず、着替えてこい雅人」
「別にいいだろ、姉貴どうせ、すぐ兄貴の部屋行くんだし」
「そういう問題じゃないだろ」
「……兄貴そういえば、姉貴と同じクラスになれたのか?」
郁人の注意から、話題をそらすための雅人の発言を受けて、みるみると郁人の表情が険しくなる。その表情を見て、全てを悟った雅人は、ゲームを一時中断する。
「まぁ、美月とは違うクラスになってしまったが、まぁ、でも、今日は美月に可愛いって、伝えられたしな。美月も、俺が美月に好意を持ってると感じてくれただろう」
「兄貴、急に何の話かわかんねーけど、それ意味ないだろ?」
「なんでだ?」
「だって、兄貴、姉貴にしょっちゅう可愛いって言ってるだろ?」
「なん……だと!?」
驚愕の表情を浮かべる郁人に、雅人は呆れた表情を浮かべる。雅人はすでに、ゲームを再開し始める。
「待て、雅人、でも、美月も俺の事を、カッコイイと言ってくれたんだ! これは、美月も、俺の事を意識してくれたんじゃないのか?」
「いや、姉貴も、いつも兄貴の事カッコイイって、言ってるだろ……呆れるくらい」
郁人は、思い出す。よく思い出すと、言っていた気もする。確かに、高校に入って、美月にアピールすることばかり考えていたが、確かに、よく美月には可愛いと言っていた気がするし、美月も、俺の事をカッコイイと言ってくれていた気がする。
「そうか……つまり、今日の一日は無意味だったということか」
「よくわかんねーけど、そうなんじゃねーの」
完全にこの話題の興味を失った雅人は、ゲームに集中して、適当に返事をかえしている。
「……俺は、部屋に行くからな。雅人、ちゃんと着替えろよ」
「へいへい」
郁人は、落ち込みながら、自分の部屋に向かう。そんな郁人を完全に無視してゲームに没頭する雅人だった。
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