煌めく世界へ、かける虹

麻生 創太

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第二章『ライブ行こうぜ!!』

番場の観察レポート②

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「おや? また来たのかい。君も熱心なことだねぇ」

「お前の正体を早く教えろ? まあまあ、そう急かさなくても。いずれは分かることだよ。果報は寝て待て、ってね。……ん? 使い方が間違っている? 君は細かいことを気にするねぇ」

「ともあれ、ここで現状を整理しておこうか。何か見えてくるものがあるかもしれないし、ね。今回はやたらと人数が出てきて頭がパンクしそうになったよ。名前を覚えるだけでも一苦労さ」

「では──始めよう」



番場による第二章ダイジェスト

「ある日、文哉と明慶、そして私は大木の年輪のような菓子……バームクーヘンといったかな? それを食べる為、喫茶店を訪れていた。そこには、ことはと花彩の二人がいたんだ。どうやら彼女たちもバームクーヘンが目当てだったらしい。確かに、あのバームクーヘンは絶品だったよ。明慶も言っていたが、生地がしっとりしていて、穴の中に絞られた生クリームは上品な甘さが最高で……おっと、話が逸れてしまったねぇ。
 新堂しんどう 結人ゆいとという俳優のファンの花彩は、文哉たちをあるイベントへ誘う。その名も、『アウェイクニングサンダーフェス』。英語とやらで表記するなら“Awakening Thunder Festival”、訳すなら「目醒める雷鳴の祝祭」というところだろうか。新堂 結人はこのイベントにゲストとして出演するのだという。
文哉たちはこのイベントへの参加を即決。興味を持った私も一緒に同行することになったんだ」

「一方その頃、警視庁の一室に二人の刑事が呼ばれていた。筧警部と佐伯警部補だ。上司から通達された指令は、ネット上に投稿された不穏な書き込みの調査及びフェス当日の警護。
与えられた任務について考えを巡らせる筧警部は、妹がフェスに参加することを聞かされ、ネット上の書き込みをしたのが誰なのか特定を急ぐことになる」

「そして、迎えたフェス当日。様々な出店が並び賑わいを見せる中、ライブ会場ではオープニングアクトが始まった。コクシネル交響楽団の代表としてバイオリン奏者の 桜崎さくらざき ミリアムとコントラバス奏者の 夏継なつつぐ ガウェインが情熱的なデュエットを披露したんだ。彼らの演奏に、一気に惹き込まれる観客たち。そんな中、次の演者がステージ上に現れた」

「登場したのは、現役男子高校生の 雨宮あまみや つむぐと 天道てんどう 晴喜はるきによるDJユニット・ライジングイカロスだ。このライジングイカロスというユニット名は、紡が名付けたもの。イカロスの神話の残酷な結末を覆す“墜ちないイカロス”をコンセプトに、二人は高みを目指していく。
彼らのパフォーマンスは皆を熱狂の渦へと巻き込んだ。ボルテージがいきなり最高潮に達する中、次の演目が始まる」

「現れたのは、ジャミングノイズというパンクロックバンド。バンド名を訳すなら「妨害雑音」とでも表現すればいいだろうか。いかにも胡散臭い名前だが、筧警部はこのバンドのリーダー・ 大迫おおさこ 賢太けんたがネット上の書き込みをした張本人であることを突き止めていた。
彼らの動きを警戒しつつも、彼らのパフォーマンスを見届ける筧警部。しかし、特に変わった様子もなく彼らのパフォーマンスは終了した」

「そして次に登場したのは、現役女子高校生の真木まき 詩織しおり日比野ひびの 星羅せいら姫里ひめさと 夢歌ゆめか棚本たなもと 未可子みかこによるガールズロックバンド・ハイドランジア。“Hydrangea”は日本語とやらに訳すと「紫陽花あじさい」を意味する。彼女たちは持ち歌である一曲、「紫陽花の花束」を披露し、会場を一気に沸かせたんだ」

「しかし、彼女たちのことを良く思わない人物がいた。ジャミングノイズの大迫 賢太はハイドランジアのパフォーマンスに嫉妬し、もっと自分たちを見てほしいと強く欲する。やがて膨れ上がった欲望は暴走し、《GROW》が誕生したのさ。今回はハリネズミの姿をしていたねぇ。トゲトゲしい見た目は、普段からロックを掻き鳴らす彼の想像力がそのまま具現化したのだろう。
当然、いきなりの事態に会場は大混乱。文哉とことはが変身して応戦するも、まったく歯が立たない」

「そんな状況の中で怒りを滾らせていたのは、紡だった。フェスをメチャクチャにした化け物を絶対に許さない。そう強く想った瞬間、彼が持つ黄色い宝石のついた指輪が光を放ったんだ。紡が変身した姿はまさしくDJを思わせるものだったよ。……え? 彼は元々DJじゃないかって? まあ、よりDJらしくなった、と言った方が正しいかもね。ともあれ、文哉、ことは、そして紡の三人による連携で見事に《GROW》を撃退したのさ」

「ところが、ここで事態はさらなる動きを見せる。突如、荘厳な装飾のついた鏡──加々見 成美とその手下が現れたんだ。詩織の持つ、緑色の宝石がついた鍵を狙い襲いかかる“彼女”の手下。するとその時、詩織の持つ鍵が光りだした。そう、紡に続いて詩織も変身を遂げたんだ。変身後の彼女は武骨な衣装に身を包み、これぞまさしくロックンローラーという感じだね。……ん? さっきも似たようなこと言わなかったか? う~ん、そうだったかなぁ。
まあ、それはともかく、詩織の攻撃に危険を感じたのか、“彼女”とその手下は撤退していったんだ」

「すべてが収束し、メチャクチャになった会場の中で紡は呆然と立ち尽くしていた。そこへ相方の晴喜が駆けつける。互いの想いを確認した上で、晴喜はそっと紡の頬に口づけをした。紡と晴喜……ライジングイカロスの二人は、実は同性の恋人同士であることが明らかになったんだ。会場に残った面々にその現場を目撃され、不都合を感じた紡は相方を連れて立ち去ろうとするのだが……筧警部が彼らに事情聴取を要請する」

「聴取の内容については──まあ、私は受けなかったので割愛させてもらうよ。そんなことが許されるのかって? ……後々怒られるかもしれないねぇ」



番場によるファッションチェック

「さて。では、お次は私によるファッションチェックの時間だよ。またやるのか? もちろんさ。それに君も変身者たちの容姿や能力は気になるところだろう? 詳細を解説していくから聞いていくといい」

「まずは、ライジングイカロスの雨宮 紡。彼は黄色い宝石のついた指輪によって変身する。
変身後はディスクジョッキー、つまり、DJを思わせる格好となる。……と言ったらそのまんまだねぇ。頭部には大きめのヘッドフォンを装着。フード付きのパーカーを羽織っていて、足元はスポーツシューズ。所謂、ストリート系? と呼ばれるスタイルに変化するわけだね。カジュアルで動きやすい衣装はダンスを踊る紡にぴったりだ。
彼の武器は、背後に出現する左右一対のスピーカーユニット。このユニットは半透明で、うっすら中の基盤や回路が見えている。
手元にある、DJが使う機材のようなディスプレイで操作を行うんだ。それについたターンテーブルを擦ることでスピーカーユニットから雷を放出することができる。さらにディスプレイを操作することで雷の威力や放つ方向を調整できるんだ。そして、このディスプレイにはまだまだ隠されたギミックがあるようだが……それはこれから明らかになるだろう」

「次に、ハイドランジアのリーダーでベースボーカルの真木 詩織。彼女は緑色の宝石のついた鍵によって変身する。
変身後はロックンローラーを思わせる格好となる。……これもまあ、そのまんまだねぇ。ジャケットやスカートは革製で、チェーンやスタッズといった装飾が随所に散りばめられている。武骨で荒々しい印象を受ける姿はクールな詩織にとてもよく似合うねぇ。
彼女の武器は、緑色の宝石が散りばめられたベース。このベースを掻き鳴らすことにより、大地を揺らし、地割れを引き起こすことができる。広範囲に攻撃が可能な一方、空中の敵には効果が無いというのが難点かな。彼女にとってこれはかなりネックになってきそうだねぇ」



現時点で判明している指輪と鍵の所有者について

「それでは最後に、現時点で判明している指輪と鍵の所有者の一覧を見ていこうか」

☆指輪

青→中野 文哉
緑→三稜 ことは
黄→雨宮 紡
黒→???(名前及び性別不明。加々見 成美の手下)
赤→???
紫→???
白→???

☆鍵

黄→筧 崇嶺
緑→真木 詩織
赤→???
青→???
紫→???
白→???
黒→???

「中野 文哉と三稜 ことは、そして雨宮 紡……指輪の所有者となった彼らは《GENESIS》の力を十分に引き出していけるだろう」

「鍵の所有者は真木 詩織と筧 崇嶺、か……。バンド少女の方はこれから期待できそうだけど、警察官の彼はなかなかに厄介な存在だねぇ……」

「もう一つ懸念があるとすれば、黒の指輪が“彼女”の手に落ちているという現状だろうか。このことは今後の課題となってくるね」

「さらに、新たに鍵を手にした人物がいるようだ。とにかく、物語はこれからも続いていく、ということだよ」
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