思い込み激しめな友人の恋愛相談を、仕方なく聞いていただけのはずだった

第４話

「…ねえ、やっぱりもやもやするんだけど」
「何がだよ」
「僕ってやっぱり振られたってことになるの」
「お前が思い込んでるだけじゃね」
「…でもさあ、夏祭り断られたんだよ？」

またこれだ。夏祭りという世紀の大告白の舞台を断られた、と友人が大嘆きしたあの日から、かれこれ１週間。もうずっとこの状態だ。おかげで最近は食欲に加え、ありとあらゆる物事に対してのやる気が喪失したらしい。カレンダー上ではもう初夏になろうかという頃だが、もう夏なんじゃないかと太陽にひとこと言ってやりたいほどの暑さの今日この頃。軽い夏バテも入っていると思うのだが、勝手に自分で作り上げた失恋の傷が痛むらしい。厄介な性質である。

ことあるごとに嘆いて、授業中も机に突っ伏して寝ているし、四六時中失恋話を聞かされるこちらの身にもなってほしい。何か適当な文学作品でも読んでおけ、たぶんそちらの方が俺よりも詳しい気がする。いや、逆にそういう作品は読まない方がいいのだろうか。人それぞれ違うのか…？

それに、件の想い人くんも何なのだ。あいつは人一倍思い込みが激しいから、一度ふたりでお出かけしてしまったら、もうそれは完全にデートだと思いこんでいるし、もはや恋人になったくらいに思ってしまう面倒なやつなのだ。それに、あやつの猛プッシュに気づいているのなら、中途半端に誘いに乗ったり、連絡を返したりするな。もうひと思いに、ばっさりきっぱりと恋の新芽を刈り取ってほしい。お前の煮えきらない態度のせいでこちらが迷惑しているのだ。

「…もしかして、いつも正人とふたりきりでいることに嫉妬して、夏祭り断ったのかな」
「はい？」
「…夏祭りに誘ったあと、連絡も取れなくなったし…。なんか遊ぶなら誰でもよかったんだ、自分のことが好きだったわけじゃないんだ、みたいな感じでがっかりしたのかもしれないよね」

…なんでお前のことをそんな好きな設定なんだ。その自信はどこから湧いてきやがるのだ。そこまで自信を持てるのであれば、夏祭りに断られたくらいでめそめそするな。何度でも壁に向かって体当りしていけ。

という言葉は飲み込んでおいた。それにしても、件の想い人くんよ、これをなんとかしてくれ、本当に。この呪いを解けるのはお前しかいない、本当に。