君と居た日々

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今年の夏は全国的に猛暑日が続いてる。
比較的涼しいとされていた土地での猛暑は、そこに住む人々の価値観を変えようとしていた。


とてもじゃないが快適とは程遠い1Kのアパートで、男はうだつの上がらない日々への不満を感じていた。

「今日も暑いな」
スマートフォンのウィジェットには36℃とある。
「先月のボーナスでエアコン買っとけば良かった」
男はつぶやき、汗が流れる。
室内には扇風機の音が虚しく響くだけだ。

水道は2日前に停止し、電気もじきに停止するだろう。

台所は使用感が無く越してきた時の状態を未だに維持している。
しかし、周りは缶チューハイの空き缶やカップ麺のゴミなど綺麗とは程遠いものだ。

郵便受けには様々な書類が収まりきらず行き場を無くしたそれらは玄関に散乱している。

「それにしても昨日は飲みすぎた…」
ゴミに囲まれた男の居住スペースは限られてる。
床が見える箇所は存在しない。
男が思うにこれらはゴミなんかでは無く、宝の山なんだと言い聞かせているのだろう。
きっと男は寂しさを紛らわす為の環境で仕方の無い事だと割り切っているのかもしれない。

実際のとこは男にしか分からない事だ。

足の踏み場が無くなった場所で男は大の字になった。
「……」

男の瞳には白く輝くシーリングライトが写っていた。
この家で唯一白い箇所は男にとってまるで現実から程遠い手の届かない場所に思えていた。

男の暗闇に差し込む綺麗な光は時々消える。
今までの時間
これからの事
そのどれも全てがまるで嘘だったかの様にぼんやりと光っては消える。
そもそも光など存在しなかったのかも知れない。
見えている光は男にとって暗闇だった
そう思わせる様な、脆いものだ。

「疲れた、もう充分だよな。」
男はぐしゃぐしゃになった写真を見つめ、深くため息をつくとそのまま眠りについた。
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