懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。

梅雨の人

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幸せな光景

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それから―――

すぐに家事の原因調査が行われ、ブラッドの仕事仲間のアリサさんの仕業だと判明した。
ブラッドが私に構っているのが面白くなかったというのが原因らしい。

後の裁判で、アリサさんは、燃えた離れの修復費に私達への慰謝料として、多額の支払いを命じられた。
返済がすむまで、強制労働施設での労働を課せられることになるらしい。

4か月後----

「いらっしゃい!って、あんた、ここまで自力で来たのかい?!」
「こんにちはルーナさん。まあ、これくらいなんてことないっす。」

そう言ってやって杖を器用に使ってやってきたのはブラッドだった。

あのケガで、残念だが前のように激しく走ったりはおそらくできないだろうと診断が出た。
でも、リハビリを欠かさずにやっているようで、医師にはいつかは、杖なしでも自力で歩くことができるだろうと言われたらしい。

「で、あんたこれからどうすんのさ。その足じゃあ今迄みたいな仕事は難しいんじゃないか?」
「ええ。このまま騎士としては無理ですが、騎士団の中の事務処理を手伝っていくことになりましたよ。夜勤もあまりなさそうだしよかったです。」
「そうかい、まあ、あんたがそう言うんなら良かったんだろうねえ。」

「それで、メグとテオは…。」
「ああ、あの子たちならちょっと前に、そこらの砂浜にピクニックに行ったよ。あの、テオドールってやつがひっついていっちまったけどね。」
「!」

急いで砂浜に向かったブラッドは、メグとテオと騎士仲間のテオドールが三人で海を見ながら楽しそうにピクニックをしている光景だった。

テオドールがテオを腕に抱いてあやし、テオがテオドールの顔に手を伸ばしてキャッキャと笑っている。それをそばで優しく見つめるメグの姿があった。

本来そこに自分がいるはずだったのに。なぜ自分以外の男が。
ショックと嫉妬でそこから動くことができずただその光景を眺めることしかできなかった。

そしてその光景は、正にブラッドがメグに見せた光景そのものだったと気が付いた。
自分がいるべき場所に他人がいて、愛する人が幸せそうにしているその光景。
ああ、こんなに心を抉られるものなんだな。
しかも、メグには妊娠が判明したその日にあのケーキ屋の前でこんな光景を見せてしまった。

「…。」

自分の行った愚行が、どれだけメグの心を抉ったのか。
俺はもうメグのそばにいない方がいいのか?あいつならメグとテオを幸せにできるのか?
そう思うと、もうそこには居られなかった。

それから数日ブラッドがメグを訪れることはなかった。

メグを訪れることで、本当はメグの幸せを邪魔してしまっているんじゃないか。

でも、メグが他の男と幸せになるなんて考えただけで死にそうだ…。

行くべきか行かないべきか。

せっかくあの火事の一件からメグの気持ちを聞けたというのに。

そうこうしていたらメグのところに行かずに、数日が経ってしまった。
そんな時に、職場に面会が入った。

なんとそこにいたのは、サムだった。

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