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あなたにも幸せになってほしい
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酷く体が重いし喉も痛い。
どうやらここは、病院のようだ。
「メグ!意識が戻ったんだね!本当によかった!」
「ルーナさん、ケホッ…あの後、テオとブラッドは…家はどうなったんでしょうかっ」
「ああ、テオは大丈夫さ。医者が言うには幸いかすり傷程度で、煙を吸ってしまったみたいだが命に別状はないとのことさ。今は、サムがちゃんとついてるからね。」
「そうですかっ。良かったっ。本当にっ…ううっ…」
「怖かったねえ。よくテオを守ったね。さすがはテオの母親だ。あとは、私たちに任せて、ゆっくり休まないとね。あとでテオに会えるか医者に聞いてみるから。」
「ありがとうございます、ルーナさん。あの、ブラッドは大丈夫だったんでしょうか…?」
「ああ、ブラッドねえ。まあ、そうさね。心配しなくて大丈夫さ。奴も騎士なんかして鍛えてきたようだし。大丈夫さ。また、元気になってからでも、気が向いたら会ってやったらいいさ。」
「そうですか。良かった。無事だったんですね…。」
それから、しばらくしてやっと、テオと二人で退院の許可が下りた。
焼けてしまった離れにはもうすめないので、ルーナさんたちのお宅の空いている部屋にテオと二人で住まわせてもらうことになった。
ルーナさんもサムさんも、これでいつでもテオの世話が焼けて嬉しいと歓迎してくれた。
でも、このままというわけにもいかないので、しばらくして落ち着いたら、どこか近くに空き家がないか探してみようと思う。
入院中に、何度かブラッドに面会に行ったが、毎回もすれ違って結局会えずじまいだった。
そして、退院して戻ってきた今もまだ一度もその姿を確認していない。
いつもなら、毎日のように顔を出してくれるのに。
散歩に出るには体がまだつらいので、電話をして病院にブラッドがまだいるのか確認することにした。
すると電話に応対してくれた受付は、ブラッドがまだそこにいることを教えてくれた。
家屋に押しつぶされそうな姿を思い出す。いやな予感がする。
そう思った私は、テオを乳母車に乗せ、重たい体を何とか動かして、病院へ向かった。
私達がくると思ってなかったのだろう。
リハビリをしているらしいブラッドの姿が目に入った。
その表情から、そのリハビリがどれだけつらいのかが伝わってくる。
気がついたら、ブラッドの手を握っていた。
「おっと!…なんだ、みつかったのか。ちゃんと歩けるようになってから会いに行こうと思ってたのになあ。」
なんて言って、いたずらがばれてしまったこどものような笑い方をしたブラッドが私の頭をなでている。
涙がとめどなく私の頬を伝う。
「メグ、テオも。二人とも無事でよかった。」
そういってブラッドの大きくて逞しい腕が私を優しく包む。
大粒の涙をこぼしながら、助けてくれてありがとうと伝えた。
それから炎の中でブラッドに伝えたかったことを伝えた。
少し落ち着いてから、今回の件のことをブラッドが謝罪した。
なんで、ブラッドが謝ることがあるのかと問うと、あの女性の一方的な行動とはいえ、私たちを巻き込んでしまって後悔しているらしい。
目の前で二度も彼女を追い返したのを目の当たりにしているが、なぜかそういわれると癪にさわった。
気が付いた時には、もう言葉が堰を切ったように溢れてきていた。
「あのケーキ屋には、もう二度と行けない。あの特別なケーキ屋に私以外の女の人を連れて行ったなんて本当に最低。」
「ごめん…。」
「そもそも、ブラッドとケーキ屋にもう二度と行けないかも。」
「…。ごめん。俺がこれからは腕を振るって手作りする。」
「仕事で泊りがけって、なんなのそれ。浮気の常套句?本当に最低。本当に気持ち悪い。」
「ごめん…。」
「あの小さい子を抱いて、女の人を連れてるブラッド本当に楽しそうだった。そんなに幸せだったのなら、私なんかさっさと捨てとけばよかったんじゃない?」
「っ!それは絶対にない!…本当にごめん。」
「ばれなきゃ、今頃もずっとあの女の人と浮気してたんだろうね。本当に気持ち悪いし、最低だね。」
「…それは…ごめん…」
「そこは、絶対にそれはないっていうところだよね。言い切れないってことは、まだ未練があるんでしょ?早く向こうに戻ったらどう?」
「未練は全くない!絶対に。関係が終わるきっかけがなかっただけで…。いや、俺がそれをしなかったから悪かったんだな。ごめん。」
「結局、私じゃなくてもいいんだよね。本当にショックだった。」
「そんなことはない。メグじゃないとだめだ。でも、やってしまったことは言い訳出来ない。本当にごめん。」
「ごめんごめんって。謝るくらいならなんで浮気したの?本当に最低!」
「ごめん……」
「ほかの女の人に触れたブラッドとは無理だと思うの。ブラッドが反省してるのも分かったし、今回も私とテオを体をはって助けてくれて嬉しかった。だから、私の幸せを祈るだけじゃなくて、ブラッドも誰かと幸せになってほしい。」
「メグ…」
「本当に、ブラッドが無事でよかった。リハビリ頑張ってね。…じゃあ、行くね。」
どうやらここは、病院のようだ。
「メグ!意識が戻ったんだね!本当によかった!」
「ルーナさん、ケホッ…あの後、テオとブラッドは…家はどうなったんでしょうかっ」
「ああ、テオは大丈夫さ。医者が言うには幸いかすり傷程度で、煙を吸ってしまったみたいだが命に別状はないとのことさ。今は、サムがちゃんとついてるからね。」
「そうですかっ。良かったっ。本当にっ…ううっ…」
「怖かったねえ。よくテオを守ったね。さすがはテオの母親だ。あとは、私たちに任せて、ゆっくり休まないとね。あとでテオに会えるか医者に聞いてみるから。」
「ありがとうございます、ルーナさん。あの、ブラッドは大丈夫だったんでしょうか…?」
「ああ、ブラッドねえ。まあ、そうさね。心配しなくて大丈夫さ。奴も騎士なんかして鍛えてきたようだし。大丈夫さ。また、元気になってからでも、気が向いたら会ってやったらいいさ。」
「そうですか。良かった。無事だったんですね…。」
それから、しばらくしてやっと、テオと二人で退院の許可が下りた。
焼けてしまった離れにはもうすめないので、ルーナさんたちのお宅の空いている部屋にテオと二人で住まわせてもらうことになった。
ルーナさんもサムさんも、これでいつでもテオの世話が焼けて嬉しいと歓迎してくれた。
でも、このままというわけにもいかないので、しばらくして落ち着いたら、どこか近くに空き家がないか探してみようと思う。
入院中に、何度かブラッドに面会に行ったが、毎回もすれ違って結局会えずじまいだった。
そして、退院して戻ってきた今もまだ一度もその姿を確認していない。
いつもなら、毎日のように顔を出してくれるのに。
散歩に出るには体がまだつらいので、電話をして病院にブラッドがまだいるのか確認することにした。
すると電話に応対してくれた受付は、ブラッドがまだそこにいることを教えてくれた。
家屋に押しつぶされそうな姿を思い出す。いやな予感がする。
そう思った私は、テオを乳母車に乗せ、重たい体を何とか動かして、病院へ向かった。
私達がくると思ってなかったのだろう。
リハビリをしているらしいブラッドの姿が目に入った。
その表情から、そのリハビリがどれだけつらいのかが伝わってくる。
気がついたら、ブラッドの手を握っていた。
「おっと!…なんだ、みつかったのか。ちゃんと歩けるようになってから会いに行こうと思ってたのになあ。」
なんて言って、いたずらがばれてしまったこどものような笑い方をしたブラッドが私の頭をなでている。
涙がとめどなく私の頬を伝う。
「メグ、テオも。二人とも無事でよかった。」
そういってブラッドの大きくて逞しい腕が私を優しく包む。
大粒の涙をこぼしながら、助けてくれてありがとうと伝えた。
それから炎の中でブラッドに伝えたかったことを伝えた。
少し落ち着いてから、今回の件のことをブラッドが謝罪した。
なんで、ブラッドが謝ることがあるのかと問うと、あの女性の一方的な行動とはいえ、私たちを巻き込んでしまって後悔しているらしい。
目の前で二度も彼女を追い返したのを目の当たりにしているが、なぜかそういわれると癪にさわった。
気が付いた時には、もう言葉が堰を切ったように溢れてきていた。
「あのケーキ屋には、もう二度と行けない。あの特別なケーキ屋に私以外の女の人を連れて行ったなんて本当に最低。」
「ごめん…。」
「そもそも、ブラッドとケーキ屋にもう二度と行けないかも。」
「…。ごめん。俺がこれからは腕を振るって手作りする。」
「仕事で泊りがけって、なんなのそれ。浮気の常套句?本当に最低。本当に気持ち悪い。」
「ごめん…。」
「あの小さい子を抱いて、女の人を連れてるブラッド本当に楽しそうだった。そんなに幸せだったのなら、私なんかさっさと捨てとけばよかったんじゃない?」
「っ!それは絶対にない!…本当にごめん。」
「ばれなきゃ、今頃もずっとあの女の人と浮気してたんだろうね。本当に気持ち悪いし、最低だね。」
「…それは…ごめん…」
「そこは、絶対にそれはないっていうところだよね。言い切れないってことは、まだ未練があるんでしょ?早く向こうに戻ったらどう?」
「未練は全くない!絶対に。関係が終わるきっかけがなかっただけで…。いや、俺がそれをしなかったから悪かったんだな。ごめん。」
「結局、私じゃなくてもいいんだよね。本当にショックだった。」
「そんなことはない。メグじゃないとだめだ。でも、やってしまったことは言い訳出来ない。本当にごめん。」
「ごめんごめんって。謝るくらいならなんで浮気したの?本当に最低!」
「ごめん……」
「ほかの女の人に触れたブラッドとは無理だと思うの。ブラッドが反省してるのも分かったし、今回も私とテオを体をはって助けてくれて嬉しかった。だから、私の幸せを祈るだけじゃなくて、ブラッドも誰かと幸せになってほしい。」
「メグ…」
「本当に、ブラッドが無事でよかった。リハビリ頑張ってね。…じゃあ、行くね。」
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