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一度間違えた男の決心
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メグに会いに行ってからのブラッドの行動は早かった。
すぐに、来た道を戻り、売れるものはすべて売り払った。
幸運にも家の買い手もすぐに見つかったので、辞表をその次の日には出しに行った。
これだけ迷惑をかけたにもかかわらず、その上司は、メグの住む町にある騎士団に推薦状を書いてくれた。
そして、エリーさんに、今回世話になったお礼を伝えに行った。
般若のごとく恐ろしい顔で怒られた。
さっさと勝手にこの街に戻ってきたことを。
心配したといって、背中をバシバシ怒涛の如く小突かれた。
そこには、まだ俺の浮気でメグを悲しませた恨みが含まれていたんだと思う。
これからどうするかと聞かれたので、すべてを売っぱらった金を、子供との生活のためにメグに渡すことと、俺もメグの町に移って陰ながら支えるとつたえた。
すると、エリーさんは神妙な顔をして、一言、
「やっぱりあんたは馬鹿だねえ。でも、まあ、頑張るんだよ。」
といって、売れ残りらしきパンを、袋に詰めて俺にくれた。
この人がいなければ、メグは今頃どうなっていたんだろうかと思うとゾッとする。
メグを助けてくれただけでなく、最低な俺にまで手を貸してくれた。
どうあがいてもこの人には、一生かかっても頭が上がらないと思う。
出発の日の朝、がらんとしたメグとの思い出の詰まった家をゆっくり見て歩いた。
後悔ばかりが頭をもたげる。
あの日、メグと会ってお腹の子の振動を感じて、後悔と共に目が覚める思いがした。
俺の時間が止まったままだったのに対して、
メグとお腹の子の時間は前に進んでいたのだと。
この思い出の詰まった家で、家族三人で幸せになる道を断ったのは自分がやらかしてしまったせいだ。
もうこれは変えようがない。
それなら、メグたちの近くで、陰ながら支えていこうと心が決まった。
思い出の詰まった家の扉を開けて一歩外に踏み出し、二歩、三歩と進む。
もう見ることもないだろうその家に向け頭を下げて、また、ゆっくりと前へ歩き出した。
メグのいる街について、すぐに騎士団に入れてもらうことができた。
鍛錬に励み、仕事の合間を見ては、メグの様子を遠くから伺う日々を送る。
まるでストーカーみたいだなと苦笑する。
仲間の中でもメグのパン屋は結構人気で、周りの奴らはよく買いに行っている。
妊婦にもかかわらず、メグ目当てに店を訪れるやつがかなり多いようだ。
やっぱりあの性格とあの美貌は魅力的だろう。
やきもきするが、店主のサムとルーナがメグの周りにたかる男どもを追っ払っているようだ。
ある仕事が休みの日に、メグの様子をいつものように遠くから伺っていた。
すると、メグが急に蹲ってどう見ても様子がおかしい。
急いで駆けつけてみると、メグは既に破水していた。
焦燥でおかしくなりそうだった。
とにかくメグを抱きかかえて店に戻り、すぐに産婆が来た。
ルーナに何度はったおされても、どうしてもメグと産まれてくる子の
そばにいたかったので、どれだけボコボコにされてもメグの近くに居座った。
出産があんなに、命懸けだと知らなかった。
何度も途中でメグがどうにかなっちまうんじゃないかと恐怖を覚えた。
俺なんかができることは、突っ立ったまま、部屋の隅っこで必死にメグと子供の安全を祈るくらいだった。
だから無事に生まれてきたとき、本当に安堵した。
メグに、よく頑張ったな、そして、ありがとうと伝えたかった。
愛してると伝えたかった。
生まれてきた子をこの腕に抱いてみたかった。
でも、俺は断腸の思いで静かに立ち去ることを選んだ。
今の俺にはその資格はないんだと。
どうにか自分に言い聞かした。
それはメグの望んでいることじゃないんだ、と。
俺はもう一度全てをやり直す。
ゼロ以下からのやり直しだ。
メグがもし誰かほかの奴と幸せになったとしても。
遠くからしかメグたちを守ることができなくても。
なんでもいい。
メグが幸せであるなら、それでいいんだ。
俺は、メグと子供を遠くからでもいいから見守りたい。
俺はもう間違えない。
遅すぎるとか、手遅れだとかしったことか。
俺はもう一度、絶対にやり直す。
すぐに、来た道を戻り、売れるものはすべて売り払った。
幸運にも家の買い手もすぐに見つかったので、辞表をその次の日には出しに行った。
これだけ迷惑をかけたにもかかわらず、その上司は、メグの住む町にある騎士団に推薦状を書いてくれた。
そして、エリーさんに、今回世話になったお礼を伝えに行った。
般若のごとく恐ろしい顔で怒られた。
さっさと勝手にこの街に戻ってきたことを。
心配したといって、背中をバシバシ怒涛の如く小突かれた。
そこには、まだ俺の浮気でメグを悲しませた恨みが含まれていたんだと思う。
これからどうするかと聞かれたので、すべてを売っぱらった金を、子供との生活のためにメグに渡すことと、俺もメグの町に移って陰ながら支えるとつたえた。
すると、エリーさんは神妙な顔をして、一言、
「やっぱりあんたは馬鹿だねえ。でも、まあ、頑張るんだよ。」
といって、売れ残りらしきパンを、袋に詰めて俺にくれた。
この人がいなければ、メグは今頃どうなっていたんだろうかと思うとゾッとする。
メグを助けてくれただけでなく、最低な俺にまで手を貸してくれた。
どうあがいてもこの人には、一生かかっても頭が上がらないと思う。
出発の日の朝、がらんとしたメグとの思い出の詰まった家をゆっくり見て歩いた。
後悔ばかりが頭をもたげる。
あの日、メグと会ってお腹の子の振動を感じて、後悔と共に目が覚める思いがした。
俺の時間が止まったままだったのに対して、
メグとお腹の子の時間は前に進んでいたのだと。
この思い出の詰まった家で、家族三人で幸せになる道を断ったのは自分がやらかしてしまったせいだ。
もうこれは変えようがない。
それなら、メグたちの近くで、陰ながら支えていこうと心が決まった。
思い出の詰まった家の扉を開けて一歩外に踏み出し、二歩、三歩と進む。
もう見ることもないだろうその家に向け頭を下げて、また、ゆっくりと前へ歩き出した。
メグのいる街について、すぐに騎士団に入れてもらうことができた。
鍛錬に励み、仕事の合間を見ては、メグの様子を遠くから伺う日々を送る。
まるでストーカーみたいだなと苦笑する。
仲間の中でもメグのパン屋は結構人気で、周りの奴らはよく買いに行っている。
妊婦にもかかわらず、メグ目当てに店を訪れるやつがかなり多いようだ。
やっぱりあの性格とあの美貌は魅力的だろう。
やきもきするが、店主のサムとルーナがメグの周りにたかる男どもを追っ払っているようだ。
ある仕事が休みの日に、メグの様子をいつものように遠くから伺っていた。
すると、メグが急に蹲ってどう見ても様子がおかしい。
急いで駆けつけてみると、メグは既に破水していた。
焦燥でおかしくなりそうだった。
とにかくメグを抱きかかえて店に戻り、すぐに産婆が来た。
ルーナに何度はったおされても、どうしてもメグと産まれてくる子の
そばにいたかったので、どれだけボコボコにされてもメグの近くに居座った。
出産があんなに、命懸けだと知らなかった。
何度も途中でメグがどうにかなっちまうんじゃないかと恐怖を覚えた。
俺なんかができることは、突っ立ったまま、部屋の隅っこで必死にメグと子供の安全を祈るくらいだった。
だから無事に生まれてきたとき、本当に安堵した。
メグに、よく頑張ったな、そして、ありがとうと伝えたかった。
愛してると伝えたかった。
生まれてきた子をこの腕に抱いてみたかった。
でも、俺は断腸の思いで静かに立ち去ることを選んだ。
今の俺にはその資格はないんだと。
どうにか自分に言い聞かした。
それはメグの望んでいることじゃないんだ、と。
俺はもう一度全てをやり直す。
ゼロ以下からのやり直しだ。
メグがもし誰かほかの奴と幸せになったとしても。
遠くからしかメグたちを守ることができなくても。
なんでもいい。
メグが幸せであるなら、それでいいんだ。
俺は、メグと子供を遠くからでもいいから見守りたい。
俺はもう間違えない。
遅すぎるとか、手遅れだとかしったことか。
俺はもう一度、絶対にやり直す。
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