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泣いて怒ってくれる人
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「メグ?」
ふと私を呼ぶ声が聞こえ足を止める。
「おはようメグ。まだ今日の出勤には早い時間なのに、どうしたんだい?」
「。。。。。。。。」
「ああ、そうそう。今から、そこで卵を買って帰って、朝食を作ろうと思ってたんだけどね。
ちょうどたくさんできそうだから、よかったら食べていかないかい?」
「っふ。ううっ」
「さあ、いこう。」
「。。。。。。。ありがとうございます。エリーさん。」
それから二人エリーさんの家に歩いて行った。
エリーさんはこの家に併設されているパン屋を経営していて、私はそこで働かせてもらっている。
とても、優しく時には厳しく、愛情に溢れた人で、両親を早くに亡くした私にとっては、第二の母のような人だ。
もちろん私がそう勝手に思っているだけだけども。
温かなミルクをいただきながら、昨日から何も食べていなかったことを思い出した。
こんな時でも、お腹は空いてしまうものなのか、
作ってもらった朝食を全て頂いた。
自分はひどい人間だと、ふと思った。
授かったばかりのこの、小さな命のことを考えずに
絶望と悲しみに流されたからといって、
私という母体に気を遣うことを怠っていたのだから。
その後、今日、仕事を辞めてこの街を出くつもりであることと、それから、昨日の出来事をエリーさんに話した。
話している間の彼女の顔は、途中で憤怒の表情をしていたが、話が終わるまで静かに聞いてくれただけでなく、私に退職金としてまとまったお金をくれた。
多すぎると断ろうとしたが、懐妊祝い込みだから、とっときなと、豪快に笑い飛ばしてくれた。
ついでにと言いながら、紙とペンを取り出し、エリーさんの従妹が経営するというパン屋を紹介してくれた。
人手不足で大変らしいから、住み込みで、私を雇ってくれるように連絡を入れて頼んでおいてくれると言ってくれた。
行先の定まらない私にとっては、本当にありがたい話だ。
ありがとうございます。エリーさん。
いつまでもお元気で、といったら、いつものように豪快に笑い飛ばしているエリーさんの目からは涙が溢れていた。
私のために、泣いて怒ってくれる人がいる。
そんな人のためにも前を向いて行こうと思えた。
そうしてまた、曇った寒空の下、一歩前に踏み出した。
ふと私を呼ぶ声が聞こえ足を止める。
「おはようメグ。まだ今日の出勤には早い時間なのに、どうしたんだい?」
「。。。。。。。。」
「ああ、そうそう。今から、そこで卵を買って帰って、朝食を作ろうと思ってたんだけどね。
ちょうどたくさんできそうだから、よかったら食べていかないかい?」
「っふ。ううっ」
「さあ、いこう。」
「。。。。。。。ありがとうございます。エリーさん。」
それから二人エリーさんの家に歩いて行った。
エリーさんはこの家に併設されているパン屋を経営していて、私はそこで働かせてもらっている。
とても、優しく時には厳しく、愛情に溢れた人で、両親を早くに亡くした私にとっては、第二の母のような人だ。
もちろん私がそう勝手に思っているだけだけども。
温かなミルクをいただきながら、昨日から何も食べていなかったことを思い出した。
こんな時でも、お腹は空いてしまうものなのか、
作ってもらった朝食を全て頂いた。
自分はひどい人間だと、ふと思った。
授かったばかりのこの、小さな命のことを考えずに
絶望と悲しみに流されたからといって、
私という母体に気を遣うことを怠っていたのだから。
その後、今日、仕事を辞めてこの街を出くつもりであることと、それから、昨日の出来事をエリーさんに話した。
話している間の彼女の顔は、途中で憤怒の表情をしていたが、話が終わるまで静かに聞いてくれただけでなく、私に退職金としてまとまったお金をくれた。
多すぎると断ろうとしたが、懐妊祝い込みだから、とっときなと、豪快に笑い飛ばしてくれた。
ついでにと言いながら、紙とペンを取り出し、エリーさんの従妹が経営するというパン屋を紹介してくれた。
人手不足で大変らしいから、住み込みで、私を雇ってくれるように連絡を入れて頼んでおいてくれると言ってくれた。
行先の定まらない私にとっては、本当にありがたい話だ。
ありがとうございます。エリーさん。
いつまでもお元気で、といったら、いつものように豪快に笑い飛ばしているエリーさんの目からは涙が溢れていた。
私のために、泣いて怒ってくれる人がいる。
そんな人のためにも前を向いて行こうと思えた。
そうしてまた、曇った寒空の下、一歩前に踏み出した。
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