愛しの婚約者は王女様に付きっきりですので、私は私で好きにさせてもらいます。

梅雨の人

文字の大きさ
上 下
15 / 27

二人で過ごす休日

しおりを挟む
そして週末、マーカス様と一緒に買い物へ出かけた。

ハンカチを見に行くついでにと、途中で色々な店に立ち寄った。

いつもお世話になっているので、こっそりとマーカス様に似合いそうなカフスを購入した。
気に入ってくれるといいのだけれども。

立ち寄ったどの店もとても魅力的なデザインの小物が多くて、ついつい買いすぎてしまった。

「ローズマリー嬢、これはどうかな?」

と私の意見を尋ねてくれるマーカス様と一緒に吟味していく時間はとても新鮮だった。
マーカス様と一緒に選んだハンカチは、綺麗な翡翠色のハンカチで薔薇の花の刺繡がすみに綺麗に入れられていた。

私が大切に使わせていただきますとお礼を言ったら、マーカス様は大したものではないから気にしないでと少し顔を赤くして伝えてきた。


その後、最近話題になっているというカフェで軽いランチを頂き店を出たところで、大人びた顔をした赤毛の美しい女の子に出くわした。

「マーカス様、ごきげんよう。」
「ミリアリア嬢か。お久しぶりです。」

そう言って、華のような笑顔でマーカス様に話しかけてきたミリアリア様は私がそこにいないかのように振る舞っていた。

一歩下がって様子をうかがっていたが、ミリアリア様が一方的に話すばかりでマーカス様はただミリアリア様の話が終わるのを待っているといった感じだった。

マーカス様は私のことが気になっていたようで、どうにか会話を終わらせようとしているのが伝わってきた。

チラチラとマーカス様が私に気づかわしげな目線を送ってくるので、どうか気にせずという意味でほほ笑んでおいたが、その瞬間ミリアリア様の私を射貫くような目線とかち合ってしまった。

その後ミリアリア様も私たちに同行したいようなことを言っていたが、そこはマーカス様がやんわりと断りを入れてその場は収まったようだった。

待たせてしまってごめんねとマーカス様が謝ってきた姿が、シュンとした子犬のように見えてしまったのは私の秘密だ。

マーカス様は、せっかくの楽しい時間が…とその後何やらぶつぶつおっしゃっていた。

その後二人で馬車に戻り、周辺の観光地の一つである有名な植物園に連れて行ってもらった。

そこには色とりどりの花々が咲き誇り、湖の周辺には水鳥がその羽を休める様子がうかがえた。
静かで落ち着いていて本当に素敵な場所に連れてきてもらえたことが嬉しかった。

ボートを物珍しく眺めていると、マーカス様がボートに乗ってみないかと誘ってくれた。
私にとっては初めての経験だったため、緊張してボートに足を踏み入れた際に体がぐらついてしまった。
でも先にボートに乗って手を差し出してくれていたマーカス様が、すかさず私を抱き留めてくれた。

その際にマーカス様のその大きくて引き締まった体と熱を感じてしまって、何ともいたたまれない気持ちになってしまった。

マーカス様はもう大丈夫だという私をしばらく腕に閉じ込めたまま離してはくれなかった。

しばらくして、本当にもう大丈夫かい?とマーカス様が聞いてきたとき私は頷くことしかできなくなっていた。

対面でボートに座り、ボートを漕いでくれるマーカス様の視線をずっと感じた。

そして、湖の反対岸のちょうど木陰があるところでボートをとめた私たちは、しばらく水面に映るきれいな景色をただ静かに眺めていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました

さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。 王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ 頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。 ゆるい設定です

【完結】婚約者様、王女様を優先するならお好きにどうぞ

曽根原ツタ
恋愛
オーガスタの婚約者が王女のことを優先するようになったのは――彼女の近衛騎士になってからだった。 婚約者はオーガスタとの約束を、王女の護衛を口実に何度も破った。 美しい王女に付きっきりな彼への不信感が募っていく中、とある夜会で逢瀬を交わすふたりを目撃したことで、遂に婚約解消を決意する。 そして、その夜会でたまたま王子に会った瞬間、前世の記憶を思い出し……? ――病弱な王女を優先したいなら、好きにすればいいですよ。私も好きにしますので。

【完結】王太子殿下が幼馴染を溺愛するので、あえて応援することにしました。

かとるり
恋愛
王太子のオースティンが愛するのは婚約者のティファニーではなく、幼馴染のリアンだった。 ティファニーは何度も傷つき、一つの結論に達する。 二人が結ばれるよう、あえて応援する、と。

婚約者から婚約破棄をされて喜んだのに、どうも様子がおかしい

恋愛
婚約者には初恋の人がいる。 王太子リエトの婚約者ベルティーナ=アンナローロ公爵令嬢は、呼び出された先で婚約破棄を告げられた。婚約者の隣には、家族や婚約者が常に可愛いと口にする従妹がいて。次の婚約者は従妹になると。 待ちに待った婚約破棄を喜んでいると思われる訳にもいかず、冷静に、でも笑顔は忘れずに二人の幸せを願ってあっさりと従者と部屋を出た。 婚約破棄をされた件で父に勘当されるか、何処かの貴族の後妻にされるか待っていても一向に婚約破棄の話をされない。また、婚約破棄をしたのに何故か王太子から呼び出しの声が掛かる。 従者を連れてさっさと家を出たいべルティーナと従者のせいで拗らせまくったリエトの話。 ※なろうさんにも公開しています。 ※短編→長編に変更しました(2023.7.19)

【完結】彼の瞳に映るのは  

たろ
恋愛
 今夜も彼はわたしをエスコートして夜会へと参加する。  優しく見つめる彼の瞳にはわたしが映っているのに、何故かわたしの心は何も感じない。  そしてファーストダンスを踊ると彼はそっとわたしのそばからいなくなる。  わたしはまた一人で佇む。彼は守るべき存在の元へと行ってしまう。 ★ 短編から長編へ変更しました。

別に要りませんけど?

ユウキ
恋愛
「お前を愛することは無い!」 そう言ったのは、今日結婚して私の夫となったネイサンだ。夫婦の寝室、これから初夜をという時に投げつけられた言葉に、私は素直に返事をした。 「……別に要りませんけど?」 ※Rに触れる様な部分は有りませんが、情事を指す言葉が出ますので念のため。 ※なろうでも掲載中

拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら

みおな
恋愛
 子爵令嬢のクロエ・ルーベンスは今日も《おひとり様》で夜会に参加する。 公爵家を継ぐ予定の婚約者がいながら、だ。  クロエの婚約者、クライヴ・コンラッド公爵令息は、婚約が決まった時から一度も婚約者としての義務を果たしていない。  クライヴは、ずっと義妹のファンティーヌを優先するからだ。 「ファンティーヌが熱を出したから、出かけられない」 「ファンティーヌが行きたいと言っているから、エスコートは出来ない」 「ファンティーヌが」 「ファンティーヌが」  だからクロエは、学園卒業式のパーティーで顔を合わせたクライヴに、にっこりと微笑んで伝える。 「私のことはお気になさらず」

【完結】元婚約者の次の婚約者は私の妹だそうです。ところでご存知ないでしょうが、妹は貴方の妹でもありますよ。

葉桜鹿乃
恋愛
あらぬ罪を着せられ婚約破棄を言い渡されたジュリア・スカーレット伯爵令嬢は、ある秘密を抱えていた。 それは、元婚約者モーガンが次の婚約者に望んだジュリアの妹マリアが、モーガンの実の妹でもある、という秘密だ。 本当ならば墓まで持っていくつもりだったが、ジュリアを婚約者にとモーガンの親友である第一王子フィリップが望んでくれた事で、ジュリアは真実を突きつける事を決める。 ※エピローグにてひとまず完結ですが、疑問点があがっていた所や、具体的な姉妹に対する差など、サクサク読んでもらうのに削った所を(現在他作を書いているので不定期で)番外編で更新しますので、暫く連載中のままとさせていただきます。よろしくお願いします。 番外編に手が回らないため、一旦完結と致します。 (2021/02/07 02:00) 小説家になろう・カクヨムでも別名義にて連載を始めました。 恋愛及び全体1位ありがとうございます! ※感想の取り扱いについては近況ボードを参照ください。(10/27追記)

処理中です...