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天使の到着:マーカス視点
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オーランカ王国での留学を終え、つい最近帰国した。
残念なことに、留学の終盤ではローズマリー嬢が学園に姿を見せることはなかった。
それまで毎日のようにローズマリー嬢との時間を過ごしていた僕にはどうしてもその状況に耐えることはできなくて、用事をわざと作ってはせっせとローズマリー嬢の屋敷へ通った。
あんなに傷ついたローズマリー嬢を目の当たりにすると例の元婚約者の男には腹が立つが、これで僕にもチャンスが巡ってきたのだと思うと感謝するしかない。
僕にとってローズマリー嬢は天使以外の何物でもなく、ローズマリー嬢の父であるデュトロ―侯爵にも許可を頂いたので、これからゆっくりとじっくりと彼女へ僕の気持ちを伝えて行くつもりだ。
家族にもそのことを打ち明けた。
これまで婚約者を決めることには積極的になれず、のらりくらりと縁談を躱し続けていた。
いつかは決めなければならないだろうと、貴族として生まれたからには理解はしていたが。
だからそんな僕がいきなりそんな話を打ち明けたとたんに、兄も両親も驚きと同時に喜びを爆発させていた。
まだ、ローズマリー嬢に僕の気持ちを伝えていないしこれからだというのに。
そんなだから、デュトロ―侯爵からローズマリー嬢の留学の許可が出る前から、すでに彼女の好みをメリッサから聞き出した母によって、部屋の準備など手配は滞りなく行われていた。
ついに、ローズマリー嬢がこちらの国に留学のため到着する日になった。
僕は当然、港にローズマリー嬢を迎えに行った。
看板から歩いてこちらへ向かってくる笑顔の彼女は死ぬほど美しかった。
たくさんの人がいるのにまるで彼女だけが特別だ。
どこにいても、彼女を見つける自信がある。
どうしてこんなにも彼女は僕にとって特別なんだろう。
これまで彼女が傷ついてきた分、僕がこれから彼女を思いっきり甘やかして、たくさんの幸せな時間を過ごせるように全力を尽くしたい。
そして願わくばその幸せな彼女の傍に僕が寄り添うことを許してほしいと思ってしまう。
屋敷へ馬車で戻る途中、こちらの国の景色を堪能しているのが伺えた。
目をキラキラさせて、通り過ぎる景色を眺めている彼女を見ているだけで、僕の鼓動はあり得ないくらい速まってしまった。
だから我に返った彼女が頬を赤くしてしまったのを見てしまった僕はそれだけで固まってしまった。
それなのに、そんな僕に追い打ちをかけるように、彼女が言ったんだ。
はしたなくって申し訳ありません、って。
こちらこそこんなに動揺して申し訳なかったので、何か気の利いたことを伝えたかった。
でも、情けない僕は、そんなこと気にしなくて大丈夫だよ、というのが一杯一杯になってしまった。
彼女には何をやってもかなわないのだろうな。惨敗だ。
屋敷に到着しすると、家族に加え使用人一同勢ぞろいでローズマリー嬢を迎えてくれたのには驚いた。
生暖かい視線が皆から送られてきているのを感じた。
夕食の後、母に誘われてローズマリー嬢とお茶をしたあと、彼女の部屋までエスコートした。
別れ際に彼女が僕に今回のことで感謝を告げてきた。
その時の彼女がまた本当に眩しくて、僕はその場で固まってしまった。
僕にしてみたら、彼女がここに留学してくれたことが本当に嬉しくて、こちらの方が感謝したいくらいだ。
そして、執事のロニーのわざとらしい咳払いで我に返った僕は、その状況にいたたまれなくなってその場を後にした。
同じ屋敷にローズマリー嬢がこれからいるのだと思うと、そわそわとしてどうにも落ち着くことが出来ない。
気分を少し落ち着かせるためにも、夜の庭を歩いてみることにした。
頭の中はローズマリー嬢のことで溢れている。
自分で言っては何だが、僕は女性からの熱視線に慣れてしまうくらいには人気があるようだ。
でも、これまでに一度も女の子に心を動かされたことはなかった。
だから、まさか自分が恋に溺れてこんな情けない男になってしまうなんて、本当に全く思ってもみないことだった。
こんなかっこ悪い僕のことをローズマリー嬢が受け入れてくれるといいんだが。
今晩、ローズマリー嬢の湯船に綺麗な花々を浮かべてもらう手配をした。
喜んでくれているだろうか。
長旅の疲れが少しでも癒されただろうか。
心地よい風と花々の匂いに囲まれて、ようやく気分が落ち着いたと思った時だった。
ローズマリー嬢の部屋の方向へ視線を向けると、真っ白の夜着を纏った彼女が夜風でその綺麗な髪を揺らめかせて夜空を眺めていた。
花々に囲まれた天使がまるで夜空に浮かんでいるような信じられないくらい美しい光景だった。
しばらくそこに立ち尽くした僕は、彼女がどうか今晩幸せな夢を見られることを願いその場を後にした。
残念なことに、留学の終盤ではローズマリー嬢が学園に姿を見せることはなかった。
それまで毎日のようにローズマリー嬢との時間を過ごしていた僕にはどうしてもその状況に耐えることはできなくて、用事をわざと作ってはせっせとローズマリー嬢の屋敷へ通った。
あんなに傷ついたローズマリー嬢を目の当たりにすると例の元婚約者の男には腹が立つが、これで僕にもチャンスが巡ってきたのだと思うと感謝するしかない。
僕にとってローズマリー嬢は天使以外の何物でもなく、ローズマリー嬢の父であるデュトロ―侯爵にも許可を頂いたので、これからゆっくりとじっくりと彼女へ僕の気持ちを伝えて行くつもりだ。
家族にもそのことを打ち明けた。
これまで婚約者を決めることには積極的になれず、のらりくらりと縁談を躱し続けていた。
いつかは決めなければならないだろうと、貴族として生まれたからには理解はしていたが。
だからそんな僕がいきなりそんな話を打ち明けたとたんに、兄も両親も驚きと同時に喜びを爆発させていた。
まだ、ローズマリー嬢に僕の気持ちを伝えていないしこれからだというのに。
そんなだから、デュトロ―侯爵からローズマリー嬢の留学の許可が出る前から、すでに彼女の好みをメリッサから聞き出した母によって、部屋の準備など手配は滞りなく行われていた。
ついに、ローズマリー嬢がこちらの国に留学のため到着する日になった。
僕は当然、港にローズマリー嬢を迎えに行った。
看板から歩いてこちらへ向かってくる笑顔の彼女は死ぬほど美しかった。
たくさんの人がいるのにまるで彼女だけが特別だ。
どこにいても、彼女を見つける自信がある。
どうしてこんなにも彼女は僕にとって特別なんだろう。
これまで彼女が傷ついてきた分、僕がこれから彼女を思いっきり甘やかして、たくさんの幸せな時間を過ごせるように全力を尽くしたい。
そして願わくばその幸せな彼女の傍に僕が寄り添うことを許してほしいと思ってしまう。
屋敷へ馬車で戻る途中、こちらの国の景色を堪能しているのが伺えた。
目をキラキラさせて、通り過ぎる景色を眺めている彼女を見ているだけで、僕の鼓動はあり得ないくらい速まってしまった。
だから我に返った彼女が頬を赤くしてしまったのを見てしまった僕はそれだけで固まってしまった。
それなのに、そんな僕に追い打ちをかけるように、彼女が言ったんだ。
はしたなくって申し訳ありません、って。
こちらこそこんなに動揺して申し訳なかったので、何か気の利いたことを伝えたかった。
でも、情けない僕は、そんなこと気にしなくて大丈夫だよ、というのが一杯一杯になってしまった。
彼女には何をやってもかなわないのだろうな。惨敗だ。
屋敷に到着しすると、家族に加え使用人一同勢ぞろいでローズマリー嬢を迎えてくれたのには驚いた。
生暖かい視線が皆から送られてきているのを感じた。
夕食の後、母に誘われてローズマリー嬢とお茶をしたあと、彼女の部屋までエスコートした。
別れ際に彼女が僕に今回のことで感謝を告げてきた。
その時の彼女がまた本当に眩しくて、僕はその場で固まってしまった。
僕にしてみたら、彼女がここに留学してくれたことが本当に嬉しくて、こちらの方が感謝したいくらいだ。
そして、執事のロニーのわざとらしい咳払いで我に返った僕は、その状況にいたたまれなくなってその場を後にした。
同じ屋敷にローズマリー嬢がこれからいるのだと思うと、そわそわとしてどうにも落ち着くことが出来ない。
気分を少し落ち着かせるためにも、夜の庭を歩いてみることにした。
頭の中はローズマリー嬢のことで溢れている。
自分で言っては何だが、僕は女性からの熱視線に慣れてしまうくらいには人気があるようだ。
でも、これまでに一度も女の子に心を動かされたことはなかった。
だから、まさか自分が恋に溺れてこんな情けない男になってしまうなんて、本当に全く思ってもみないことだった。
こんなかっこ悪い僕のことをローズマリー嬢が受け入れてくれるといいんだが。
今晩、ローズマリー嬢の湯船に綺麗な花々を浮かべてもらう手配をした。
喜んでくれているだろうか。
長旅の疲れが少しでも癒されただろうか。
心地よい風と花々の匂いに囲まれて、ようやく気分が落ち着いたと思った時だった。
ローズマリー嬢の部屋の方向へ視線を向けると、真っ白の夜着を纏った彼女が夜風でその綺麗な髪を揺らめかせて夜空を眺めていた。
花々に囲まれた天使がまるで夜空に浮かんでいるような信じられないくらい美しい光景だった。
しばらくそこに立ち尽くした僕は、彼女がどうか今晩幸せな夢を見られることを願いその場を後にした。
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