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おぞましい事実
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イザック様に留学のお誘いを受けたその日の夕食の席で、お父様に留学をさせてくれないかとお願いしてみた。
お父様も、最近のイザック様と私の様子からして互いの交流がおろそかになっていることを気にしている様子だった。
だが、それもカトレア―ナ王女殿下のお世話係を仰せつかっている為であり、致し方ないだろうというのがお父様の考えでもあった。
本来、責任感の強いイザックをお父様も信頼しているのだろう。
イザックに留学のことを相談して、もしも彼が私の留学に賛成してくれるのならば、せっかくの機会なので行ってもよいだろうと許可を得た。
メリッサの叔母様にお世話になる上に、現在留学生としていらしているマーカス様が傍についていれば安心であろうというのが父の見解であった。
週が明け、早速マーカス様にそのことを伝えたらとても喜んでくれた。
問題はどうやってイザックに私の留学の件を相談するかだが、忙しそうにしているしている彼と相談する時間を設けるのは至難の業だ。
ここしばらく休憩時間になるとイザックは王女殿下のお供で王族専用の休憩室にいることが多いと耳にした。
だから、学園でイザックに会って留学の話を早く相談したかった私は、学園長にお願いして特別に王族専用の休憩室にアクセスする許可を頂くことにした。
学園長に事情を説明し許可を頂いてから、その休憩室へと足を運んだ。
イザックがそこにいることを願って。
王族専用の休憩室へは、そこへ続く通路手前にある厳重な扉を抜けて進んでいかなくてはならない。
静寂な空間で、私の歩く音だけがこだまする。
少し歩いて階段を上るとその休憩室の扉が目に入った。
今更ながらに、私ごときがこのような場所に来てよかったのだろうかと一抹の不安を覚える。
学園長に許可を頂いたと言っても、怖気づいてしまった。
とにかく気を取り直そうと一呼吸してから、ノックをしようとしたその時…。
女性のすすり泣くような、苦しんでいるような声と男性の荒い息遣いが扉越しに聞こえてきた。
もしかして、王女殿下に何か起こっているのではないかと不安になり、震える手でドアノブを回し中の様子を覗くことにした。
わずかに開いたドアの隙間から目に入ってきた光景はローズマリーにとって衝撃的で残酷な光景だった。
すぐに踵を返し、教室に戻ったローズマリーの顔色が悪いのを心配したマーカスによって、屋敷まで送りとどけられることになった。
マーカスに屋敷まで送り届けてもらった日から高熱が二日間続いた。
しかし、寝ても覚めても、王族控室で見てしまった光景が頭から離れず気持ちはどんどんふさぎ込んでいった。
息を乱し、快楽におぼれていたイザックとカトレア―ナ王女の獣の交わりのような光景が、その事実がローズマリーの心を深くえぐった。
以前イザックとの関係に悩んだり落ち込んだりした時、メリッサたちの助言もあって、自分を大事にしよう、イザックに相手にされてない間は自分のやりたいことをしようと決めたのを思い出す。
今思えば、あの悩んだりした時間も無駄だったのではないかと考えてしまう。
結局イザックににとってはカトレア―ナ王女のことで頭がいっぱいで、私のことなんてどうでもよかったのだろう。
熱が引いてから三日目、ローズマリーは父にイザックとの婚約解消の手続きを願い出た。
愛する娘に婚約解消の手続きを願い出られたローズマリーの父は、少しの間考えたあとその理由を問うた。
理由を問われる覚悟はしていたものの、本当の理由を父に伝えることをローズマリーは躊躇した。
ただ、責任感の強いイザックを気に入っていた父にしてみたら明確な理由もなしに婚約解消を行ってくれないだろうという事も分かっていた。
勘のいい父のことだ。
私の嘘など一発で見破る事だろう。
父に、婚約者に疎かにされた私のことをどう思われるだろうかという不安がじわじわと襲ってくる。
理由を聞かれてうろたえている私を落ち着かせるように、背中をポンポンっと優しくさすってくれる大きな手に涙が溢れてきた。
まだ小さな頃、泣いていたり落ち込んだりしているときに、良く父がこうやってくれたのを思い出す。
そこからは堰を切ったように、これまでの事、そして、王族控室で見てしまったあのおぞましい出来事を父に伝えた。
最後まで黙って私の言うことを聞いてくれた父は、ずっと私を抱きしめてくれた。
そして泣き疲れて横になった私に、後のことは任せるようにと言い残し部屋を出て行った。
お父様も、最近のイザック様と私の様子からして互いの交流がおろそかになっていることを気にしている様子だった。
だが、それもカトレア―ナ王女殿下のお世話係を仰せつかっている為であり、致し方ないだろうというのがお父様の考えでもあった。
本来、責任感の強いイザックをお父様も信頼しているのだろう。
イザックに留学のことを相談して、もしも彼が私の留学に賛成してくれるのならば、せっかくの機会なので行ってもよいだろうと許可を得た。
メリッサの叔母様にお世話になる上に、現在留学生としていらしているマーカス様が傍についていれば安心であろうというのが父の見解であった。
週が明け、早速マーカス様にそのことを伝えたらとても喜んでくれた。
問題はどうやってイザックに私の留学の件を相談するかだが、忙しそうにしているしている彼と相談する時間を設けるのは至難の業だ。
ここしばらく休憩時間になるとイザックは王女殿下のお供で王族専用の休憩室にいることが多いと耳にした。
だから、学園でイザックに会って留学の話を早く相談したかった私は、学園長にお願いして特別に王族専用の休憩室にアクセスする許可を頂くことにした。
学園長に事情を説明し許可を頂いてから、その休憩室へと足を運んだ。
イザックがそこにいることを願って。
王族専用の休憩室へは、そこへ続く通路手前にある厳重な扉を抜けて進んでいかなくてはならない。
静寂な空間で、私の歩く音だけがこだまする。
少し歩いて階段を上るとその休憩室の扉が目に入った。
今更ながらに、私ごときがこのような場所に来てよかったのだろうかと一抹の不安を覚える。
学園長に許可を頂いたと言っても、怖気づいてしまった。
とにかく気を取り直そうと一呼吸してから、ノックをしようとしたその時…。
女性のすすり泣くような、苦しんでいるような声と男性の荒い息遣いが扉越しに聞こえてきた。
もしかして、王女殿下に何か起こっているのではないかと不安になり、震える手でドアノブを回し中の様子を覗くことにした。
わずかに開いたドアの隙間から目に入ってきた光景はローズマリーにとって衝撃的で残酷な光景だった。
すぐに踵を返し、教室に戻ったローズマリーの顔色が悪いのを心配したマーカスによって、屋敷まで送りとどけられることになった。
マーカスに屋敷まで送り届けてもらった日から高熱が二日間続いた。
しかし、寝ても覚めても、王族控室で見てしまった光景が頭から離れず気持ちはどんどんふさぎ込んでいった。
息を乱し、快楽におぼれていたイザックとカトレア―ナ王女の獣の交わりのような光景が、その事実がローズマリーの心を深くえぐった。
以前イザックとの関係に悩んだり落ち込んだりした時、メリッサたちの助言もあって、自分を大事にしよう、イザックに相手にされてない間は自分のやりたいことをしようと決めたのを思い出す。
今思えば、あの悩んだりした時間も無駄だったのではないかと考えてしまう。
結局イザックににとってはカトレア―ナ王女のことで頭がいっぱいで、私のことなんてどうでもよかったのだろう。
熱が引いてから三日目、ローズマリーは父にイザックとの婚約解消の手続きを願い出た。
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理由を問われる覚悟はしていたものの、本当の理由を父に伝えることをローズマリーは躊躇した。
ただ、責任感の強いイザックを気に入っていた父にしてみたら明確な理由もなしに婚約解消を行ってくれないだろうという事も分かっていた。
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理由を聞かれてうろたえている私を落ち着かせるように、背中をポンポンっと優しくさすってくれる大きな手に涙が溢れてきた。
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そこからは堰を切ったように、これまでの事、そして、王族控室で見てしまったあのおぞましい出来事を父に伝えた。
最後まで黙って私の言うことを聞いてくれた父は、ずっと私を抱きしめてくれた。
そして泣き疲れて横になった私に、後のことは任せるようにと言い残し部屋を出て行った。
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