愛しの婚約者は王女様に付きっきりですので、私は私で好きにさせてもらいます。

梅雨の人

文字の大きさ
上 下
4 / 27

有意義な時間

しおりを挟む
我が国の文化に触れるため、メリッサの従兄が私たちの学園に通うことになった。

隣国の、シューゼント王国から来たその方は、私たちと同じく侯爵家の次男でマーカス・デニロン侯爵子息様だ。
サラサラの銀髪を後ろでひとくくりにした方で、翡翠色の透き通る瞳がとても印象的だ。体躯も締まっていて女性からの人気が高そうな方だなー、というのが私の第一印象だ。
瞳の色と同じ色のカフスを右耳につけているのも相まってとても華やかな感じの方だ。

事前にメリッサからマーカス様のことは聞いていたし、私たちは同じクラスになったこともあって、マーカス様とはすぐに打ち解けることができた。
最近では、メリッサとキングストン様、マーカス様と私の四人で行動することが多くなってきた。

ただ、私が外で読書を楽しみながらランチを楽しむのは相変わらずだったのだが、すぐに、マーカス様も読書が大好きだということで、私とランチの時間を共に過ごすようになった。

ランチを食べながらすごす、マーカス様との穏やかで楽しい時間が好きだ。
お互いに読書が好きなので、ただ静かにお互いが好きな本を読んで過ごしたり、お互いの国のおすすめの本を紹介しあった。

話の流れで、最近は学園が終わってからよく一人でカフェに行ったり学園の近くの大きな図書館に寄ったりすることを話したら、マーカス様はびっくりされていた。
私のような貴族女性が一人でカフェや図書館に行くというのは、と真顔で心配されてしまった。

ただし、マーカス様もこちらの国の図書館には非常に興味があったらしく、ここだけの話、甘いものには目がないという事で、ここ最近、放課後も私たちはよく時間を共に過ごすようになった。

甘いものが好きな男性って、なんだかかわいいと思ってしまったのは心にとどめておいても、カフェでいつも美味しそうに甘いものを食べるマーカス様と時間を過ごすのはそんなに悪くない気がした。

図書館でこの国のおすすめの本を紹介してはそれを借りてカフェに立ち寄ってから、マーカス様にも向こうでおすすめの作家や本を語ってくれた。
文化も似ているようだが向こう独自のもの多いらしく、互いの文化の違いを語る時間は本当に有意義なものだった。

ある週末、メリッサに誘われて、キングストン様とマーカス様と私の四人で王都を王都を馬車で回ることにした。
四人での週末を過ごしたのは初めてだったが、話が弾み、紹介する場所場所でマーカス様が感嘆の息を漏らすので、私たちはもっといろいろ見てもらおうと張り切った。

その日立ち寄ったこの国伝統の料理を提供する店でのランチも格別で本当に楽しい時間を過ごすことが出来た。

帰り際に、私が本当に楽しい時間をありがとうと伝えたら、マーカス様が、
「それはこちらのセリフだよ。」
と言って、顔を手で覆ってうつむいたのでどうしたんだろうと思ったら、メリッサとキングストン様は微妙な顔になっていた。

とにかく、久々に誰かと休日を楽しく過ごせたのは私にとって非常に有意義な時間となった。

もちろん、マーカス様はこちらに文化を学びに来たわけで常に私やメリッサたち以外にも交流を頑張って広げているようだ。

王女様もマーカス様と似たような感じでこちらの文化を学ぼうとしているのだろう。
そして、その王女様をお世話するイザックも私のような気持ちで王女様と有意義な時間を過ごしているのだろうと何となくだが私の中で向こうの気持ちが分かったような気がした。

とにかく、マーカス様のように自分が興味がある事を前向きに楽しく学ぼうとしている姿はとてもまぶしく映り、羨ましくも感じられた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約者から婚約破棄をされて喜んだのに、どうも様子がおかしい

恋愛
婚約者には初恋の人がいる。 王太子リエトの婚約者ベルティーナ=アンナローロ公爵令嬢は、呼び出された先で婚約破棄を告げられた。婚約者の隣には、家族や婚約者が常に可愛いと口にする従妹がいて。次の婚約者は従妹になると。 待ちに待った婚約破棄を喜んでいると思われる訳にもいかず、冷静に、でも笑顔は忘れずに二人の幸せを願ってあっさりと従者と部屋を出た。 婚約破棄をされた件で父に勘当されるか、何処かの貴族の後妻にされるか待っていても一向に婚約破棄の話をされない。また、婚約破棄をしたのに何故か王太子から呼び出しの声が掛かる。 従者を連れてさっさと家を出たいべルティーナと従者のせいで拗らせまくったリエトの話。 ※なろうさんにも公開しています。 ※短編→長編に変更しました(2023.7.19)

別に要りませんけど?

ユウキ
恋愛
「お前を愛することは無い!」 そう言ったのは、今日結婚して私の夫となったネイサンだ。夫婦の寝室、これから初夜をという時に投げつけられた言葉に、私は素直に返事をした。 「……別に要りませんけど?」 ※Rに触れる様な部分は有りませんが、情事を指す言葉が出ますので念のため。 ※なろうでも掲載中

どうやら婚約者が私と婚約したくなかったようなので婚約解消させて頂きます。後、うちを金蔓にしようとした事はゆるしません

しげむろ ゆうき
恋愛
 ある日、婚約者アルバン様が私の事を悪く言ってる場面に遭遇してしまい、ショックで落ち込んでしまう。  しかもアルバン様が悪口を言っている時に側にいたのは、美しき銀狼、又は冷酷な牙とあだ名が付けられ恐れられている、この国の第三王子ランドール・ウルフイット様だったのだ。  だから、問い詰めようにもきっと関わってくるであろう第三王子が怖くて、私は誰にも相談できずにいたのだがなぜか第三王子が……。 ○○sideあり 全20話

裏切られた令嬢は死を選んだ。そして……

希猫 ゆうみ
恋愛
スチュアート伯爵家の令嬢レーラは裏切られた。 幼馴染に婚約者を奪われたのだ。 レーラの17才の誕生日に、二人はキスをして、そして言った。 「一度きりの人生だから、本当に愛せる人と結婚するよ」 「ごめんねレーラ。ロバートを愛してるの」 誕生日に婚約破棄されたレーラは絶望し、生きる事を諦めてしまう。 けれど死にきれず、再び目覚めた時、新しい人生が幕を開けた。 レーラに許しを請い、縋る裏切り者たち。 心を鎖し生きて行かざるを得ないレーラの前に、一人の求婚者が現れる。 強く気高く冷酷に。 裏切り者たちが落ちぶれていく様を眺めながら、レーラは愛と幸せを手に入れていく。 ☆完結しました。ありがとうございました!☆ (ホットランキング8位ありがとうございます!(9/10、19:30現在)) (ホットランキング1位~9位~2位ありがとうございます!(9/6~9)) (ホットランキング1位!?ありがとうございます!!(9/5、13:20現在)) (ホットランキング9位ありがとうございます!(9/4、18:30現在))

幼い頃に魔境に捨てたくせに、今更戻れと言われて戻るはずがないでしょ!

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 ニルラル公爵の令嬢カチュアは、僅か3才の時に大魔境に捨てられた。ニルラル公爵を誑かした悪女、ビエンナの仕業だった。普通なら獣に喰われて死にはずなのだが、カチュアは大陸一の強国ミルバル皇国の次期聖女で、聖獣に護られ生きていた。一方の皇国では、次期聖女を見つけることができず、当代の聖女も役目の負担で病み衰え、次期聖女発見に皇国の存亡がかかっていた。

溺愛されていると信じておりました──が。もう、どうでもいいです。

ふまさ
恋愛
 いつものように屋敷まで迎えにきてくれた、幼馴染みであり、婚約者でもある伯爵令息──ミックに、フィオナが微笑む。 「おはよう、ミック。毎朝迎えに来なくても、学園ですぐに会えるのに」 「駄目だよ。もし学園に向かう途中できみに何かあったら、ぼくは悔やんでも悔やみきれない。傍にいれば、いつでも守ってあげられるからね」  ミックがフィオナを抱き締める。それはそれは、愛おしそうに。その様子に、フィオナの両親が見守るように穏やかに笑う。  ──対して。  傍に控える使用人たちに、笑顔はなかった。

王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました

さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。 王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ 頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。 ゆるい設定です

【完結】元婚約者の次の婚約者は私の妹だそうです。ところでご存知ないでしょうが、妹は貴方の妹でもありますよ。

葉桜鹿乃
恋愛
あらぬ罪を着せられ婚約破棄を言い渡されたジュリア・スカーレット伯爵令嬢は、ある秘密を抱えていた。 それは、元婚約者モーガンが次の婚約者に望んだジュリアの妹マリアが、モーガンの実の妹でもある、という秘密だ。 本当ならば墓まで持っていくつもりだったが、ジュリアを婚約者にとモーガンの親友である第一王子フィリップが望んでくれた事で、ジュリアは真実を突きつける事を決める。 ※エピローグにてひとまず完結ですが、疑問点があがっていた所や、具体的な姉妹に対する差など、サクサク読んでもらうのに削った所を(現在他作を書いているので不定期で)番外編で更新しますので、暫く連載中のままとさせていただきます。よろしくお願いします。 番外編に手が回らないため、一旦完結と致します。 (2021/02/07 02:00) 小説家になろう・カクヨムでも別名義にて連載を始めました。 恋愛及び全体1位ありがとうございます! ※感想の取り扱いについては近況ボードを参照ください。(10/27追記)

処理中です...