愛しの婚約者は王女様に付きっきりですので、私は私で好きにさせてもらいます。

梅雨の人

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留学生

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「おはようございます、お嬢様。よくお眠りになられていましたね。」
「おはよう、エル。ええ、久しぶりよ、こんなによく眠れたのは。今日から朝はイザック様には先に行ってもらおうかと思うの。もう少し朝はゆっくり準備したいしね。」

「かしこまりました、お嬢様。それは本当に良いお考えだと思いますよ!こんなことを言うのもどうかと思いますが、いくら王女様の到着に間に合わせたいからって、朝は随分急かされていましたものね。では、今日からは、ゆったりと朝の支度が出来ますね!久しぶりに、髪型もいつも以上に気合を入れさせてもらいますね!」
「ふふふっ。エルったらそんなに嬉しそうにして。でも、そう言ってもらえてよかったわ。あと、今日から我が家の馬車で学園に行くので、その手配もよろしくね。」

久しぶりに、気持ちよく朝を迎えることが出来た。
外を見ると、朝日が空の色を綺麗に彩っているのが見える。
まるで今日という日が、これからの私を祝福してくれているような応援してくれているようなそんな気分だ。

身支度を終えて、ゆったりと朝食をとっていると、イザックの馬車が到着するのが窓から見えた。執事が応対するだろうと、私は引き続き朝食を優雅に楽しむことにした。

「おはようございます。ロード侯爵子息様。本日、お嬢様はまだお支度に時間がかかっております。もしもお急ぎのようであればどうぞお先にと言付かっておりますがいかがなさいますでしょうか。」
「なんだって?今まで僕が迎えに来たらすぐに馬車に同乗できるようにしてくれていたのに。…ああ、もしもここで待っていたら、カトレア―ナ様の到着時にお迎えすることが出来なくなってしまうな。仕方ない。悪いが先に行くとローズマリーに伝えてくれ。では。」

先に学園へ馬車を走らせるイザック様を眺めて、それからしばらくして我が家の馬車で学園へ向かった。

「本当に最高な気分よ、エル。久々にゆっくりと朝の準備ができたわ。なんでもうちょっと早くこうしなかったのかしらねえ。」
「ふふふっ。毎朝死んだような顔になっていたので、今日はお嬢様のその幸せそうな顔が朝から見られて安心しました。よく眠られたからか、今日はお肌もいつも以上に整っていましたよ。」

馬車が学園に到着し、私に長年仕えてくれている侍女のエルに別れを告げた。
すがすがしい気持ちで学園の門をくぐると、チラチラと周囲の視線を感じた。

もしかしてもじゃなく、絶対にみんなあれ?今日はイザック様に放っておかれてないじゃない?っていうか、おひとりでいらしたのー??なんて思ってるんでしょうね。
ふふっ。正解正解、大正解!おひとりできましたのよー!と言ってやりたい。
誰か聞いてくれないかしら。って、ふふっ。

久しぶりに、すがすがしい気持ちで教室に向かった。

「おはよう、ローズマリー。なんだか朝から晴れやかな顔をしてるわね。で、早速行動に移したってわけ?」
「おはよう、メリッサ、キングストン様。ええ、なんでもっと早くこうしなかったのか不思議なくらいよ。良いことしかないわ。もうこれからは、ゆっくりと朝の支度をして、侍女のエルと心置きなくおしゃべりしながら我が家の馬車で学園へ向かうことにしたの。」

それから、ランチの時間になった。
いつもは、食堂でメリッサとキングトン様のお邪魔になってるなーと思いつつも、一緒にランチをいただいていた。
なんてったって、私の婚約者様はいつも他のカトレア―ナ様とランチを楽しんでらっしゃるので。

でも今日からは…。
少しドキドキするけど、ずっとイザック様としてみたかったピクニックランチをしながら一人でランチをいただくことにした。

この学園には、それはそれは見事な花々が植えられている。
そのためか、婚約者のいる方々は、外に程よく配置されているにテーブルで、花々を眺めながらランチをいただいている方が多いのだ。

さすがに、カップルだらけのところでというのは憚られたので、少し離れた場所でランチを一人で楽しむことにした。

綺麗な花々の周りを蝶々が舞うのを目の当たりに出来るうえに、優しいそよ風まで感じられ本当に気持ち良い。
持ってきた読みかけの本を片手に、ランチをいただく。

なにこれ?すごくおいしいんですけど!
なんでもっと早くこうしなかったのかしら。
と思わず独り言ちてしまった。

本日の授業も全て終わって、クラスの方々が最近できた人気のカフェに行こうと誘ってくれた。
いつも婚約者に放ったらかしにされている私に、クラスの皆さまはとてもやさしいのだ。
なんだか気を使わせて申し訳ないなあと思いつつ同行させてもらった。

このカフェに来るのは初めてだったので、お店の内装や、メニューなどを見ていてとても楽しかった。
みんなでいろいろな種類のデザートを頼んで、たくさんの種類を試してみたが本当にどれもおいしかった。
楽しい時間は残念だけどあっという間に過ぎてしまった。
学園帰りに寄り道なんてここ最近全くしていなかったので、とても新鮮な時間を過ごせて満足した私は、寄り道の楽しさを思い出してしまった。

それから数日間、イザック様は相も変わらず学園までの道のりを迎えにいらしたけれども、朝はゆったりと支度をししたい私は、彼をお待たせするわけにもいかないと理由をつけて先に行ってもらった。それから間を置かずに、我が家の執事にお願いして、イザック様に朝のお迎えをお断りする旨を伝えてもらったのは言わずもがな。

それからというもの、朝は誰に咎められることもなくゆっくり準備してから登園し、お昼は一人で気ままに花をめでながら優雅に読書を楽しむ日々を過ごした。

イザック様とカトレア―ナ様の仲睦まじい様子を横目に、私は私の時間を大事にした。

もう慣れてしまった一人ランチで、読書を楽しんでいると視線を感じることもあったが気のせいだろうと思う。
そうこうしているうちに、クラスの友人からの週末や放課後のお誘いが増えて、交友関係も広がり充実した日々を過ごせるようになっていった。

そうして日々が過ぎる中、メリッサの従兄が私たちの通う学園に留学生としてやってきた。
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