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ロナルド

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あの日、シータが頷いてくれたのを目にしたとたん俺の心は一瞬で決まった。

はるか遠い彼方のこの国に、ずっと以前に祖父から譲られた形見を使ってシータと一瞬で戻ってきた。 

あの白銀の世界はこの国まで続いているのを、久しぶりに戻ってきた自分の部屋の窓から確認し、それからシータのほうへ再び視線を戻した。

「あなたを連れ去ってしまいました。」

そう言って転移の際に絡めた腕をそのままシータに一歩近づいた。

「はい。」

「必ずあなたを守ると誓います。」

「自分が誰なのか、あなたが誰なのか分からないままですがよろしいのですか?…こんな私を連れ去ってきてくれて本当にありがとうございました。」

恐縮しているシータが愛おしすぎてどうしようかとなやんでいると、ふと、首からぶら下げている祖父が私に残してくれた形見の指輪はその輝きを失っているのに気が付いた。 

たった一度だけの奇跡を起こすと伝えられている指輪の飾りの中には雪の結晶がきらめいていたが、その時目にした指輪はそのきらめきが失われていた。


「その、どのようにして一瞬でここまで移動できたのか伺ってもよろしいでしょうか?」

可愛いシータの疑問に答えなければと思い説明を始めるや否や、その美しい瞳が零れ落ちるのではないかと思えるほどに彼女は驚愕で目を大きく見開いていた。

「そんな…そんな大切な指輪を私のために使ってくださっただなんて…。ごめんなさい」

「謝らないでください。俺…すみません、私がそうしたくてしたことなのだから。それにそのおかげであなたを攫ってくることができた…。」

そう伝えるとシータは首まで真っ赤になっていた。


「これからあなたのことをシータ様とおお呼びしても?私のことはロナルドとお呼びください。」

「もちろんです。それから、様、などつけずに只のシータとお呼びください。あとそれと、そんな丁寧な話し方ではなく、もっと砕けたしゃべり方をしていただけませんでしょうか…。」


ーーーああ…あなたを愛している。思わずそう口にしかけた私はぐっと言葉を飲み込んだ。

誰かをこんなに愛したことのなかった私には、この気持ちをどのようにして告げていいのかわからず途方に暮れた。

そうこうしているうちに、急に部屋に戻ってきた私に気が付いた使用人がすぐに父と母のもとへ報告に上がり一時、城は騒然となっていた。
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