16 / 28
13
しおりを挟む
「本当に何があるのか分かったものではないですこと…」
「公爵夫人もおかわいそうに…。あんなに完璧な夫婦で羨ましいと思っていたのに…ねぇ…。クスクスッ」
「おい、聞いたか?先月の夜会で夫人が具合が悪くなって護衛騎士と屋敷に戻った夜のこと。」
「ああ…。実は誰とは言わないが以前からも目撃した者たちがいるらしいぞ。」
「しかし羨ましいな。あんな綺麗で魅力的な夫人がいる上に、そんなことまでしてくれる女までいるなんてな。」
「ラシータ、疲れただろう。少し休憩しよう。」
「ええ、そうね。」
私が急に体調を崩してセガールを置いて帰宅した夜会の日以降、セガールの不貞の噂がささやかれるようになった。妻を溺愛していたはずの男の不貞とあって、あちらこちらから視線を感じる。
次期公爵夫妻とあって面と向かって面白がるものはいないが、周囲から囁くように聞こえてくるそれらの会話に私たちは沈黙を貫いていた。
色々思うところもあるがセガールも平然としているので習い私もそれに倣っている形だ。
「ラシータ、ここへ。」
「ええ、ありがとう。セガール。」
二人掛けの椅子に腰かけた私の隣に当然のようにぴったりと寄り添うセガールは、流れるように私の肩を抱き寄せた。
「ラシータ、今日も本当にきれいだよ。できるものならずっと閉じ込めて誰の目にも触れさせたくない。」
そう言って顔を近づけてくるセガールに以前の私なら胸の高鳴りを抑えられなかっただろう。
「皆が見ているわ、セガール…お願い、今はやめて。」
「ああ、恥ずかしがり屋さんだね、ラシータは。仕方がない、屋敷に戻ってからのお楽しみに取っておこう。」
チュッと鼻先にキスをしてきたセガールは、ふっと色気駄々洩れの笑みを浮かべた。
その瞬間そこかしこから女性たちの悲鳴のような声が聞こえてきた。
以前にもましてセガールの私に対する執着がひどくなったようで、席を外す時でも自分の目の届く距離に私を置きたがった。
常にぴったりと私に寄り添い、愛を囁いているセガールを見て、次第に周囲もあれはただの気まぐれだったのだと思うようになったのか、噂話も次第に落ち着いていった。
「公爵夫人もおかわいそうに…。あんなに完璧な夫婦で羨ましいと思っていたのに…ねぇ…。クスクスッ」
「おい、聞いたか?先月の夜会で夫人が具合が悪くなって護衛騎士と屋敷に戻った夜のこと。」
「ああ…。実は誰とは言わないが以前からも目撃した者たちがいるらしいぞ。」
「しかし羨ましいな。あんな綺麗で魅力的な夫人がいる上に、そんなことまでしてくれる女までいるなんてな。」
「ラシータ、疲れただろう。少し休憩しよう。」
「ええ、そうね。」
私が急に体調を崩してセガールを置いて帰宅した夜会の日以降、セガールの不貞の噂がささやかれるようになった。妻を溺愛していたはずの男の不貞とあって、あちらこちらから視線を感じる。
次期公爵夫妻とあって面と向かって面白がるものはいないが、周囲から囁くように聞こえてくるそれらの会話に私たちは沈黙を貫いていた。
色々思うところもあるがセガールも平然としているので習い私もそれに倣っている形だ。
「ラシータ、ここへ。」
「ええ、ありがとう。セガール。」
二人掛けの椅子に腰かけた私の隣に当然のようにぴったりと寄り添うセガールは、流れるように私の肩を抱き寄せた。
「ラシータ、今日も本当にきれいだよ。できるものならずっと閉じ込めて誰の目にも触れさせたくない。」
そう言って顔を近づけてくるセガールに以前の私なら胸の高鳴りを抑えられなかっただろう。
「皆が見ているわ、セガール…お願い、今はやめて。」
「ああ、恥ずかしがり屋さんだね、ラシータは。仕方がない、屋敷に戻ってからのお楽しみに取っておこう。」
チュッと鼻先にキスをしてきたセガールは、ふっと色気駄々洩れの笑みを浮かべた。
その瞬間そこかしこから女性たちの悲鳴のような声が聞こえてきた。
以前にもましてセガールの私に対する執着がひどくなったようで、席を外す時でも自分の目の届く距離に私を置きたがった。
常にぴったりと私に寄り添い、愛を囁いているセガールを見て、次第に周囲もあれはただの気まぐれだったのだと思うようになったのか、噂話も次第に落ち着いていった。
200
お気に入りに追加
776
あなたにおすすめの小説
【完結】不誠実な旦那様、目が覚めたのでさよならです。
完菜
恋愛
王都の端にある森の中に、ひっそりと誰かから隠れるようにしてログハウスが建っていた。
そこには素朴な雰囲気を持つ女性リリーと、金髪で天使のように愛らしい子供、そして中年の女性の三人が暮らしている。この三人どうやら訳ありだ。
ある日リリーは、ケガをした男性を森で見つける。本当は困るのだが、見捨てることもできずに手当をするために自分の家に連れて行くことに……。
その日を境に、何も変わらない日常に少しの変化が生まれる。その森で暮らしていたリリーには、大好きな人から言われる「愛している」という言葉が全てだった。
しかし、あることがきっかけで一瞬にしてその言葉が恐ろしいものに変わってしまう。人を愛するって何なのか? 愛されるって何なのか? リリーが紆余曲折を経て辿り着く愛の形。(全50話)
10年間の結婚生活を忘れました ~ドーラとレクス~
緑谷めい
恋愛
ドーラは金で買われたも同然の妻だった――
レクスとの結婚が決まった際「ドーラ、すまない。本当にすまない。不甲斐ない父を許せとは言わん。だが、我が家を助けると思ってゼーマン伯爵家に嫁いでくれ。頼む。この通りだ」と自分に頭を下げた実父の姿を見て、ドーラは自分の人生を諦めた。齢17歳にしてだ。
※ 全10話完結予定
記憶がないなら私は……
しがと
恋愛
ずっと好きでようやく付き合えた彼が記憶を無くしてしまった。しかも私のことだけ。そして彼は以前好きだった女性に私の目の前で抱きついてしまう。もう諦めなければいけない、と彼のことを忘れる決意をしたが……。 *全4話
【完結】今日も女の香水の匂いをさせて朝帰りする夫が愛していると言ってくる。
たろ
恋愛
「ただいま」
朝早く小さな声でわたしの寝ているベッドにそっと声をかける夫。
そして、自分のベッドにもぐり込み、すぐに寝息を立てる夫。
わたしはそんな夫を見て溜息を吐きながら、朝目覚める。
そして、朝食用のパンを捏ねる。
「ったく、いっつも朝帰りして何しているの?朝から香水の匂いをプンプンさせて、臭いのよ!
バッカじゃないの!少しカッコいいからって女にモテると思って!調子に乗るんじゃないわ!」
パンを捏ねるのはストレス発散になる。
結婚して一年。
わたしは近くのレストランで昼間仕事をしている。
夫のアッシュは、伯爵家で料理人をしている。
なので勤務時間は不規則だ。
それでも早朝に帰ることは今までなかった。
早出、遅出はあっても、夜中に勤務して早朝帰ることなど料理人にはまずない。
それにこんな香水の匂いなど料理人はまずさせない。
だって料理人にとって匂いは大事だ。
なのに……
「そろそろ離婚かしら?」
夫をぎゃふんと言わせてから離婚しようと考えるユウナのお話です。
【完結】わたしはお飾りの妻らしい。 〜16歳で継母になりました〜
たろ
恋愛
結婚して半年。
わたしはこの家には必要がない。
政略結婚。
愛は何処にもない。
要らないわたしを家から追い出したくて無理矢理結婚させたお義母様。
お義母様のご機嫌を悪くさせたくなくて、わたしを嫁に出したお父様。
とりあえず「嫁」という立場が欲しかった旦那様。
そうしてわたしは旦那様の「嫁」になった。
旦那様には愛する人がいる。
わたしはお飾りの妻。
せっかくのんびり暮らすのだから、好きなことだけさせてもらいますね。
夫が「愛していると言ってくれ」とうるさいのですが、残念ながら結婚した記憶がございません
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
【完結しました】
王立騎士団団長を務めるランスロットと事務官であるシャーリーの結婚式。
しかしその結婚式で、ランスロットに恨みを持つ賊が襲い掛かり、彼を庇ったシャーリーは階段から落ちて気を失ってしまった。
「君は俺と結婚したんだ」
「『愛している』と、言ってくれないだろうか……」
目を覚ましたシャーリーには、目の前の男と結婚した記憶が無かった。
どうやら、今から二年前までの記憶を失ってしまったらしい――。
愛されない花嫁はいなくなりました。
豆狸
恋愛
私には以前の記憶がありません。
侍女のジータと川遊びに行ったとき、はしゃぎ過ぎて船から落ちてしまい、水に流されているうちに岩で頭を打って記憶を失ってしまったのです。
……間抜け過ぎて自分が恥ずかしいです。
【完結】浮気された私は貴方の子どもを内緒で育てます 時々番外編
たろ
恋愛
朝目覚めたら隣に見慣れない女が裸で寝ていた。
レオは思わずガバッと起きた。
「おはよう〜」
欠伸をしながらこちらを見ているのは結婚前に、昔付き合っていたメアリーだった。
「なんでお前が裸でここにいるんだ!」
「あら、失礼しちゃうわ。昨日無理矢理連れ込んで抱いたのは貴方でしょう?」
レオの妻のルディアは事実を知ってしまう。
子どもが出来たことでルディアと別れてメアリーと再婚するが………。
ルディアはレオと別れた後に妊娠に気づきエイミーを産んで育てることになった。
そしてレオとメアリーの子どものアランとエイミーは13歳の時に学園で同級生となってしまう。
レオとルディアの誤解が解けて結ばれるのか?
エイミーが恋を知っていく
二つの恋のお話です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる