見捨てられたのは私

梅雨の人

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亮真11

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しばらくそうしていると、周囲がにわかにざわついて、その視線の先にはずっと夢にまで見た小雪が一宮東吾と寄り添ってこの式典に現れた。 

 
藤堂孝一朗と一宮東吾が二人が揃うだけで男は尊敬と期待を込めた眼差しを、女は感嘆と憧れのため息をこぼし顔を真っ赤にし、皆の視線をくぎ付けにしていた。 

小雪は二人の間でにこにことして、頻繁に一宮東吾と顔を見合わせては花がほころぶような笑顔で会話を楽しんでいた。 

一段と艶やかで美しくなった小雪は心の底から幸せそうに一宮東吾に微笑んでいた。 

一宮東吾はそんな小雪を愛おしそうに目を細めて何度も見つめては何かを囁いて、小雪を笑顔にしていた。腕に添えられた小雪の手を何度も愛おしそうに撫で、本当に幸せだと言わんばかりに二人で微笑みあっていた。 

 

小雪が去って行ってから何度も夢に見た幸せの光景が目の前に広がっていた。 

 

小雪の夫として、いや、婚約者だった時から私は小雪の隣にいることが出来ていたのに。 

一度として、小雪にあんな顔をさせたことなどなかった。 

安心しきった顔をして、幸せそうに笑顔を向ける小雪に一宮東吾が幸せそうに答えている姿はまさしく私が、もう実現するはずがないのに渇望する光景だった。 

もう小雪の夫ではないのに、自分以外の男と小雪が親しく接している姿を目の当たりにして、胸が抉られて苦しくて、苦しくて息の仕方もわすれてしまいそうだった。 

 

最初から小雪を大切にしていたら 

ずっと小雪を変わらず大切にしていたら 

小雪を大切にしているんだからと都合よく思いこんで義理の姉などを優先し続けていなければ 

あんな酷い日々を過ごした小雪に誠心誠意謝り夫婦関係を改善すべく行動に移していたら 

兄さんと比べて卑屈にならずもっと視野を広くして物事を考えられていたら 

小雪を大事だという気持ちを素直に小雪に伝えられていたら 


そうしていたら小雪はまだ私の隣にいてくれたのだろうか。 

ああして一宮東吾を見るように、私を見ては幸せそうな顔をしてくれていたのだろうか。 
 

一瞬一宮東吾の視線が私に向いた気がした。なぜだか一宮東吾に会った日のことを思い出す。やはりあの時の直感は正しかったのだと改めて思った。 

一宮東吾は、虎視眈々と小雪をずっと狙い続けていたのだろう。 
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