見捨てられたのは私

梅雨の人

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亮真10

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橋の完成式典に兄の代理として出席した私は再び藤堂孝一朗と対峙した。 

「お久しぶりです。」 

「ああ、君か。お兄さんは今日は参加できなかったのかな?」 

「ええ、生憎、昨晩から食中毒で寝込んでおります。」 

「ははっ!なるほど。ではお大事にと伝えておいてくれ。今日はわざわざここまで足を向けてもらって感謝するよ。」 

「いえ、私もこのような立派な橋を目にできて満足しております。」 

(信じられないほどの巧みな技術が至る所に使われていて驚かされた。もっと詳しく話を聞かせてくれないだろうか――。 )
そんなことを純粋に思ってしまった。

「ようやくいい目をしたな。君も小雪と婚約したときはそのような目をよくしていたんだがなあ。君も不器用だよな。…まあ、いいか。式典を楽しんでくれ。ああ、あと、あの二人は新婚旅行で子供に恵まれてた後も子供と三人で仲良くやってるから心配いらない。」 

次々とあいさつに訪れる客の相手に要領よく対応している藤堂孝一朗は、では、と私に告げて違う客と話し出した。 

あの一宮東吾のことだ。小雪をこれでもかというほど大切にしているのだと見なくてもわかる。
子供も生まれきっと小雪も幸せにしているのだろうとそうぞうもついていた。
しかし、新婚旅行と聞いて私は小雪を新婚旅行にも連れて行っていなかったということに今更ながらに気が付いてしまった。 

何ということだろう。 

いつも義姉さんの境遇に同情して励まそうと忙しくて本当にそこまで頭が回らなかった。 

考えてみれば新婚生活という甘い時間さえも十分に小雪に与えてやることも出来なかった。 

考えたら考えるだけどれだけ小雪を悲しませていたのか、後悔ばかりで頭を抱えそうになるのをぐっとこらえるしかない。
それでも後戻りなど出来ないのに、もう一度あの頃に戻ってやり直せたらと切に願ってしまう。 


藤堂孝一朗が私との挨拶を受け入れてくれたことを周囲は見ていないようでしっかり見ていたようだ。 

それまでは腫れ物に近づかないようにしていた連中が、急に手のひらを返して私に一斉に話しかけてきた。 


遠巻きに小雪と離縁したことについて皮肉を込められた言葉を多くおくられたが、私はそれに対して唯々その通りだ、私は大馬鹿者だと思うだけだった。 
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