見捨てられたのは私

梅雨の人

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「さあ、自己紹介も終わりだ。小雪、ほら見てみろ、美味そうなものがたくさんあるぞ。」 

「本当ですね、東吾様。」 

目の前には繊細な料理人の技が織りなされたお料理や新鮮な食材をふんだんに使用した料理ががたくさん並べられております。 

「さすがは斎藤殿だ。どれもとてもうまそうだな。」 

「お褒めに頂き光栄ですよ一宮様。ここは以前から私の両親が贔屓にしている料亭でしてね。」 

「なるほど。これからは俺たちも贔屓にさせてもらおう。なあ、小雪?」 

「ええ、東吾様。本当にどれもとても美味しいですね。」 

「ああ、ほら、これ小雪が好きなの酢漬けじゃないか。俺の分も食っていいぞ。」 

「東吾様、そんな東吾様の分まで頂くなんて…」 

「良いじゃないか、好きなものを存分に食ったってさ。足りないなら追加で頼むぞ?」 

「はははっ、本当に奥様と仲がよろしいですね一宮殿は。」 

「ああ、俺は妻が大好きだからな。」 

「東吾様…」 

「お子様は大きくなりましたでしょう?」 

「ああ、小雪が甲斐甲斐しく世話を焼いてくれているおかげで息子もすくすくと成長しているよ、そういえば斎藤殿のところは?」 

「ああ、うちは息子も三歳になりましてね、まだ言葉があまり出てこなくて少し心配しているのですが、まあ、病気もあまりせず育ってくれてますよ。なあ、絹江?」 

「え?ええ、そうですね。あの子はとても内気で誰に似たのやら。あまり手のかからない子でいいんですけれども…」 

「病気をせず育ってくれているというのはとてもありがたいことですね。うちの息子は頻繁に風邪をひいてしまうのですよ。ねえ、東吾様?」 

「ああ、そうだな。なんであいつはあんなに風邪ばかり引くんだろうな?本当に斎藤殿の息子のように病気をなかなかしないというのは羨ましい限りだ。あ、小雪、茶がなくなってる。急須は…と。おかわりがいるだろ?」 

「ええ、よろしくお願いいたします、東吾様。」 

「ああ、ほら熱いから気を付けて小雪。」

「ありがとうございます、東吾様。」

 些細なことにも気が付いて下さる東吾様に愛しさがこみ上げてまいりました。
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