130 / 147
124
しおりを挟む
「小雪、ついにあの橋が完成したぞ!完成予定がかなり遅れてしまったが後の祭りだ。ちなみに完成式典は来週だ。」
「あの大きな橋ですか?完成したのですね!お兄様も東吾様も本当にすごい!」
「だろう、だろう、小雪!」
いつにもまして上機嫌の東吾様はとてもうれしそうにしておられます。
「では完成式典に合わせて至急東吾様の衣装を揃えさせていただきますね。」
「俺のは何でもいいから気にしなくていいぞ小雪。それより小雪の準備だ。やっとお披露目ができるな。小雪っ、俺と一緒にきてくれ!」
東吾さまの背後に激しく揺れる尻尾が見える気が致します。
「よーし、小雪、あけるぞ?いいか?せーの!」
東吾さまの開けた扉の向こう側には見事な色留袖が丁寧に掲げられておりました。
「黒留袖も考えたんだがな、断然こんなうっすらした色の留袖の方が小雪に似合うだろうと思ってこれにしたんだ。気に入ってくれたか?」
「ええ、ええ、東吾様。素晴らしいですわ。この淡い色合いもとても素敵でございます…。」
その後しばらく東吾さまの用意してくださった留袖にうっとりとしている私を、それはそれはご満悦の表情をされた東吾様が見つめておられました。
「小雪も式典に俺と一緒に参加してくれ。ある意味小雪が主役のようなものだからな。その日は賢吾は乳母に任せたらいい。楽しみだなあ小雪!」
「ええ、そうでございますね、東吾様。」
何が何だかわかりませんが、嬉しそうにされる東吾様に否を相変わらずいうことのできない私は、なぜだか橋の完成式典に東吾様と出席することになりました。
◇◇◇◇
「小雪橋、だよ、小雪。」
「小雪橋…本当にその名前にされたのですね、お兄様?」
「ああ、以前そのように伝えていただろう?」
「まさか本当にそうなさるとは思っておりませんでしたので…」
「なんだ小雪、恥じる必要はないぞ。素敵な名前じゃないか。ちなみに小雪の名付け親は俺だ。」
「お父様やお母さまではなくてお兄様が…?」
「ああ、いい名前だろう?とにかくこの橋の名前はお前から取ったんだよ。立派な橋に引けを取らないいい名前だ。」
満足そうにうんうん頷いているお兄様に言葉をなくしてしまった私は東吾様を仰ぎ見ました。
「孝一朗、…お前…たまにはいい仕事もできるんじゃないか。見なおしたぞ義兄よ!」
「だろう義弟よ!」
変なところで意気投合しておられる二人にはさまれるような立ち位置から逃れることも出来ません。周囲の若干引き気味の視線をものともしないお二人に唯々苦笑が漏れてしまいます。
「あの大きな橋ですか?完成したのですね!お兄様も東吾様も本当にすごい!」
「だろう、だろう、小雪!」
いつにもまして上機嫌の東吾様はとてもうれしそうにしておられます。
「では完成式典に合わせて至急東吾様の衣装を揃えさせていただきますね。」
「俺のは何でもいいから気にしなくていいぞ小雪。それより小雪の準備だ。やっとお披露目ができるな。小雪っ、俺と一緒にきてくれ!」
東吾さまの背後に激しく揺れる尻尾が見える気が致します。
「よーし、小雪、あけるぞ?いいか?せーの!」
東吾さまの開けた扉の向こう側には見事な色留袖が丁寧に掲げられておりました。
「黒留袖も考えたんだがな、断然こんなうっすらした色の留袖の方が小雪に似合うだろうと思ってこれにしたんだ。気に入ってくれたか?」
「ええ、ええ、東吾様。素晴らしいですわ。この淡い色合いもとても素敵でございます…。」
その後しばらく東吾さまの用意してくださった留袖にうっとりとしている私を、それはそれはご満悦の表情をされた東吾様が見つめておられました。
「小雪も式典に俺と一緒に参加してくれ。ある意味小雪が主役のようなものだからな。その日は賢吾は乳母に任せたらいい。楽しみだなあ小雪!」
「ええ、そうでございますね、東吾様。」
何が何だかわかりませんが、嬉しそうにされる東吾様に否を相変わらずいうことのできない私は、なぜだか橋の完成式典に東吾様と出席することになりました。
◇◇◇◇
「小雪橋、だよ、小雪。」
「小雪橋…本当にその名前にされたのですね、お兄様?」
「ああ、以前そのように伝えていただろう?」
「まさか本当にそうなさるとは思っておりませんでしたので…」
「なんだ小雪、恥じる必要はないぞ。素敵な名前じゃないか。ちなみに小雪の名付け親は俺だ。」
「お父様やお母さまではなくてお兄様が…?」
「ああ、いい名前だろう?とにかくこの橋の名前はお前から取ったんだよ。立派な橋に引けを取らないいい名前だ。」
満足そうにうんうん頷いているお兄様に言葉をなくしてしまった私は東吾様を仰ぎ見ました。
「孝一朗、…お前…たまにはいい仕事もできるんじゃないか。見なおしたぞ義兄よ!」
「だろう義弟よ!」
変なところで意気投合しておられる二人にはさまれるような立ち位置から逃れることも出来ません。周囲の若干引き気味の視線をものともしないお二人に唯々苦笑が漏れてしまいます。
2,078
お気に入りに追加
4,046
あなたにおすすめの小説
業腹
ごろごろみかん。
恋愛
夫に蔑ろにされていた妻、テレスティアはある日夜会で突然の爆発事故に巻き込まれる。唯一頼れるはずの夫はそんな時でさえテレスティアを置いて、自分の大切な主君の元に向かってしまった。
置いていかれたテレスティアはそのまま階段から落ちてしまい、頭をうってしまう。テレスティアはそのまま意識を失いーーー
気がつくと自室のベッドの上だった。
先程のことは夢ではない。実際あったことだと感じたテレスティアはそうそうに夫への見切りをつけた
私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜
月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。
だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。
「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。
私は心を捨てたのに。
あなたはいきなり許しを乞うてきた。
そして優しくしてくるようになった。
ーー私が想いを捨てた後で。
どうして今更なのですかーー。
*この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。
私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです
こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。
まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。
幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。
「子供が欲しいの」
「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」
それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。
アリシアの恋は終わったのです。
ことりちゃん
恋愛
昼休みの廊下で、アリシアはずっとずっと大好きだったマークから、いきなり頬を引っ叩かれた。
その瞬間、アリシアの恋は終わりを迎えた。
そこから長年の虚しい片想いに別れを告げ、新しい道へと歩き出すアリシア。
反対に、後になってアリシアの想いに触れ、遅すぎる行動に出るマーク。
案外吹っ切れて楽しく過ごす女子と、どうしようもなく後悔する残念な男子のお話です。
ーーーーー
12話で完結します。
よろしくお願いします(´∀`)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる