見捨てられたのは私

梅雨の人

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新婚旅行から戻って来ていつもの日常が戻って参りました。 

東吾様はお仕事で大変忙しそうにされておりますが、朝食と夕食を私と一緒に摂って下さったり、週に一日は私とゆっくりする時間を作ってくださっております。 

「小雪、小雪、これはどうだ?!」 

 

子供のように興奮して宝物を見つけたと言わんばかりに私に駆け寄ってきていらっしゃる東吾様に苦笑してしまいます。 

「東吾様…もう十分に選んでいただきましたので…」 

「あんなので十分だって?!もう小雪は本当にかわいいなあ…」 

「またかわいいって…東吾様…」 

 

衣服に髪飾り、手鏡に口紅、手提げに宝飾品はては珍しい書籍などなど、毎度私がお断りしないと恐ろしい量の買い物を私のためにしようとされる東吾様に思わず顔が引きつってしまいそうでございます。 

今日は東吾様と気分転換だと言って街中を二人で気ままに歩いております。 

気分転換だと言ってはこうしてしょっちゅう私を外に連れ出してくださる東吾様はいつもこうして私を甘やかしてくださいます。 

 

「小雪、少し疲れただろう?甘いものでも食べながら休憩しようか?」 

「それはとてもうれしいです、東吾様!」 

「よしっ、決まりだな。さあ、どこがいいかな。よし、ルナ洋菓子店に行ってみるか?!」 

「良いですね!では私は洋ナシのケーキを頂いてもよろしいですか?」 

「もちろんだ小雪。そうと決まったら行こうか!」 

「ええ、東吾様。」 

 

何をするにしても東吾様は最初に私の意思をこうして聞いてくださるので、次第に私も東吾様への遠慮がなくなりつつあります。 

それともう一つ、東吾様と想いを伝えあえた日からずっとこうして当たり前のように亮真様は私と手をいつもつないでくれております。 

東吾様とこうしていればもう迷子になることはないのだと、深い安心感を感じることが出来ます。 
 
てくてくと二人でゆっくり歩いているだけでとても幸せで、まるで二人だけの世界にいるようなそのような気分になってしまうのです。
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