見捨てられたのは私

梅雨の人

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「すまない小雪。変なところを見せてしまった。」
「東吾様、あのような表情もなさるのですね。」
「そうか、小雪の前ではそんな顔したことなかったもんな。怖がらせてしまったか?」
「いいえ、どんな東吾様も…」
「も?なんだ小雪?」
「愛おしく感じます…」
「…はぁ~…強烈すぎるよ小雪…」


何をするにしても東吾様は最初に私の意思を確認してくださる上に気持ちを言葉にして伝えて下さるので、次第に私も東吾様へ思ったように言葉を伝えることが出来るようになってまいりました。 

心配事を一つ一つ取り除いて行ってくださるかのような言動に、東吾様のとても真面目なひととなりが垣間見えます。

そんな東吾様は私と想いを通じ合って以来ずっと手をつないでくださります。
東吾様とこうしていればもう迷子になることはないのだと、深い安心感を与えられてしまうのでございます。 

 ◇◇◇◇

「いらっしゃいませ。」 

夫婦になってからルナ洋菓子店をはじめ二人で甘いものを食べに色々なお店を訪れるようになりました。 

それがとても新鮮で楽しくて、二人でいつも美味しい美味しいと言って満足しております。 

 

「その洋ナシのケーキと、隣の栗の乗っかってるケーキ、と、後は…迷うな。小雪はどれがいい?」 

「そうですね…ではこのイチジクの入ったお菓子を頂けますか?」 

「良いね、うん、美味そうだ。そうしよう。あとリンゴの入った茶を何といったか忘れたがあれを頼もうか、小雪?」 

「良いですね。あれはとても飲みやすくて美味しかったですものね。」 

「ああ、ではそれで頼むよ。」 

「畏まりました。」 

 

「あー腹が減った。」 

「ふふふっ東吾様ったら。いつもそうしてお腹を空かせてらっしゃるのですから。」 

「はははっ、小雪といると楽しくてすぐに腹が減るんだよ。」 

「また東吾様ったら…」 

「また小雪は…かわいいな…」 

「東吾様…あら…」 

「どうした小雪?」 

 

すぐそばの席で太賀様がこちらを見ておられるのに気が付き、慌てて頭を下げました。 
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