見捨てられたのは私

梅雨の人

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「楽しみだ…ああ、そしてここは簡単な調理ができるようになっている。あまり必要ないとは思うけど。あと、あっちにあるのが小雪の化粧部屋だ。見てみる?」 

「ええ、是非とも。」 


そう言って東吾様に連れて行ってもらった化粧部屋はとても広くて私一人で使うにはもったいない気が致します。 

「ああ、小雪。広すぎて落ち着かないって顔だな。心配しなくていいぞ。ほらここに俺専用の椅子があるだろ?寂しくないようにいつも俺がここで小雪を待っててやる。」 

「恥ずかしいですわ…」 

「…かわいいなあ小雪は…。」 

「またかわいい、かわいいと…東吾様ったら…」 

ほら、また頬が赤くなってる…そうおっしゃられた東吾様に後ろから抱きしめられました。
東吾様の熱を背中に感じつつ鏡越しに見える東吾様に目を向けますと、東吾様の頬も心なしか赤くなっておられました。

「…じゃあ次が最後だ。残りの部屋はまた後日案内するからな。入って。…ここが寝室だ。おいで、小雪。」 

一歩底に足を踏み入れると、大きな寝台と綺麗に輝く湖畔が目の前に広がっております。 

「…気に入った?小雪?」 

「東吾様…ここまで用意してくださって言葉にしようがございません。私は本当に幸せ者でございます…」 

「…小雪…」 


どちらからともなく自然と吸い寄せられるように抱きしめあって東吾様の優しい口づけを受け止めました。
お互いにぴったりとくっついて隙が無いほどに求め合っても足りないとばかりに、たくさんの愛を伝えあい、いつしか頭の中で何も考えられなくなっておりました。

体力が尽きてもう駄目だと思うのに、何度も何度も終わりなく求められるのが心の底から嬉しくて、幸せで流れる涙を東吾様が啜ってくださるたびに本当に東吾様と夫婦になれてよかったと心から思うのでした。 

朝方目が醒めると、東吾様がじっと私を見つめておられました。
目を開けた瞬間に東吾様のお顔がこのように近くにあって動揺を隠すのに苦労致します。
「おはようございます、東吾様…」
「おはよう…小雪…愛してる…」
「私も…東吾様を愛しております…」

逞しい腕に抱きしめられて幸せを噛み締めます。

昨夜の私の痴態を思い出して赤面した私の髪の毛を手櫛で優しく梳いてくれる東吾様はとてもやさしい表情をしておりました。
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