見捨てられたのは私

梅雨の人

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「ハァー小雪。たまらん。可愛い。可愛い。可愛い。可愛い。可愛い。可愛い。可愛い。可愛い。かわい「旦那様、いい加減にしてください。奥様が窒息してしまいます!」」 

「えっ?!あっ!すまない小雪!」 

「いっいえ東吾様、大丈夫でございます。」 

「すまない…」 

「大丈夫なわけないでしょう旦那様!奥様は旦那様と違って折れそうなくらい可憐なのですからもう少し大事にして差し上げないと!」 

侍女頭のウタが顔を真っ赤にして東吾様を叱っております。 

ウタは東吾様の幼少から使えていて、いくつになっても東吾様はウタに頭が上がらないんだとぼやいておりましたのを可笑しな気持ちでいつものように見守っております。 

「すまないウタ」 

「私に謝っていかがなされるのですか?!そしてまた、何かの安売りみたいに、奥様にかわいい可愛いと連呼なさって…謝るなら奥様にでございますよ?!」 

「ああ、わかったよ。ごめんね、小雪…」 

耳がシュンと垂れた子犬のように東吾様が見えるのが気のせいではないのでしょう。 

「ふふふっ謝罪を受け取りました。大丈夫ですよ、東吾様。東吾様には本当に大事にして頂いているのですから。さあ、準備も整いましたしそろそろ出発いたしましょう?」 

笑顔を東吾様に向けると、急に東吾様の背後で尻尾がぶんぶんとせわしなく動くのが見えるのも気のせいではないのでしょう。 

東吾様と一緒にいるとどんなことにでも幸せを感じ、常に笑顔が絶えることはありません。 


それから東吾様の運転する車で二人でお墓参りに向かいます。 

車内での沈黙も、会話も、東吾様となら何をしていても幸せなのでございます。 

 ◇◇◇◇

「妙子様、ご無沙汰しておりました。こちら一宮東吾様でございます。」 

妙子さまのお墓を二人で綺麗にしてお花と線香をお供えした後に静かに手を合わせます。 

ちらりと東吾様をみたら、真剣な表情で長い間手を合わせておりました。 

 

その後東吾様の妹様の園子ちゃんのお墓参りに向かいました。 

生まれつき体が弱く、若干4歳で儚くなった園子ちゃんとの想い出話を東吾様はたくさん私に聞かせてくれました。 

二人で静かに手を合わせてそれからその場を後に致しました。 
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