見捨てられたのは私

梅雨の人

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琴葉3

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取り残された私はふらふらとした足取りで自分の部屋に戻って私の何が太賀は気に入らなかったのだろうとひたすら涙を流した。 

それからますます亮真様さんに会いに行く頻度が増えたのだった。 

終いには亮真さんに拒絶されて。私を放った太賀は美知恵さんをそれはそれは大事にしている。… 

「奥様…、琴葉奥様。太賀様が奥様にお話があるので応接室まで来るようにとのことです。」 


ようやく顔を見せてくれた太賀の後ろにはいつの間にか実の父の姿があった。 

「お父様どうされたのですか?急にいらっしゃるなんて「この馬鹿娘め。すまなかった、太賀君。こんなことになるとは。また日を追って連絡させてもらう。」 

「ええ、よろしくお願いします。」 

「私と一緒に来るんだ琴葉。」
「え?なんで?お父様やめてっ!太賀お願いお父様を止めてっ」 

引きずられるようにして屋敷を後にする私に興味がないといった感じの太賀はようやく肩の荷が下りたとばかりにさっさと屋敷の中に戻っていった。 


「なんで、どうしてっ…太賀っ!太賀!!」 

 
生家に連れ戻された私は部屋から一歩も出られないように見張られて身動きさえ取れない。 

こんなことになるなんて思いもしなかった。 

しばらくしてお母様が部屋に来てくださった。いつも朗らかで優しいお母さまが疲れた顔をしていらっしゃる。 


「琴葉、なんてことをしてくれたの…。よりにもよってあの藤堂孝一朗様と一宮東吾様に睨まれることになるなんて。大河内家にも見限られて…旦那様が大層ご立腹でもうあなたをどこかの田舎の百姓の妻としてでもいいから嫁に出すしかないとおっしゃっているわ。縁も切るそうよ。」 

「藤堂家?小雪さんのこと…?なっ…そんなっ…。」 

「なぜなの?あなたがずっと恋焦がれていた太賀さんと夫婦になれて幸せにやっていると思っていたのに、亮真さんと無理やり関係を結ぼうとしたですって?亮真さんは離縁されたわっ…まさかあの藤堂家のお嬢様を貶めるようなことをしていただんてっ…なぜなのっ琴葉っ…」 


嗚咽をこぼす母が震える手で私の肩に手を置いて泣き崩れていた。 

むかしから太賀と亮真は私だけのものだった。私だけの太賀と亮真さんでずっといてほしかっただけなのに。 


結局太賀も亮真さんも私以外の女たちを選んでしまった。 



あれから待てど暮らせど太賀からも亮真からも何の音沙汰もなかった。 

正式に太賀に離縁された私は実家とも縁を切られ、遠くの田舎町の農家の後妻となるために車に詰め込まれた。 

「家の恥になるので名はただの琴になった。すでに家からは除籍している。決して我が家の名前を漏らすことのないように。そうすればお前が生きている間くらいは嫁ぎ先に最低限の金を融通して食うには困らない程度にはしてやる。」 

泣きながら嫌がる私を見送ってくれる家族の姿はおろか使用人の一人もいなかった。 
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