見捨てられたのは私

梅雨の人

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夫であった亮真様に妻の私よりもお義姉様を優先され続けた私が。
とりえも自信もない私が。

眩しいほどに快活で有能な一宮様に想いを寄せるなんて、おこがましいにもほどがあるのだとわかっているのです。わかっているのです―――。 

だからこそ、この想いを一宮様に知られることが怖くて怖くてたまらないのでございます。 


そんな私の心の内を知ってか知らずか毎日欠かさず一宮様は私を訪ねて来て下さいます。 

少しずつ私を外に誘って下さる一宮様。 

ご自分のことを語って聞かせて下さるのに私のことはあえて聞かないようにしてくださる一宮様。 

君のことは時間をかけて知っていきたいからどうしても聞かせたいと思ったときに聞かせてくれよなとさらっとおっしゃって下さる一宮様。 

朗らかで明るくてそれなのに私に接するときは壊れ物を扱うように接してくださる一宮様。 

心配性で寒くないか?熱くないかまぶしくないか?疲れてないか?としょっちゅう心配してはせっせとお世話をしてくださる一宮様。 

夕暮れ時に何も言わずともさっとご自身の上着を私にかけて下さる一宮様。 

たわいのない話の中でもいつも私を笑顔にしてくださる一宮様。 

忙しくて目の下に隈を作っておられるのにそれでも会いに来てくださる一宮様。 

明らかに急いでいらしたのか頭に葉っぱを乗せておられる一宮様。 

私を目にして破顔してくださる一宮様。 

静寂の時間も幸せそうな顔を向けて下さる一宮様。 

いつもしっかりと私の話を聞いてくださる一宮様。 

私を見守ってくださる一宮様。 

苦しい時に現れては私を救って下さった一宮様。
 

瞳を閉じると思い浮かぶのはいつも一宮様のことばかりなのでございます――。 


気が付けばいつもそばにいて下さる一宮様がいて下さらないだけでため息を押し殺さなくてはなりません。
一宮様が私のそばにいるだけで嬉しくて心が急激に温まるのを必死に隠さなくてはなりません。

そんな私を知ってか知らずか、毎日私に会いに来てくださる一宮様はいつも明るい太陽のように私を照らし続けてくださいます。

もう一宮様なしではどうやって生きて行けば分からない…


私はあっけなく二度目の恋に落ちてしまったのでございます。
 
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