92 / 147
88
しおりを挟む
『さようなら亮真様』
はっきりとそう告げた私は亮真様へ背を向けて歩き出しました。
すると鼻歌を歌いながら幼かったころの私が嬉しそうに駆け寄ってきます。
『私少しは成長できたかしら?』
そう私は幼い私に問いかけるとぎゅうっと抱きしめられてそれからすうっと私の中へ溶けて消えて行きました。
とても晴れやかで…とても誇らしげな気分でございます。
『すべての後悔も失敗もすべてが無駄ではなかった、これからの私の未来にとって必要なことでしたのね…』
『そうよね、小雪様。ふふふ、小雪様はもう大丈夫そうね!』
『妙子様?妙子様!』
『ええ、小雪様!』
思わず妙子さまの手を取り少女に戻ったかのように二人で再会の喜びを噛み締めます。
『小雪様、これからも小雪様を見守らせて頂きますわ。小雪様がこれから幸せな人生を末永く送ることが出来ますように…。』
『妙子様…えっ…妙子様?…どこに行ってしまわれたの?妙子様?妙子様…?」
「うっ…ん…ここは…」
「小雪…目が醒めたか…」
「孝一朗お兄様…」
「小雪、頑張ったな。もう大丈夫だ。」
お兄様は私を抱き寄せて幼子にするように背中をさすってくれております。
「やはり、向こうに戻すべきではなかった。すまなかった、小雪。」
「いえ、お兄様が謝られるようなことではございません。私自身で決めたこと。やっと初恋を終わらせてまいりました」
「そうか…小雪がそういうのであればそれでよかったんだろうな…」
いつも飄々としておられるお兄様が少し疲れておられます。私のことで心配をおかけしてしまったのだと思うととても申し訳ない気持ちでいっぱいになります。
「ええ…見守っていただき本当にありがとうございました。お兄様が私のお兄様で本当に私は幸せ者です。お兄様、私も少しは成長できたでしょうか?」
「ああ、ああ。小雪は成長したよ。立派なものだ。」
「失敗ばかりですが…」
「それがどうした、結局終わってしまえばどうにかなるもんだ。」
「そういうものなのですか?」
「ああ、そういうものだ。」
思う存分二人で笑いあってやっと一息つくことが出来ました。
「あのお兄様、一宮様はどちらへ?助け出して頂いた一宮様に是非お礼を申し上げたいのですが…」
「東吾ならここにいる。お前がそうしたいというのなら呼んでくるが?」
「いえ、私が参ります。」
「体は辛くないか?」
「…大丈夫ですわお兄様」
「そうか…後、医師に来るように頼んである。さあ、行こうか。」
はっきりとそう告げた私は亮真様へ背を向けて歩き出しました。
すると鼻歌を歌いながら幼かったころの私が嬉しそうに駆け寄ってきます。
『私少しは成長できたかしら?』
そう私は幼い私に問いかけるとぎゅうっと抱きしめられてそれからすうっと私の中へ溶けて消えて行きました。
とても晴れやかで…とても誇らしげな気分でございます。
『すべての後悔も失敗もすべてが無駄ではなかった、これからの私の未来にとって必要なことでしたのね…』
『そうよね、小雪様。ふふふ、小雪様はもう大丈夫そうね!』
『妙子様?妙子様!』
『ええ、小雪様!』
思わず妙子さまの手を取り少女に戻ったかのように二人で再会の喜びを噛み締めます。
『小雪様、これからも小雪様を見守らせて頂きますわ。小雪様がこれから幸せな人生を末永く送ることが出来ますように…。』
『妙子様…えっ…妙子様?…どこに行ってしまわれたの?妙子様?妙子様…?」
「うっ…ん…ここは…」
「小雪…目が醒めたか…」
「孝一朗お兄様…」
「小雪、頑張ったな。もう大丈夫だ。」
お兄様は私を抱き寄せて幼子にするように背中をさすってくれております。
「やはり、向こうに戻すべきではなかった。すまなかった、小雪。」
「いえ、お兄様が謝られるようなことではございません。私自身で決めたこと。やっと初恋を終わらせてまいりました」
「そうか…小雪がそういうのであればそれでよかったんだろうな…」
いつも飄々としておられるお兄様が少し疲れておられます。私のことで心配をおかけしてしまったのだと思うととても申し訳ない気持ちでいっぱいになります。
「ええ…見守っていただき本当にありがとうございました。お兄様が私のお兄様で本当に私は幸せ者です。お兄様、私も少しは成長できたでしょうか?」
「ああ、ああ。小雪は成長したよ。立派なものだ。」
「失敗ばかりですが…」
「それがどうした、結局終わってしまえばどうにかなるもんだ。」
「そういうものなのですか?」
「ああ、そういうものだ。」
思う存分二人で笑いあってやっと一息つくことが出来ました。
「あのお兄様、一宮様はどちらへ?助け出して頂いた一宮様に是非お礼を申し上げたいのですが…」
「東吾ならここにいる。お前がそうしたいというのなら呼んでくるが?」
「いえ、私が参ります。」
「体は辛くないか?」
「…大丈夫ですわお兄様」
「そうか…後、医師に来るように頼んである。さあ、行こうか。」
3,103
お気に入りに追加
4,163
あなたにおすすめの小説

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】記憶を失ったらあなたへの恋心も消えました。
ごろごろみかん。
恋愛
婚約者には、何よりも大切にしている義妹がいる、らしい。
ある日、私は階段から転がり落ち、目が覚めた時には全てを忘れていた。
対面した婚約者は、
「お前がどうしても、というからこの婚約を結んだ。そんなことも覚えていないのか」
……とても偉そう。日記を見るに、以前の私は彼を慕っていたらしいけれど。
「階段から転げ落ちた衝撃であなたへの恋心もなくなったみたいです。ですから婚約は解消していただいて構いません。今まで無理を言って申し訳ありませんでした」
今の私はあなたを愛していません。
気弱令嬢(だった)シャーロットの逆襲が始まる。
☆タイトルコロコロ変えてすみません、これで決定、のはず。
☆商業化が決定したため取り下げ予定です(完結まで更新します)

〈完結〉【コミカライズ・取り下げ予定】思い上がりも程々に。地味令嬢アメリアの幸せな婚約
ごろごろみかん。
恋愛
「もう少し、背は高い方がいいね」
「もう少し、顔は華やかな方が好みだ」
「もう少し、肉感的な方が好きだな」
あなたがそう言うから、あなたの期待に応えれるように頑張りました。
でも、だめだったのです。
だって、あなたはお姉様が好きだから。
私は、お姉様にはなれません。
想い合うふたりの会話を聞いてしまった私は、父である公爵に婚約の解消をお願いしにいきました。
それが、どんな結末を呼ぶかも知らずに──。


私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです
こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。
まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。
幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。
「子供が欲しいの」
「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」
それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。

悪名高い私ですので、今さらどう呼ばれようと構いません。
ごろごろみかん。
恋愛
旦那様は、私の言葉を全て【女の嫉妬】と片付けてしまう。
正当な指摘も、注意も、全て無視されてしまうのだ。
忍耐の限界を試されていた伯爵夫人ルナマリアは、夫であるジェラルドに提案する。
──悪名高い私ですので、今さらどう呼ばれようと構いません。

〈完結〉だってあなたは彼女が好きでしょう?
ごろごろみかん。
恋愛
「だってあなたは彼女が好きでしょう?」
その言葉に、私の婚約者は頷いて答えた。
「うん。僕は彼女を愛している。もちろん、きみのことも」

婚約者は、今月もお茶会に来ないらしい。
白雪なこ
恋愛
婚約時に両家で決めた、毎月1回の婚約者同士の交流を深める為のお茶会。だけど、私の婚約者は「彼が認めるお茶会日和」にしかやってこない。そして、数ヶ月に一度、参加したかと思えば、無言。短時間で帰り、手紙を置いていく。そんな彼を……許せる?
*6/21続編公開。「幼馴染の王女殿下は私の元婚約者に激おこだったらしい。次期女王を舐めんなよ!ですって。」
*外部サイトにも掲載しています。(1日だけですが総合日間1位)

〈完結〉毒を飲めと言われたので飲みました。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。
国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。
悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる