見捨てられたのは私

梅雨の人

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『さようなら亮真様』 

はっきりとそう告げた私は亮真様へ背を向けて歩き出しました。 

すると鼻歌を歌いながら幼かったころの私が嬉しそうに駆け寄ってきます。 

『私少しは成長できたかしら?』 

そう私は幼い私に問いかけるとぎゅうっと抱きしめられてそれからすうっと私の中へ溶けて消えて行きました。 

 

とても晴れやかで…とても誇らしげな気分でございます。 

『すべての後悔も失敗もすべてが無駄ではなかった、これからの私の未来にとって必要なことでしたのね…』 

『そうよね、小雪様。ふふふ、小雪様はもう大丈夫そうね!』 

『妙子様?妙子様!』 

『ええ、小雪様!』 

思わず妙子さまの手を取り少女に戻ったかのように二人で再会の喜びを噛み締めます。 

『小雪様、これからも小雪様を見守らせて頂きますわ。小雪様がこれから幸せな人生を末永く送ることが出来ますように…。』 

『妙子様…えっ…妙子様?…どこに行ってしまわれたの?妙子様?妙子様…?」 

 

「うっ…ん…ここは…」 

 

「小雪…目が醒めたか…」 

 

「孝一朗お兄様…」 

「小雪、頑張ったな。もう大丈夫だ。」 

お兄様は私を抱き寄せて幼子にするように背中をさすってくれております。 

 

「やはり、向こうに戻すべきではなかった。すまなかった、小雪。」 

「いえ、お兄様が謝られるようなことではございません。私自身で決めたこと。やっと初恋を終わらせてまいりました」 

「そうか…小雪がそういうのであればそれでよかったんだろうな…」 

いつも飄々としておられるお兄様が少し疲れておられます。私のことで心配をおかけしてしまったのだと思うととても申し訳ない気持ちでいっぱいになります。

「ええ…見守っていただき本当にありがとうございました。お兄様が私のお兄様で本当に私は幸せ者です。お兄様、私も少しは成長できたでしょうか?」

「ああ、ああ。小雪は成長したよ。立派なものだ。」

「失敗ばかりですが…」

「それがどうした、結局終わってしまえばどうにかなるもんだ。」

「そういうものなのですか?」

「ああ、そういうものだ。」

思う存分二人で笑いあってやっと一息つくことが出来ました。

「あのお兄様、一宮様はどちらへ?助け出して頂いた一宮様に是非お礼を申し上げたいのですが…」 

「東吾ならここにいる。お前がそうしたいというのなら呼んでくるが?」 

「いえ、私が参ります。」 

「体は辛くないか?」 

「…大丈夫ですわお兄様」 

「そうか…後、医師に来るように頼んである。さあ、行こうか。」 

 
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