見捨てられたのは私

梅雨の人

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「ほら、小雪。もう一口どうだ?」 

「…ええ、ありがとうございます、亮真様。」 

「ああ」 

「ところで亮真様、その…この部屋で生活するようになって何日経ちましたでしょうか…」 

「…どうしてそんなことが知りたいんだ、小雪?」 

「いえ…あの…一体いつまでこのような生活を送るのかと思いまして…」 

「小雪は部屋から出たいのか?」 

「それは…はい…」 

「その必要はないだろう?」 

「それはどういう意味…っ!」 


これ以上は何もしゃべらせないとばかりに亮真様が私の頬についたクリームを舐めとります。 

「…はぁ…甘いな…」 

膝の上に座らせられたまま亮真様に抱きしめられます。 

「小雪…」 

 ひたすら私の名前を囁きながら何かにとりつかれたように私を抱きしめて離さない亮真様が恐ろしくなってまいりました。。 

「…小雪…」 


 

バンッ!!! 

「亮真さん!!!!!」 

 

「「「「琴葉様お待ちください!!!!」」」」  

「亮真さん…なぜ私に会ってくれないの?寂しかった…ねえ、亮真さん…何をしてるの…もしかして小雪さんと…??」 

「っ!」 

「小雪大丈夫だ」  

血相を変えた琴葉お義姉様がふらふらとこちらへ近づいてまいります。 

さっと震える私を寝台におろしシーツで体を隠して下さった亮真様は琴葉お義姉様に振り返りました。 

「嘘よね亮真さん。そう…小雪さんが…小雪さんがあなたを誘ったに違いないわ…ねえ?」 

「逆だよ義姉さん。俺が小雪を手放せなくなった。」 

「嘘よ…嘘よ…ねえ、亮真さん…」 

「嘘じゃない。」 

「だって…あんなに…あんなにっ…あんなにいつもいつもいつもっ!小雪さんそっちのけでいつも私のことを大事にしてくれていたでしょうっ??いつもいつもいつも!!!そんなことされたら愛されていると思うでしょう???太賀に見捨てられた私を今度は亮真さんが…亮真さんが愛してくれるって思うじゃない。」 

「勘違いさせてすまなかった。」 

「勘違い?ねえ、亮真さん…勘違いじゃないわ。亮真さんは私を愛しているのよ。ねえ、そうでしょう??そうよねっ??そうじゃなきゃおかしいじゃないっ…」 

いつもの凛とした琴葉お義姉様が幼子のように我を忘れて亮真様に詰め寄っているさまを目の当たりにして、どうしてこのようなことになってしまったのかと、ほかに道はなかったのかと重苦しい気持ちになりました。
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