見捨てられたのは私

梅雨の人

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「失礼いたします。旦那様、奥様。奥様にお届け物でございます。」 

「私に届け物?」 

「はい、奥様の お兄様とその御友人の一宮様からでございます。」 

「お兄様と一宮様から?何かしら…まあ…ルナ洋菓子店のお菓子がこんなにたくさん…お兄様と一宮様ったら…」 

「……」 

「丁度良いではありませんか。亮真様、よろしければ一緒にいかがでしょうか。」 

「しかし…分かった。頂こう…」 

「では亮真様からお選びになって下さい。」 

「君への贈り物だ。君が先に選んでくれ。」 

「わかりました。ではこのふわふわのクリームと果実がきれいに飾られたケーキを頂きます。」 

(すごくきれいだわ…食べてしまうのがもったいないくらい…あっ、口の中で溶けてしまったわ…。すごいっとても滑らかで甘くて美味しい!)  

「…君はそんな顔をするんだな。」 

「そんな顔…ですか?変な顔をしていたでしょうか…?」 

「いや、むしろ。いや何でもない。」 

「そう…ですか?」 

「ああ…そういえばこの丸太のような菓子も美味いらしい。」 

「そうなのですね。教えていただきありがとうございます。」 

「いや、義姉さんのお気に入りだからいつもそれを買わされて…あ…いや…」 

「お義姉様のお気に入りでしたらさぞかし美味しいのでしょうね。」 

「ああ…」 

「亮真様も遠慮せずどうぞ召し上がってくださいませ。先日は違う種類のものを頂きましたが今頂いているものも含めて本当に美味しいですわ。こんな美味しいお菓子があっただなんてこれまで存じ上げませんでした。」 

「それは…すまなかった。…ところで先日食べていた菓子は君のお兄さんからの差し入れだったのか?」 

「いえ、あれは一宮様からの差し入れだったのですよ。先日洋ナシが丸まる一つ入ったケーキがあるって一宮様がおっしゃっていたのを覚えていらっしゃいますか?」 

「ああ」 

「わざわざそのケーキを差し入れてくださったのですよ。本当に、とっても美味しかったのですよ。」 

「そうか」 

「亮真様は召し上がらないのですか?…亮真様?…んっ!」 
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