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「ところで小雪、君が藤堂の屋敷で食べていたあの菓子はルナ洋菓子店のものだったか?」
「ええ、初めていただきましたが本当に美味しくて食べすぎてしまいました。」
「そうか、初めて…か。そうか…私はあんなにあの店に行っていたのに君にまだ食べさせてやれてなかったな。」
「あんなに?そんな何度も行かれていたのですか?」
「ああ、義姉さんのお気に入りだからな。」
「以前亮真様がおっしゃっていたので存じ上げております。」
「ああ、そうか…。そうだったな。…今度君に買ってこよう。」
「そうですか…」
(---連れて行ってはくれないのですね…。お義姉様とともに訪れたそのついでに私に買ってきてくださるのかしら…)
「小雪」
「…」
「小雪」
「…」
「小雪、どうした?」
窓に映る私の顔を見て驚いてしまいました。いつも私はこのような泣くきそうな、それでいて諦めた顔をしていたのでしょうか。
「小雪、気分が悪いのか?どうした小雪?」
急に私の顔をのぞき込んできた亮真様から無意識に距離を取りますと、亮真様は傷ついたような表情をしておられます。
「どうして亮真様がそのようなお顔をされるのです…?…あっいえ、なんでもございません…」
「小雪」
「この度はわざわざお迎えに来ていただき感謝しております。ご迷惑をおかけして申し訳けございませんでした…」
「迷惑などでは…」
「では部屋に戻って着替えてまいります。ではこれで。」
「小雪」
何かを言いかけておられる亮真様を後に残して部屋に足を踏み入れました。
「疲れたわ…」
足がおのずと窓際へ向いておりましたがふと足が止まります。
この窓から見える綺麗な庭園での亮真様と琴はお義姉様の寄り添う様々な場面が思い浮かんでまいります。
コンコン
「小雪」
「亮真様」
「着替えはもう終わったようだな。」
「ええ…」
「一緒にルナ洋菓子店に今から行かないか。さっき君とあの店の話をしていて食べたくなった。…というのは口実で君が一番最初に食べたものが私からではないと思うと…何というか…だな…。」
「先程は買ってきてくださるとおっしゃっておりましたが?」
「ああ。」
「お義姉様と何度も足を運ばれたことがあるのでしたら亮真様にとってそのお店の味は特に珍しいものではないのではないですか?今日無理して行かなくとも宜しいのではないですか?」
「誰が毎度義姉さんと足を運んだと言った?」
「失礼いたしました。違いましたでしょうか?」
「それは…違わない。」
「それではまたお義姉様を誘われてはいかがでしょう?」
「君は何を言って…」
思わず私自身の口から漏れ出てしまった言葉に愕然と致しました。
私はこのような嫌な性格だったのでしょうか。つくづく自分で自分が嫌になって参りました。
「ええ、初めていただきましたが本当に美味しくて食べすぎてしまいました。」
「そうか、初めて…か。そうか…私はあんなにあの店に行っていたのに君にまだ食べさせてやれてなかったな。」
「あんなに?そんな何度も行かれていたのですか?」
「ああ、義姉さんのお気に入りだからな。」
「以前亮真様がおっしゃっていたので存じ上げております。」
「ああ、そうか…。そうだったな。…今度君に買ってこよう。」
「そうですか…」
(---連れて行ってはくれないのですね…。お義姉様とともに訪れたそのついでに私に買ってきてくださるのかしら…)
「小雪」
「…」
「小雪」
「…」
「小雪、どうした?」
窓に映る私の顔を見て驚いてしまいました。いつも私はこのような泣くきそうな、それでいて諦めた顔をしていたのでしょうか。
「小雪、気分が悪いのか?どうした小雪?」
急に私の顔をのぞき込んできた亮真様から無意識に距離を取りますと、亮真様は傷ついたような表情をしておられます。
「どうして亮真様がそのようなお顔をされるのです…?…あっいえ、なんでもございません…」
「小雪」
「この度はわざわざお迎えに来ていただき感謝しております。ご迷惑をおかけして申し訳けございませんでした…」
「迷惑などでは…」
「では部屋に戻って着替えてまいります。ではこれで。」
「小雪」
何かを言いかけておられる亮真様を後に残して部屋に足を踏み入れました。
「疲れたわ…」
足がおのずと窓際へ向いておりましたがふと足が止まります。
この窓から見える綺麗な庭園での亮真様と琴はお義姉様の寄り添う様々な場面が思い浮かんでまいります。
コンコン
「小雪」
「亮真様」
「着替えはもう終わったようだな。」
「ええ…」
「一緒にルナ洋菓子店に今から行かないか。さっき君とあの店の話をしていて食べたくなった。…というのは口実で君が一番最初に食べたものが私からではないと思うと…何というか…だな…。」
「先程は買ってきてくださるとおっしゃっておりましたが?」
「ああ。」
「お義姉様と何度も足を運ばれたことがあるのでしたら亮真様にとってそのお店の味は特に珍しいものではないのではないですか?今日無理して行かなくとも宜しいのではないですか?」
「誰が毎度義姉さんと足を運んだと言った?」
「失礼いたしました。違いましたでしょうか?」
「それは…違わない。」
「それではまたお義姉様を誘われてはいかがでしょう?」
「君は何を言って…」
思わず私自身の口から漏れ出てしまった言葉に愕然と致しました。
私はこのような嫌な性格だったのでしょうか。つくづく自分で自分が嫌になって参りました。
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