見捨てられたのは私

梅雨の人

文字の大きさ
上 下
71 / 147

67

しおりを挟む
「小雪さん、今回も君に迷惑をかけてしまっているようですまない。」 

「いえ、それでお義兄様。第二夫人様を娶られたというのは…」 

「ああ、本当だ。」 

「なぜ…とお伺いしても?」 

「なぜ…か。うん、小雪さん、琴葉のことをどう思う?」 

「お義姉様のこと…でございますか?」 

「傲慢、強欲、ほかには?」 

「それは…」 

「君なら分かるだろう?私という夫がいるにもかかわらず義弟である亮真にうまくすり寄り君たち義弟夫婦にいつまでも迷惑をかける琴葉という女を。」 

「…」 

「私は琴葉をとうの昔に見限っている。物心ついたころから許嫁として育ってきたがなぜそれが亮真でないのか疑問に思ってきたんだ。どう見ても私たち兄弟に媚を打ってはわがままし放題。亮真はいつまでたっても振り回されている。挙句の果てに、君らは夫婦になったにもかかわらずいつまでも邪魔をしたがる。琴葉に比べたら娼婦のほうが職業がはっきりしていていっそ潔いと思うくらいだ。」 

「娼婦…ですか」 

「ああ、おかげで琴葉と後継を作ることもおっくうになってしまった。出来なければ君たちの子供を後継にとも考えたが、琴葉がそこでも邪魔になるだろう。どうしたものかと思っていた時に、取引先のお嬢さんである美知恵に出会ったんだ。私としては彼女との出会いは幸運だったと確信している。妻として申し分ないし、何よりも彼女からは一切の媚を感じないのが心地よいんだ。」 

「素敵な方なんですね」 

「その通りだ。誰かのことを大事にしたいとこんな私が心から思えるのがうれしくてね。だから琴葉には申し訳ないが離縁を申し出たんだ。しかし出戻っても居場所がないと泣かれてね。結局第二夫人として美知恵を娶った。もちろん琴葉は荒れてね。琴葉が現状を受け入れて落ち着くのを期待していたら、今度はこの屋敷の離れに住むことになったらしいと連絡が来て慌てて訪ねてきた、という訳なんだ。」 

「それは…」 

「ああ、大丈夫だ小雪さん。なんて言っていいのかそりゃ分からなくもなるだろう。すまないね君を巻き込んでしまった。」 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】記憶を失ったらあなたへの恋心も消えました。

ごろごろみかん。
恋愛
婚約者には、何よりも大切にしている義妹がいる、らしい。 ある日、私は階段から転がり落ち、目が覚めた時には全てを忘れていた。 対面した婚約者は、 「お前がどうしても、というからこの婚約を結んだ。そんなことも覚えていないのか」 ……とても偉そう。日記を見るに、以前の私は彼を慕っていたらしいけれど。 「階段から転げ落ちた衝撃であなたへの恋心もなくなったみたいです。ですから婚約は解消していただいて構いません。今まで無理を言って申し訳ありませんでした」 今の私はあなたを愛していません。 気弱令嬢(だった)シャーロットの逆襲が始まる。 ☆タイトルコロコロ変えてすみません、これで決定、のはず。 ☆商業化が決定したため取り下げ予定です(完結まで更新します)

〈完結〉【コミカライズ・取り下げ予定】思い上がりも程々に。地味令嬢アメリアの幸せな婚約

ごろごろみかん。
恋愛
「もう少し、背は高い方がいいね」 「もう少し、顔は華やかな方が好みだ」 「もう少し、肉感的な方が好きだな」 あなたがそう言うから、あなたの期待に応えれるように頑張りました。 でも、だめだったのです。 だって、あなたはお姉様が好きだから。 私は、お姉様にはなれません。 想い合うふたりの会話を聞いてしまった私は、父である公爵に婚約の解消をお願いしにいきました。 それが、どんな結末を呼ぶかも知らずに──。

【完結】旦那様、その真実の愛とお幸せに

おのまとぺ
恋愛
「真実の愛を見つけてしまった。申し訳ないが、君とは離縁したい」 結婚三年目の祝いの席で、遅れて現れた夫アントンが放った第一声。レミリアは驚きつつも笑顔を作って夫を見上げる。 「承知いたしました、旦那様。その恋全力で応援します」 「え?」 驚愕するアントンをそのままに、レミリアは宣言通りに片想いのサポートのような真似を始める。呆然とする者、訝しむ者に見守られ、迫りつつある別れの日を二人はどういった形で迎えるのか。 ◇真実の愛に目覚めた夫を支える妻の話 ◇元サヤではありません ◇全56話完結予定

悪名高い私ですので、今さらどう呼ばれようと構いません。

ごろごろみかん。
恋愛
旦那様は、私の言葉を全て【女の嫉妬】と片付けてしまう。 正当な指摘も、注意も、全て無視されてしまうのだ。 忍耐の限界を試されていた伯爵夫人ルナマリアは、夫であるジェラルドに提案する。 ──悪名高い私ですので、今さらどう呼ばれようと構いません。

私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜

月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。 だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。 「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。 私は心を捨てたのに。 あなたはいきなり許しを乞うてきた。 そして優しくしてくるようになった。 ーー私が想いを捨てた後で。 どうして今更なのですかーー。 *この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。

気づいたときには遅かったんだ。

水瀬流那
恋愛
 「大好き」が永遠だと、なぜ信じていたのだろう。

【完結】私の婚約者はもう死んだので

miniko
恋愛
「私の事は死んだものと思ってくれ」 結婚式が約一ヵ月後に迫った、ある日の事。 そう書き置きを残して、幼い頃からの婚約者は私の前から姿を消した。 彼の弟の婚約者を連れて・・・・・・。 これは、身勝手な駆け落ちに振り回されて婚姻を結ばざるを得なかった男女が、すれ違いながらも心を繋いでいく物語。 ※感想欄はネタバレ有り/無しの振り分けをしていません。本編より先に読む場合はご注意下さい。

報われない恋の行方〜いつかあなたは私だけを見てくれますか〜

矢野りと
恋愛
『少しだけ私に時間をくれないだろうか……』 彼はいつだって誠実な婚約者だった。 嘘はつかず私に自分の気持ちを打ち明け、学園にいる間だけ想い人のこともその目に映したいと告げた。 『想いを告げることはしない。ただ見ていたいんだ。どうか、許して欲しい』 『……分かりました、ロイド様』 私は彼に恋をしていた。だから、嫌われたくなくて……それを許した。 結婚後、彼は約束通りその瞳に私だけを映してくれ嬉しかった。彼は誠実な夫となり、私は幸せな妻になれた。 なのに、ある日――彼の瞳に映るのはまた二人になっていた……。 ※この作品の設定は架空のものです。 ※お話の内容があわないは時はそっと閉じてくださいませ。

処理中です...