見捨てられたのは私

梅雨の人

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お別れを一宮様に告げた私は、私を乗せてきた車ではなく亮真様の運転する車の助手席に乗せられ帰宅の途についております。 

「…君は一宮殿とあんな風に笑ったり喋ったりするんだな」 

「あんな風に…とは?」 

「いや…それに今日は君を連れて買い物にと思っていた…」 

それで会話の途切れてしまった車内は沈黙に包まれそのまま屋敷に到着いたしました。 


「小雪奥様夕餉の支度が整いました。」 

 

「部屋で頂いても良いかしら?」 


「旦那様がぜひご一緒にとお待ちでございますがいかがいたしましょう?」 


「亮真様が?そう。…ではそちらに伺いましょう。」 



席に着くと亮真様が料理に箸もつけずに待っておりました 

「お待たせいたしました。」 

「いや…」 

無言で食べる料理はおいしいはずですのに砂をかんでいるようです。 

「--雪、ーーーき?」

ぼおっとしていたのでしょう。いきなり立ち上がられた亮真様に思わずびっくりしてしまってお箸を止めて亮真様のほうへ視線を移しました。 

「小雪、明日こそ一緒にどこかに出かけよう。」 

「どこか、とは?」 

「君が甘いものが好きだとは知らなかった。ルナ洋菓子店にでも早速行ってみよう。」 

「それならばお義姉様をお誘いになれば喜ぶのではないでしょうか。」 

「義姉さんは関係ない。」 

相変わらず会話はそれでお終いになってしまいました。 

その後食事を終えて廊下に出た私の横に亮真様がいらっしゃいました。

「----寒くなってきたな。」 

消え入るようにそうおっしゃった亮真様に首を思わず傾げそうになるのをこらえております。 

亮真様は私に手を重ねてきました。本当はこういうこともお義姉様と致したいのではないのでしょうか。 

「小雪?どうしたぼうっとして。」 

「え?ええ。少し考え事をしてしまいました。」 

◇◇◇◇

「疲れたな…寝るぞ、小雪。」 

いつの間にか亮真様と私の部屋に入ってきていた私は亮真様の声で我に返りました。

今晩は亮真様と夜をご一緒するとは思っておりませんでした。先に布団に入った亮真様が当たり前のように私を手招きして早く寝台に上がるように促しているのを見て戸惑ってしまいます。

こうなってしまってはお断りもできません。どうしたものかと思っておりましたが、亮真様はすぐに目をつぶられました。当たり前のように亮真様の温かな腕に包まれてしまえば私もすぐに眠りに落ちてしまいました。 

その夜、亮真様がなぜか私にそっと口づけを落としている夢を見てしまいました。 

 

翌日、出かけようと誘っておられた亮真様でございますが、突然になって急な用事ができたとかでその話は流れてしまいました。 

このような言い方は卑屈だと思われそうですが、もう慣れてしまいましたのでそこまで心的に負担はございません。

そしてその夜深夜になってから亮真様はお戻りになられました。
 
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