見捨てられたのは私

梅雨の人

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一宮様もおりますが、こうして亮真様と外を歩くのは初めてのことでございます。 

亮真様の歩幅に合わせておりますと早歩きになってしまいますが、そんなに遠くないお店でございますので何とかなるでしょう。 

足がもたれないように気を付けなければと思っておりましたが、ふと気が付くと一宮様がゆったりと私の隣を歩いて下さっておりました。

 

「小雪さん、おごってくれなくていいぞ?俺は君とただお茶を飲んでゆっくりしたかっただけなのだから。しかし小雪さんの置かれている状況が少し理解できた。絶対に無理をするんじゃないぞ?約束だ。」 

「…ええ、約束します。」 

「しかし今日も冷えるなあ。」 

「そうですね…」 

 一歩一歩、一宮様は私に合わせて隣を歩いてくださっております。寒い季節の昼下がり、息をするたびに息が白くなるのを見るだけで心躍るのはなぜなのでしょう。 

 
ふと視線を前に向けると、少し先で亮真様がこちらを向いて立ち止まっておられます。 

「なぜ私の隣を歩かないんだ、小雪?」 

「それは…」 

「それはあなたが歩くのが早すぎるからですよ。小雪さんがあなたと同じ歩調で歩けると思っているのですか?」 

「それは…すまなかった小雪。」 

「いえ、私も亮真様に追いつけませんで申し訳ございませんでした。」 

亮真様はその後私と歩調を合わせてくださいましたが気まずい雰囲気は相変わらずのまま店に到着いたしました。 

店内に到着した私の隣には亮真様が、向かいには一宮様が腰を下ろされました。 

「割と墓地の近くにこのような店があるのですね。」 

「そうですね、大河内さん。墓参りについでと言っては何だが、こうしてお茶を飲むには最高な立地で助かりますよ。」 

「さて、小雪さんたちは何を頼むか決まった?」 

「ええと私は…」 

「小雪、私と一緒のでいいか?この紅茶を頼もうと思うが」 

「ん?小雪さん紅茶より甘いもののほうがいいんじゃないか?」 

「なぜ一宮殿が妻の好みをご存じなのですか?」 

「ああ、前回偶然墓参りの途中で会って、お茶をしたんだ。足を引きずっている小雪さんに無理をさせてしまったがここで休めたみたいでよかったよ。その時に彼女が何を頼むのか興味があってな。ああ、すまない別に変な意味じゃないぞ、小雪さん。」 

「そうなのか、小雪?」 

「え?ええ。」 

隣に座っていらっしゃる亮真様の纏う雰囲気が一気に不機嫌さを醸しておりますが、一宮様は優雅に私に微笑まれてから視線を窓の外に移しておられます。
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