見捨てられたのは私

梅雨の人

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「来なければ…良かった…のかしら」 

「そんなことはないさ。俺は来てよかったと俺は思うぞ?小雪さん。」 

聞き覚えのある声にはっといたしました。 

 

「一宮様…?」 

「やあ、久しぶりだね。また会えた。」 

「お久しぶりでございます。一宮様。」 

「俺は来てよかったよ。君に会えたから。今のが君の?」 

「ええ、夫と、夫のお義兄様夫婦でございます。」 

「大河内って、彼らのことだったのか。なるほどなあ。」 

「あの、一宮様はお義兄様たちのことをご存じなのですか?」 

「ああ、まあね。それはそうと…以前より顔色が良いね。よかった。」 

「気が付いてくださったんですか?」 

「ああ、もちろんだ」 

「そう…ですか。ありがとうございます。実は…実家に戻って少し療養しておりました。」 

(---まだ数回しかお会いしていないのに顔色の変化まできがついてくださるだなんて。) 

「なるほどな。っ!突風かっ?!小雪さんっ!」 

ビュッっと突風が吹き荒れザワザワッっという音とともに視界が真っ黒になりました。暖かくて大きな一宮様に抱きしめられて風が過ぎ去るのを待ちます。 

「大丈夫か、小雪さん?驚いたな。すごい風だった。ん?小雪さん?」 

「…っはっはいっ…大丈夫でっごじゃい…ございますっ。はっ…え?一宮様…?」 

「…はっ?ああ…危なかった…いや…ああ。なんでもない」 

「どこか御怪我でもされたのですかっ?お顔が真っ赤ですわっ!」 

「うん…大丈夫だよ、小雪さん。俺はそんなやわじゃない。ああ、ちょっと動かないで。頭に葉っぱがくっついてる。…ほら、とれたよ?」 

「ありがとうございます。あっ、一宮様にも。動かないでくださいませ。…あの、少しかがんでくださいますか?…はい、取れましたよ。」 

「…ありがとう。」 

「いえ…」 

それじゃあ、行こうかと差し出してくださった一宮様の腕に手を添えて、ゆっくりと二人で石畳を進んで行きました。 

出口に近づいたところでお義姉様の声が聞こえます。 

「小雪さんが来ていないからってまた戻るっていうのぉ?ここで待っていればいいじゃないっ。ついてきていないことにも気が付かないなんてぇ、本当に亮真さんは小雪さんにあまり関心がないのねぇ。本当にあんな年下の子と夫婦になってよかったのぉ?」 

「うるさいぞ琴葉。亮真、いいから早く小雪さんを迎えに行って来い。」 

「しかし兄さん。義姉さんが…」 

「お前なあ、琴葉と小雪さんのどちらを心配するべきなのか言われなくてもわかるだろう?」 

「それはそうだが…」 

「亮真さん、いいのよぉ小雪さんのところに行ってもぉ。わかってるわぁ。私が悪いのよねぇ?」 

「義姉さん…」 

「おい、亮真」 
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