見捨てられたのは私

梅雨の人

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「それでは亮真様、お気をつけておかえりくださいませ。」 

「ああ…。あと、小雪、誕生日おめでとう。…小雪が何を好むのかよくわからなかったから選ぶのに苦労した。気に入ってくれると嬉しい。」 

「よくわからなかった…ですか。」 

「ははっ、兄嫁への贈り物は難なく選んだのだろう?さすがに仲がいいだけあるな。心配しなくてもいい。君からの贈り物を小雪が気に入らなくても、私が小雪の好きそうなものをどっさりと贈っておいたよ。」 

「お兄様…」 

 「…それをなぜあなたが知っているのですか?」 

「おっと、図星だったか。」 

「いえ…そういうわけでは」 

「まあ、いいさ。小雪、寒いだろう。中に入ろう。亮真君気を付けて帰ってくれ。それでは。」 

「それでは亮真様」 

「小雪っ…その、小雪の元気な顔が見られて安心した。そろそろこちらに戻ってきてはくれないだろうか?もう顔色もいいし、戻ってきてもよいのではないか?」 

「それは…そうですね。」 

「亮真君、君がそれを小雪に強制すべきではない。なぜ小雪があんなにも憔悴していたのか原因である君にそれを言う資格はないだろう?」 

「私は…私は今度こそ小雪を絶対に幸せにします。大事にします。お願いだ、小雪。戻ってきてはくれないだろうか?」 

「亮真君、しつこいぞ」 

「…分かりました。近々そちらに戻ります。」 

「小雪っ!ありがとう小雪…」 

「…小雪やめておけ。」 

「いえ、お兄様。私は大河内に嫁いだのですからずっとここにいるわけにはまいりませんでしょう。」 

「それでも私はいいと言っているじゃないか。どうとでもなる。とにかく亮真君、小雪をこんな寒空の下にとどめるべきではない。それでは私たちは中に入るから君も帰るんだ。それじゃあ。」 

「はい、…小雪、迎えに来るから連絡してくれ。それじゃあ」 

「さあ、小雪、中に入ろう。」 

「あっ…では、亮真様。来て頂いてありがとうございました。」 

「行こう、小雪。」 



「…なあ、小雪。無理しなくてもいいんだぞ?」 

「お兄様…もしもの時はお兄様が私を助けてくださいますか?」 

「当たりまえじゃないか。」 

「なら、その時はすぐに助けてください。それに、私もお父様やお母さまのような素敵な夫婦にあこがれているのです。だからまだあきらめたくない…」 

「はぁー、困ったお姫様だ。わかったわかった。降参だ。もしもの時は必ず助けてやるからな。」 

 

それから三日後、実家に戻ってきたときの何倍もの荷物をこしらえて、迎えに来てくださった亮真様と一緒に大河内の屋敷に戻ったのでした。 

大河内の屋敷は以前と変わりなく使用人も同じ面々で戻ってきた私を手厚く歓迎してくれました。 

依然として亮真様も言葉数は少ないですが、仕事以外の時間で私とともに時間を過ごして下さっております。頻繁にいらっしゃるので使用人達も生暖かい視線を私たちに寄越してきております。 

ようやく心を落ちつかせることができたのでした。 
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