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「ご馳走様でした。お兄様、ありがとうございました。とてもおいしかったですね。」
「ああ、それにしてもよかった。小雪の顔色もやっと元通りになった。」
「あ…お兄様。もしかして。」
「兄として妹を心配するのは当然のことだからな。戻ってきたときの小雪を思い出すと腹が立つ。何がそんなに小雪を追い詰めていたのかと。」
「それは…ご心配をおかけいたしました。」
「ああ、だからこれからは無理するな。嫌ならもうこのまま向こうに戻らなくてもいいんだ。」
「お兄様…。」
「考えていてくれ、小雪。さあ、この話はここまでにして、次は冬の遊覧船にでも乗って景色を楽しむことにしよう。さあ、おいで、小雪。」
◇◇◇◇
「あの大木には数か月前に雷が落ちたらしい。」
「だからあんなに真っ黒…」
「あっ、あそこの茶屋。先月女で一人で息子を育て上げた女将がいたらしいんだが、好きな男ができて再婚したっていうじゃないか。もう孫がいるような年であきれる者もいたそうだがな。これまで頑張ってきたんだ、よかったよな。」
「…そうですね。幸せになってほしいですね。」
「ああ、ほら、この先にある建設中の橋は私が手掛けているんだよ。出来上がったら「小雪橋」という名前にするからな。この橋が出来たら国中の話題になるぞ。何せこんなに大きくて立派な橋はどこを探してもないのだからな。」
「お兄様、小雪橋って…」
「あっ!いたいた、あの三毛猫どこにでもいるな。」
「えっ??どこですか三毛猫??」
「ほら、あそこ。あそこの階段で人生諦めたんじゃないかってくらいだらけてる奴」
「え??人生諦め…」
「小雪、寒くないか?」
「大丈夫ですよお兄様。」
「そうか、よかった。」
「兄さまは寒くないですか?」
「大丈夫だよ。」
「そうですか。よかった。」
「なあ、小雪…なんでお前はこんなにかわいいんだろうなあ。それなのにあいつ…」
「え、何ですか?」
「いや、なんでもない。おっ、ちょうどよかった。何か食べよう。おいで、小雪。」
「うわぁ!おいしそうですね、お兄様!でも先程食べたばかりなのに…」
「いいじゃないか、さあ、好きなだけ食べるといい。何が食べたい?」
お兄様とのおしゃべりも船からの景色もお食事も本当に素晴らしくて、気分が高揚したまま船を降りました。
降りたころにはすでに夕方になっておりまして、北風が頬をかすめております。
「暗くなってきたし帰るか、小雪。」
「ええ、お兄様。とても楽しかったです。そうですね。帰りましょう。今日はありがとうございました。」
「どうってことない。また今度は違う場所に一緒にこう。」
今日は一日中お兄様の隣で安心して楽しい時間を過ごすことができました。
考えてみたら亮真様とは結婚前に、大体決まったような場所までお茶をしに行く程度でしたので、このようにいろいろな場所に連れ立って歩いてくださるのはお兄様くらいなものです。
本当に楽しい一日を過ごすことができました。運転してくださるお兄様の隣で瞼が重くなってまいりました。
「小雪、寝ていてもいいぞ。ついたら部屋まで運んでおこう。」
「運んでおこうって…荷物みたい…ふふっ…私は重い…です…よ…」
助手席で安心して眠ってしまい目が覚めた時には寝室に寝かされておりました。
ですから、車が藤堂家に到着したときに、亮真様が寒空の中、門前払いをされても私の帰宅を待っていたことも、私の乗った車が門をくぐるときに私を目にして追いかけて来ていたことも、何も私は知る由などございませんでした。
「ああ、それにしてもよかった。小雪の顔色もやっと元通りになった。」
「あ…お兄様。もしかして。」
「兄として妹を心配するのは当然のことだからな。戻ってきたときの小雪を思い出すと腹が立つ。何がそんなに小雪を追い詰めていたのかと。」
「それは…ご心配をおかけいたしました。」
「ああ、だからこれからは無理するな。嫌ならもうこのまま向こうに戻らなくてもいいんだ。」
「お兄様…。」
「考えていてくれ、小雪。さあ、この話はここまでにして、次は冬の遊覧船にでも乗って景色を楽しむことにしよう。さあ、おいで、小雪。」
◇◇◇◇
「あの大木には数か月前に雷が落ちたらしい。」
「だからあんなに真っ黒…」
「あっ、あそこの茶屋。先月女で一人で息子を育て上げた女将がいたらしいんだが、好きな男ができて再婚したっていうじゃないか。もう孫がいるような年であきれる者もいたそうだがな。これまで頑張ってきたんだ、よかったよな。」
「…そうですね。幸せになってほしいですね。」
「ああ、ほら、この先にある建設中の橋は私が手掛けているんだよ。出来上がったら「小雪橋」という名前にするからな。この橋が出来たら国中の話題になるぞ。何せこんなに大きくて立派な橋はどこを探してもないのだからな。」
「お兄様、小雪橋って…」
「あっ!いたいた、あの三毛猫どこにでもいるな。」
「えっ??どこですか三毛猫??」
「ほら、あそこ。あそこの階段で人生諦めたんじゃないかってくらいだらけてる奴」
「え??人生諦め…」
「小雪、寒くないか?」
「大丈夫ですよお兄様。」
「そうか、よかった。」
「兄さまは寒くないですか?」
「大丈夫だよ。」
「そうですか。よかった。」
「なあ、小雪…なんでお前はこんなにかわいいんだろうなあ。それなのにあいつ…」
「え、何ですか?」
「いや、なんでもない。おっ、ちょうどよかった。何か食べよう。おいで、小雪。」
「うわぁ!おいしそうですね、お兄様!でも先程食べたばかりなのに…」
「いいじゃないか、さあ、好きなだけ食べるといい。何が食べたい?」
お兄様とのおしゃべりも船からの景色もお食事も本当に素晴らしくて、気分が高揚したまま船を降りました。
降りたころにはすでに夕方になっておりまして、北風が頬をかすめております。
「暗くなってきたし帰るか、小雪。」
「ええ、お兄様。とても楽しかったです。そうですね。帰りましょう。今日はありがとうございました。」
「どうってことない。また今度は違う場所に一緒にこう。」
今日は一日中お兄様の隣で安心して楽しい時間を過ごすことができました。
考えてみたら亮真様とは結婚前に、大体決まったような場所までお茶をしに行く程度でしたので、このようにいろいろな場所に連れ立って歩いてくださるのはお兄様くらいなものです。
本当に楽しい一日を過ごすことができました。運転してくださるお兄様の隣で瞼が重くなってまいりました。
「小雪、寝ていてもいいぞ。ついたら部屋まで運んでおこう。」
「運んでおこうって…荷物みたい…ふふっ…私は重い…です…よ…」
助手席で安心して眠ってしまい目が覚めた時には寝室に寝かされておりました。
ですから、車が藤堂家に到着したときに、亮真様が寒空の中、門前払いをされても私の帰宅を待っていたことも、私の乗った車が門をくぐるときに私を目にして追いかけて来ていたことも、何も私は知る由などございませんでした。
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