見捨てられたのは私

梅雨の人

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紅葉が美しい季節となりました。 

あの雨の中で意識を失った日から、私の心の奥底で亮真様に対しての気持ちに一線が引かれてしまったことに目を背けて一日一日を過ごして参りました。

先日、学園に通っていた頃の同級生の方々から一緒に紅葉を拝みながら妙子さまを皆さまで偲びましょうとのお誘いを頂きました。 

賑やかなほうが妙子さまもお喜びになるのではと言うことで、旦那様にも是非お声がけくださいとのことでした。
私たちは夫婦となってから一度も一緒にどこかに出かけたことがありません。 

「君の親友を偲ぶための紅葉狩りか…。だが…その日はもうすでに予定が入っているから遠慮しておくよ。」 

「そうですか。」 

「ああ、すまない。」 

「いえ、こちらこそ。お忙しい時に失礼いたしました。」 

「…」 

◇◇◇◇ 

 

紅葉狩りの日になりました。 

久しぶりに会う方々の半分ほどは既に結婚されており、そのほとんどの方々がご夫婦で一緒に参加されております。 

一人で参加している私に無粋なことを聞くような方がいないのが救いです。 

目にも眩しいほどに赤々と色を変えた紅葉の木々の下に用意された席に腰を下ろしました。 

皆様恋愛結婚というわけではありませんのに、互いを気遣っていらっしゃって本当に微笑ましいばかりです。 

皆さまで妙子さまの想い出を語り合いながら和気あいあいと楽しい一日を過ごさせていただきました。
 


先日の紅葉狩りから一週間がたちました。 

紅葉狩りから帰ってきたわたくしに、大変珍しく亮真様に感想を訊かれました。 

そんなに興味がおありなのでしたら今度一緒に――。

思わずお誘いするところでしたが何とか思いとどまりました。一度お断りされているのにも関わらず再びお誘いしてお断りされたらと思うと怖くて聞けません。 

先ほど太賀お義兄さまのお屋敷に向かわれた亮真様が書類の入った鞄を忘れていかれようです。 

「それでは私が届けてきましょう。申し訳ないけれど、先に太賀お義兄様のお屋敷へお願い。」 

「はい、奥様。」 

 ちょうど用事で出かけようとしておりましたので、私が届けましょうと鞄を受け取り、車に乗ってそのまま太賀お兄様のお屋敷に向かいました。 

天気も良いので用事を済ませたらそのままタカさんと寄り道して帰ろうと思っております。 

太賀お兄様のお屋敷に到着した私は亮真様が入り口のところで機嫌のよい笑顔で話されているのを目にしました。 


「亮真様」 

歩み寄る私に亮真様が気が付かれたようです。 

でもなぜそんなに驚くことがあるのでしょう。 
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